野瀬将平インタビュー【中編】イスラエルで「試合がうまくなっていく」
- 海外
- 2021.02.10
「試合がうまくなる」ということ
――いま、どのような経験を積めていますか?
試合に出る経験を積めることが一番よかったことですね。手応えとしては、バレーボールの技術がめちゃくちゃ上がったということはそんなにないです。でも練習で出せていたパフォーマンスを試合でより出せるようになった感覚はすごくあります。簡単にいうと、試合がうまくなりました。
僕がずっと抱えていた課題は、試合でちゃんと自分の力が出せるかどうか、ということでした。試合って緊張するじゃないですか。相手の情報もないし。例えばチーム内の紅白戦とかだと、迫田(郭志・FC東京)がどこにサーブを打つかとか、優磨さん(長友・FC東京)がどこに打つかだいたい感覚で分かってくるんですよ。毎日受けているから。でも試合ではそういうことはないし、瞬間、瞬間で状況が変わってくる。
そんな中で、クラブの命運がかかったセットポイントで自分の力がちゃんと出せるのかってなると、練習で出せる力とのギャップが大きかったんです。「今のは練習でできてるじゃん!」「俺、こんなプレーできるのに」って思うけど、試合だとできない場合があります。そのギャップが、今は埋まってきた感じはあります。僕の持っているバレーボールの技術がめちゃくちゃ上がっている印象ではないです。いや、もしかしたら、上がっているかもしれないですけど、僕としては、試合で出せる実力が練習で出せる実力に近づいている、という印象です。試合で出せる実力が上がっているのはバレーボール選手としてすごく成長しているのかなと思いますね。
ヨーロッパ選手権にも出場している(写真:CEV)
すべては結果がものを言う
――海外の選手を見ていると、試合だと一段ギアが上がる感じがありますよね
評価基準がすべて試合の結果だからなんですよ。これはヨーロッパ方面の感覚でもあると思うんですけど、僕がいるイスラエルでは練習でうまくいっても試合で結果が出なかったら意味がないっていう感覚ですね。みんな練習は結構適当です。でも試合になったら、ちゃんとやる。すごい実力を出すんです。
彼らはバレーボール選手の評価としては、『試合の結果が大事』と分かっています。その結果で、次の年のサラリーが決まるし、もっと稼ぎのいいチームに行けるかもしれないと分かっているから、試合を頑張ります。日本では練習での態度も評価されるんです。それは、いいところでもあるんですけど。「あいつ、頑張ってるな、うまくなったな」って。でも試合では、台上から「ほらいくぞ」とは打ってこないから捕れない。
僕、練習は結構上手なんですよ。こっちに来てからも監督が打つ場所がわかるし、肘の角度見てフェイントしてくるなとか分かるし。でもこっちの選手はそれぜんぜんできないんですよ。フェイントめっちゃ落とすし、対人とかもそんなに上手じゃないです。でも試合になると、ディグ上げるんですよ。フェイントも拾います。だから、『試合が上手』ってすごく感じますね。
――試合の中で技術も上がっていると感じますか?
僕はあくまでも練習で出せる実力が高くないと、試合でそれ以上の高い力が出せることはないと思います。練習で捕れていないサーブは試合で捕れません。僕の理論としては、普段の実力が試合で出せる実力を超えることはないと思います。特にリベロは。
――でも練習と試合で出せる差はあると
例えば練習で100まで出せるなら試合でも100まではいけると思います。でも試合で110になることは多分ないと思います。アタッカーがアドレナリン出まくっていつもより跳んで点を決めることはあるかもしれないですが、リベロが普段捕れていない強いサーブをその日だけ全部Aパスにできましたということは、1試合ならあっても、シーズン通してはないと思いますね。