ハロー!! 月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。続々と新体制情報が発表され、『WEEKLY SERIE A』でお馴染みイタリア・セリエAも、このオフシーズンは動きが活発です。その中でも、今回は名門モデナをフィーチャーします(Photo:legavolley.it)
それではご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!
【GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.11
■ザイツェフのロシア行きが決定。名門モデナは3シーズンぶりの大幅改革へ
代表チームの活動がなくても、オフシーズンに話題をさらうのは、スター選手ゆえ。イタリア男子のキャプテンを務め、その容姿からも絶大な人気を誇るイバン・ザイツェフが2シーズンをプレーしたイタリア・セリエAのモデナを離れ、2020/21クラブシーズンはロシア・スーパーリーグのケメロヴォでプレーすることが決まった。
かねてから、その動向には注目が集まっていた。今年3月中旬以降、ヨーロッパの各国リーグは新型コロナウイルスの感染拡大の影響のためにシーズンが中断・中止され、オフシーズンへと移行していた。そんな中、4月中旬にケメロヴォがオファーを出したと報じられる。もっとも昨年春に、モデナは2018/19シーズンからプレーするザイツェフと、2022/23シーズンまでの4年契約を締結していた。にもかかわらず、オポジット獲得を望むケメロヴォは手を挙げた。そして、今年6月初めに、正式に入団が発表されたのである。
ザイツェフのキャリアを振り返ると、クラブチームでのプレーは2004/05シーズンにスタート、2009/10シーズンには当時セリエA2(2部)だったローマを1部復帰へと導いた。と同時に、代表チームでも目覚ましい活躍を見せ、一躍人気選手へ。2012/13シーズンからルーベ、2016/17シーズンからはペルージャ、とセリエAのトップクラブを渡り歩き、2017/18シーズンにはペルージャの初優勝に貢献した。
今や、“イタリアの顔”ともいえる存在であるザイツェフだが、そのルーツはロシアにある。父のビヤチェスラフ・ザイツェフはソビエト連邦(当時)を代表する名セッターであり、1980年モスクワオリンピック金メダルのほか、数々の世界タイトルを獲得している。余談だが、息子のイバンも、今でこそ破壊力抜群のスパイクを繰り出すオポジットだが、かつてはセッターだった。
そしてザイツェフ自身、2014/15シーズンから2シーズンをロシアのディナモ・モスクワでプレーしており、今回、5シーズンぶりにロシアの地を踏むことになる。新天地で、どのような活躍を見せてくれるのだろうか、はたして−。
“USA色”の強かった2019/20シーズン
さて、一方のモデナだが、このオフシーズンはにぎやかだ。2019/20シーズンの終了が決定して、アウトサイドヒッターのバルトシュ・ベドノシュ(ポーランド)がロシアのゼニト・カザンへ移籍、6シーズン在籍したリベロのサルバトーレ・“トト”・ロッシーニ(イタリア)もチームを去った。そして、拍車をかけるように、アウトサイドヒッターのマシュー・アンダーソン(アメリカ)も中国リーグの上海への移籍が報じられており、ミドルブロッカーのマックスウェル・ホルト(アメリカ)も退団するという。昨シーズンはセッターのマイカ・クリステンソン(アメリカ)を含めて、まさに“USA色”の強かったモデナだが、それも解散ということになりそうだ。
とはいえ、そこは過去12度のスクデット(リーグタイトル)を誇る名門モデナ。きたる2020/21シーズンに向けて、そうそうたるメンバーを補強している。
目玉となったのは“世界ナンバーワンリベロ”の呼び声高いジェニア・グルベニコフ(フランス)で、同じセリエAのトレンティーノから獲得。また、ルーベ在籍時代に絶大なるキャプテンシーを発揮したミドルブロッカーのドラガン・スタンコビッチ(セルビア)を加えた。また、2014/15シーズンから3シーズン在籍したアウトサイドヒッターのネマニャ・ペトリッチ(セルビア)も復帰することが明かされた。ペトリッチは代表チームでもキャプテンを務めており、スタコンビッチとともに経験値とリーダーシップを備えた選手たちの加入によって、今シーズンのモデナはまた一味違ったムードをまとうことだろう。
「アリーナで注がれる声援と熱情は身震いするほど」とグルベニコフ
モデナにとって、これほどまでに選手の入れ替えが激しかったのは、2017/18シーズン終了時以来か。当時はセッターにブルーノ・レゼンデ(ブラジル)、エースにイアルバン・ヌガペト(フランス)といったスター選手たちを擁し、2015/16シーズンには国内3冠(スクデット、コッパ・イタリア、スーペルコッパ)を達成したが、やがてチームは崩壊。彼らが退団したことで、ザイツェフやクリステンソンを呼び寄せるかたちとなり、2018/19シーズンはフリオ・ベラスコ、2019/20シーズンはアンドレ・ジャーニといった面々を指揮官に据えて戦ってきた過去がある。
いずれにせよ、“イリドゥチビリ・ジャッロブルー(=イタリア後で『不動の黄青』)”と称される熱狂的なファンたちは、ふたたび歓喜に酔いしれたいと願っているに違いない。
そして、その思いに応えたい一心で選手たちもきたるシーズンを戦うことだろう。グルベニコフはチームのインタビューでこう話している。
「モデナのアリーナで注がれる大勢の歓声と熱情は、対戦相手からしても身震いするものでした。イアルバン(・ヌガペト)からもチームのことをよく聞いていました。
コロナ禍もありましたが、最高レベルにあるイタリアにとどまることを第一に考え、そして新しい挑戦をしたいがためにモデナを選びました。
ここに来ることができて、ほんとうにうれしいです。チームをさらに成長させるために、最善を尽くしたいと思います」
様変わりした名門クラブの戦いに注目だ。
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著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。2018年は世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を獲得し、昨年はネーションズリーグ男子ファイナルラウンドの取材のため単身でシカゴへ。だが、英語が特に話せるわけではない。