井口直紀(大分三好)がサントリー戦で見た先輩セッターの背中「追いつき,追い越せるように」
- SV男子
- 2021.03.27
■「僕より上手なセッター、ライバルだと思っています」(大宅)
井口は小学校1年生の頃、地元の「三輪スポーツクラブ少年団」に入団。兄の影響もあり、7歳にしてバレーボール人生を歩み始めた。中学3年生時にはJOCジュニアオリンピックカップ(JOC杯)で福岡代表のセッターを務め、優勝を飾る。
東福岡高2年時には、世代トップレベルを誇るスパイカーたちと息の合った攻撃を展開し、インターハイ、国体、春の高校バレーで優勝。全国大会での三冠達成に貢献した。また、持ち前の果敢なトスワークを武器に、2014年のアジアユース選手権や2015年の世界ユース選手権も経験。3年時には、国体と春高バレーで連覇を成し遂げるなど、全国レベルの仲間とともに輝かしいキャリアを積み重ねてきた。
その後は東亜大に進学。大学4年時には、主軸として全日本インカレベスト8と奮闘。高校、大学の同級生である古賀健太とともに大分三好に内定すると、2019年12月14日には、内定選手として東レアローズ戦でV.LEAGUEデビュー。2020年1月18日のJTサンダーズ広島戦では先発出場を果たすなど、チームの即戦力として迎えられた。
そんな井口のことを、サントリーの司令塔・大宅は、真剣な表情で“ライバル”だと語る。
「僕自身、大学時代からライバルと思って(井口に)接していました。もともと僕よりいいセッターだと思っているので、“成長したな”とか、上からは評価できませんが、大学時代と比べてていねいさが出てきたかな、と思います。あとは、人を思いやれるようになったというか、表情などが変わったかな、と感じています。
僕がルーキーの時は、もちろん、その時から『自分が中心でいたい』という気持ちはありましたが、先輩方に引っ張られてやってきたので。僕のよさをみんなが出してくれていたのが1年目だと思っています。しかし、井口選手はもうルーキーの山田(滉太)選手と2人で軸として動いている。客観的に見て『すごいな』と思います」。
■先発セッターとしてチームを託されたルーキーイヤー
今季は主に井口と、彼の4年上で同じ東福岡高出身の藤岡諒馬を先発セッターとして起用している大分三好。そこは頭を悩ませたという小川貴史監督だが、「今季は新戦力や新外国人選手の加入など、新しいチャレンジをしていく中で、井口選手のコンビ力、トス回しの質という部分を、チームの新しい展開としてスタートから出していこうという狙いがありました」と話すように、開幕から数試合は、井口が先発で起用される体制が続いた。
コロナ禍で外国籍選手の合流が遅れたチームは、体制が整うまでに時間を擁し、「新人選手が大事な試合を担ってやっていくのも正直、酷だ」(小川監督)と、藤岡を先発起用した時期もあった。しかし、“やはり、新しいチャレンジをしていこう”と中盤以降は再び井口を司令塔に据え、ルーキーに実戦経験を積ませながら、チーム力を強固にすべく戦っている。
チームとしても軸が定まった中、新人セッターが躍動。特に、2月初週に開催されたVC長野トライデンツ戦では、外国人選手とのコンビやミドルブロッカーを含めた連係が形になってきたことで、連勝を飾ることができた。少しずつ前進していることを証明した連戦だった。
学生時代から全国トップクラスの環境に身を置いて得た経験値と豊富な引出しも武器に、果敢なトスワークで魅せる井口【写真:月刊バレーボール】