チャオ!! 月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。さぁ、世界各地ではクラブシーズン真っ只中。その一方で、クラブ世界一決定戦が開催され、男子はイタリア・セリエAのルーベ・チヴィタノーヴァが優勝しました。そう、現地12月15日に日本の石川祐希選手が所属するパドヴァが対戦する相手です。そのチャンピオンチームが歩んできた2シーズンをプレーバック。(Photo:FIVB)
それではご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!
【GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.4
■インクレディブルなメンバーをそろえるルーベ。世界タイトルの、その先へ
現地12月8日、ベチン(ブラジル)では『2019男子世界クラブ選手権大会』が最終日を迎えていた。決勝を戦ったのは、ヨーロッパ王者のルーベ・チヴィタノーヴァ(イタリア)と、開催国ブラジルのサダ・クルゼイロ。
試合はルーベがセットカウントを2−1とし、第4セットはいよいよマッチポイントに。24−21から相手サーブをアウトサイドヒッターのイオアンディ・レアル(ブラジル)がきれいにセッターのブルーノ・レゼンデ(ブラジル)に返球すると、そのまま助走に入ったレアルが“古巣”を相手に強烈なバックアタックを打ち込む。最後の1点が決まり、ベンチから選手やスタッフがいっせいになだれこみ、抱き合う。
ルーベが、世界ナンバーワンに輝いた瞬間だった。
5度のリーグ王者に輝く強豪クラブ
『ルーベ・チヴィタノーヴァ』。
イタリア・セリエAを代表する強豪クラブの一つであり、歴代コートに立つメンバーは世界トップレベルの選手たちばかり。
セリエAではスクデット(リーグタイトル)を獲得すること5回、コッパ・イタリア(カップ戦)は5度、スーペル・コッパ(スーパーカップ)は4度制した。
ルーベにとって、タイトル獲得は至上命題。だがスクデットは2016/17シーズンに手にしたものの、翌2017/18シーズンは決勝で敗れ、ペルージャに初優勝を献上した。
このシーズンを終えて、ルーベは積極的補強に動く。そもそもこのときのシーズンオフはモデナやペルージャ、トレンティーノという“トップ4”を中心にメルカート(移籍市場)は活発であり、ルーベもアウトサイドヒッターのテイラー・サンダー(アメリカ/現ディナモ・モスクワ<ロシア>)やセッターのマイカ・クリステンソン(アメリカ/現モデナ)、リベロのジェニア・グルベニコフ(フランス/現トレンティーノ)らがチームを去っている。そこで次のターゲットにしたのが、北中米そして南米大陸の選手たちだった。
『インクレダブル』な2018/19シーズン
2018/19シーズンを迎えるにあたり、チームはブラジル代表のセッターのブルーノ(モデナから移籍)、そしてブラジル・スーパーリーガの強豪クルゼイロからレアルとミドルブロッカーのロベルランディ・シモン(キューバ)の獲得に成功した。
もともと2015/16シーズンから元キューバ代表のアウトサイドヒッター、オスマニー・ユアントレーナ(イタリア)が在籍しており、レアルやシモンらキューバ出身者が馴染む土壌はあった。そうしてチームに早々からフィットした、かつての“鳥人”たちはシーズン序盤からそのハイレベルなパフォーマンスを存分に発揮する。
ブラジル代表に数々のタイトルをもたらしてきたブルーノの魔法のようなトスワークも冴え、カリブ海色とカナリアイエローが見事に融合した“ドリームチーム”は、ペルージャとの熾烈なファイナルを制し、見事5度目のリーグ優勝に輝いたのであった。
そして、その決勝のわずか4日後に行われた『2019CEVヨーロッパチャンピオンズリーグ』ファイナルでロシア・スーパーリーグの強豪ゼニト・カザンを下すと、シーズン2つ目のタイトルを獲得。“インクレディブル(信じられないほどの凄さ)”と2冠の“ダブル”を掛け合わせ、ルーベはこのシーズンを『インクレダブル』なる造語で表現した。
潤沢すぎるほどの2019/20シーズン陣容
ただ、世界クラブ選手権のタイトルとは縁がなかったのは、このシーズンも同じ。2018男子世界クラブ選手権では決勝でトレンティーノに敗れ、2年連続の銀メダルに終わっている。2019/20シーズンに向けて、チームはさらなる補強を敢行したのであった。
それはポジションがいくら被ろうとも、お構いなしといえるほど。オポジットはツベタン・ソコロフ(ブルガリア/現カザン)が去った代わりに、モンツァからアミル・ガフール(イラン)を、また2018/19シーズンにラヴェンナで大ブレイクしたカミル・リチリキ(ルクセンブルク)の2名を獲得。ミドルブロッカーも功労者ドラガン・スタンコビッチ(セルビア/現ピアチェンツァ)が期限付きで移籍し、代わりにモデナからシモーネ・アンザーニ(イタリア)、ポーランド・プラスリーガの強豪ザクサ・ケンジェジン・コジレからマテウシュ・ビエニエク(ポーランド)を加えてみせた。
そして2018/19シーズンは途中加入だったベテランアウトサイドヒッターのジリ・コバル(イタリア)も契約を継続し、新シーズン開始からロスターに名前を連ねた。
すでにミドルブロッカーではシモン、アウトサイドヒッターではユアントレーナ、レアルといった顔ぶれがいるにも関わらず、各国代表のレギュラーメンバーたちがズラリと並ぶこの陣容。飽和状態にも見えかねないが、2019年が年間を通じて過密スケジュールだったことを思えば、それも的確な策だったと言えるかもしれない。
事実、セリエAの開幕数日前までワールドカップバレー2019が日本で行われており、そちらにブルーノやレアル、ビエニエクたちは出場。彼らの合流が直前となることを見越して、その間も着実にチームづくりを進めたのである。
「栄光に値する」とブルーノ。目指すは、次なる栄光
さて蓋を開けてみれば、やはり強いの一言。分厚いほどの選手層を生かし、試合展開に応じてフェルディナンド・デジョルジ監督が選手を起用する。リーグでは開幕から10連勝を遂げて、12月初旬の“世界クラブ選手権ウィーク”を迎えた。
現地12月3日に開幕した2019男子世界クラブ選手権では予選ラウンド3試合、セミファイナル、ファイナルの合計5試合を戦い、黒星は予選ラウンドのカザン戦のみ。その試合も主力メンバーで臨んだ第1セットは大差で先取し、第2セット以降はサブメンバー中心で戦ったもので、それでもなおソコロフやマキシム・ミハイロフ(ロシア)やイアルバン・ヌガペト(フランス)ら世界的トッププレーヤーを揃えた強敵を相手にフルセットの戦いを演じてみせた。
決勝はユアントレーナとレアル、シモンとビエニエクがそれぞれ対角に入り、セッターはブルーノで、オポジットにはリチリキが就いた。試合では14人中12人がコートに立つなど細やかな選手起用を繰り出しながら、ユアントレーナとレアルの両エースがともに20得点をあげて、悲願だった世界クラブ王者の座をつかみとった。
大会を終えてデジョルジ監督は「信じられない!!」と声を上げ、「とても厳しい試合だったが、選手たちみんなが勝利へ力を振り絞り、この大会を特別なものにしてくれた」と喜んだ。
また大会のMVPに輝き、自身にとって意外にも初となるタイトルを手にしたブルーノも「私たちはこの栄光に値するチームだ」と言い放った。
世界一に輝いたルーベが突き進むは、“インクレダブル”を超えるさらなる高み。6度目のスクデット、ヨーロッパチャンピオンズリーグ2連覇はもちろん、その視界に収める。
それを阻むチームは現れるのか、またその強さは一体どこまで続くのか。まもなくセリエAはレギュラーシーズン前半戦を終えるが、それらは今後の注目といえるだろう。王者の進撃は、まだまだ見るものを惹きつけてやまない。
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著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。2018年は世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を獲得し、今年もネーションズリーグ男子ファイナルラウンドを単身で取材する。だが、英語が特に話せるわけではない。