月バレ!ザ・ワールド/vol.10-セルジオ・サントス-
- コラム
- 2020.05.19
ハロー!! 月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。さて、この時期はV.LEAGUEでも競技生活に終止符を打たれる選手たちの姿を拝見します。それは世界のバレーボール界でも。ブラジル男子の名プレーヤーが、ユニフォームを脱ぎます。レジェンドの功績に拍手を!(Photo:FIVB)
それではご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!
【GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.10
■ブラジル男子の名リベロ、セルジーニョが現役引退
ブラジル男子で活躍したセルジオ・サントス。“セルジーニョ”の名で親しまれたリベロが現役引退を表明した。
セルジーニョは長らく代表の守護神を務め、2001年に選出されて以降、幾多の栄光をもたらしてきた。世界選手権は2度(2002年、2006年)、ワールドカップも2度(2003年、2007年)、そしてワールドリーグでは7度の優勝に貢献。2009年のワールドリーグではMVPにも輝き、これは大会史上、リベロプレーヤーとしては初となる選出だった。
まさにバレーボール大国ブラジルを象徴するリベロであり、その存在に憧れを抱く選手も多い。現在、男子日本代表で活躍が期待されるリベロ、山本智大(堺ブレイザーズ)もその一人で、以前に憧れの選手として彼の名前を挙げたことがあった。
そのセルジーニョにとって、競技生活最大のハイライトは何と言っても2016年、リオデジャネイロオリンピックでの金メダルだろう。このとき、セルジーニョは「私にとって最後のオリンピック」と明言し、大会に臨んでいた。キャリアにおいては2004年のアテネオリンピックで金メダルを獲得、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会で銀メダルを手にしていたが、集大成となる舞台で、それも母国の前での優勝は格別そのもの。自身も大会MVPに選ばれ、表彰台では大粒の涙を流すとともに、仲間からは胴上げの祝福を受けた。
インタビューで飛ばすジョークから見える、陽気な人柄
コート上ではポジション柄、体を投げ出し、這いつくばってでもボールを拾い上げる“ダーティーワーク”(汚れ仕事)をいとわなかった。その一方で、コートを離れれば、陽気に振る舞うあたりがセルジーニョの魅力。それはインタビューの節々からも見てとれ、リオデジャネイロオリンピックで優勝した直後には「今は家に帰りたいよ。子供を学校まで拾いに行って、友人の誕生日パーティーにも行かないと。それに母のチョコレートケーキも食べたいね」と言い、「この輝かしい時間が過ぎれば、自分はふつうの人間さ」と答えている。
そしてリオデジャネイロオリンピックが終わってまもなく催された、代表チームによる送別試合でも「オリンピックが終わって、この競技から離れる方法をずっと探っていたんだ。周りがそうはさせてくれなかったけれど」と冗談を飛ばし、「幸せそのものでした。すべてのディグ、すべてのサーブレシーブ、すべての旅、すべての大会、そして勝ち負け−。それらがみな、価値あるものでした」と代表で過ごした期間を振り返ったという。
子供たちへの指導やコメンテーターなど、コート外からバレーボールに携わる
その後は、国内リーグのリベイラン・プレトでプレーし、2019/20シーズンをもって現役を引退することになったセルジーニョ。このレジェンドの引退にブラジル男子の面々も賛辞と感謝の意をSNSで表しており、現ブラジル男子のキャプテン、ブルーノ・レゼンデは「あなたが刻んできたものは限りなく素晴らしいもの。いつも私を導いてくれ、人として選手として成長させてくれました。新しい人生に神の祝福があらんことを」とメッセージ。
また、リオデジャネイロオリンピックでベストアウトサイドヒッターに輝いたリカルド・ソウザ(ルカレリ)も、「セルジオ、あなたは私にとっていちばんのアイドルです。愛しているよ、兄弟」という言葉とともに、コート上で抱き合っている写真を投稿している。ブルーノもルカレリも、“史上最高の選手へ”とつづっていたあたりに、セルジーニョの功績と偉大さが表れていた。
今後は子供たちへの指導やテレビのコメンテーターへと活動の場所を移すという。実際、昨年春には本人主催のトレーニングキャンプを開催している。彼自身の、バレーボールへの情熱が絶えることはなく、かつて口にした“いたってふつうの人間”として過ごす日は来なさそうだ。
「バレーボールで関わったすべての方たちに感謝するときがきました。コートの外へ、貢献の場所を移すわけですが、悲しんではいけません! バレーボールをやりますよ!」
引退によせて、稀代のリベロは自身のSNSにそう記した。
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著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。2018年は世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を獲得し、昨年はネーションズリーグ男子ファイナルラウンドの取材のため単身でシカゴへ。だが、英語が特に話せるわけではない。