第72回春高/鎮西高・水町が見せた最後の姿
- コラム
- 2020.01.09
[第72回春高バレー]
■鎮西高・水町泰杜 最後の舞台で取り戻した本来の姿
1月5日に開幕した『第72回全国高等学校選手権大会』(春高バレー2020)は、7日までに準々決勝が終わった。センターコートを目前にして敗れた選手の一人が、鎮西高(熊本)の水町泰杜。今大会で最も注目を集めたプレーヤーである。
春高バレーでは1年生時に優勝を経験し、名門校のエースとして高校バレーボール界を沸かせてきた。高校生活最後の大舞台で彼が見せた姿とは
(※カッコ内の所属は現在のもの)
かつて口にした、バレーボールにおける“楽しさ”
水町泰杜の中で、バレーボール人生における最高の時間の一つとして今も胸に刻まれている大会がある。それは中学3年生時に熊本県選抜で臨んだJOCジュニアオリンピックカップ第30回全国都道府県対抗中学大会(JOC杯/2016年)のこと。
この大会では、のちに鎮西高で一緒に戦うことになる谷武珍や荒尾怜音、前田澪といった「どんな場面でも楽しめるチームメイトたち」(水町)と頂点を目指した。
その道のりでは強敵たちと剣を交えた。例えば、予選グループ戦では砂川裕次郎や橋本岳人(ともに埼玉栄高<埼玉>)という交友関係を持つ選手がそろった埼玉県選抜と対戦。決勝トーナメントでは最終日のベスト4進出を懸けて、佐藤隆哉や阿部晃也(ともに東北高<宮城>)ら強力アタッカーを擁する宮城県選抜と激突した。決勝では、のちに日本代表のアンダーエイジカテゴリーで仲間になる伊藤吏玖や森居史和(ともに駿台学園高<東京>)の東京都選抜が立ちはだかった。それでも終わってみれば失セット0での優勝を成し遂げた喜びは格別だった。
その中で、水町は持てる力を存分に発揮した。当時の身長は179センチと目立って大きい数字ではなかったが、最高到達点320センチに届くほどの打点から繰り出されるスパイクは強烈の一言。また、スパイクの助走時にはステップごとにフェイントをかけることで相手ブロッカーを揺さぶる。前衛・後衛を問わずアタックに入り、得点を重ねた。
そうした一つ一つの動作に工夫を施し、試合の駆け引きを制すること。それは水町にとって、バレーボールをする上で感じる楽しさそのものだった。
「駆け引き、大好きなんですよ。それに23-24で負けている時のほうが楽しめる。負けるかもしれない状況の中で、自分に何ができるか、それ自体がプレーを上達させる機会だと思うんです。大差をつけて勝つよりも、競って、競って、それを取った時のほうがやっぱりうれしいですから。その駆け引きが楽しいです」
そう話す水町は、にんまりと笑顔を浮かべるのであった。