第7回Vリーグ女子決勝ラウンドを月バレ2001年4月号で振り返る
2020-21 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN (V1女子)V・ファイナルステージが2月20日(土)にスタートする。昨シーズン優勝のJTマーヴェラスは今シーズンV・レギュラーラウンド2位でファイナルステージへと進んだ。今季はどんなドラマが待っているのだろうか。
その前に、過去の月バレ誌面からVリーグファイナルを振り返ってみよう。今回は月バレ2001年4月号から第7回Vリーグ女子決勝ラウンド大阪大会を振り返る。
このシーズンのレギュラーラウンドは2連覇を目指すNECが1位で通過、2位は現JT監督の吉原知子擁する東洋紡。3位に久光製薬、4位東レという順位だった。4チームが大阪に集い、決勝ラウンドの熾烈な争いを勝ち抜いて決勝への切符を手に入れたのは、久光製薬と東洋紡だった。東洋紡は、順位決定予備戦初日に久光製薬に敗れたが、2日目に東レを破り決勝へ進んだ。決勝では最優秀選手賞を獲得した吉原知子の活躍もあり、東洋紡が見事優勝を果たした。この決勝を報じた月刊バレーボール2001年4月号を振り返る。(編注:文中の所属・チーム名は当時のまま)
月刊バレーボール2001年4月号掲載
東洋紡・オーキスが2年ぶりのV!
久光製薬大健闘! NECの2連覇ならず!
女子バレー新時代 東洋紡の大型バレーが強さを証明
決勝戦 東洋紡 3-1 久光製薬
(25-21、25-18、17-25、25-20)
絶対、優勝できると信じていた(永富)
「普段どおりにやれば勝てる」―柳本監督(東洋紡)の頭の中では、 2日前に敗れた順位決定予備戦敗退の教訓がたたき込まれていた。選手たちには、幸運のおまじないのように、一つの事実が胸に刻み込まれていた。
すべてが2年前と同じだったのだ。 「2年前、優勝したときも、1日目に日立に負けて、2日目にデンソーに勝って、決勝で再び日立と対戦して勝っていたんです。だからやる前から、みんなで、勝てるよって言っていて、勝ったあとも、やっぱり2年前と同じだよおって、言い合った」(森山)
だがこの日の第1セット16-16で、久光製薬のエース大村のレフトスパイクを西村が止めるまで、その振り子がどちらに傾くかは、わからなかった。互いに同じ高さとブロックを持ち、大型チームながら、好レシーブで決勝に勝ち上がった両チームの均衡は、そう簡単に揺らぎ始めるとは思えなかった。
久光製薬のエース・大村加奈子
だが、「出だしの最初のスパイクで、 その日の調子が決まる」という久光製薬・大村のこん身のスパイクを西村がブロックした瞬間、均衡にきしみが入った。次の吉原のサーブで崩されて久光製薬にコンビのミスが出る。簡単な返球がネットを越さずに16-18になったとき、コートに走った動揺を、両監督とも見逃さなかった。アビタル・セリンジャー監督のベストタイミングと思えたタイムアウト。だが、それも動き始めた波動を静めることはできなかった。佐々木が決め、森山が速攻と、東洋紡がたたみかける。最終的には最優秀選手賞に輝くことになる吉原が、3連続ポイントを決めて、第1セットは25-21と東洋紡。
最優秀選手賞に選ばれた吉原知子
2日前の順位決定予備戦で久光製薬に2-3負けを喫していた東洋紡が、雪辱の武器にしたもの。その一つが、徹底的につかれサーブレシーブを崩されたリベロ・田口に替えて入れた松永の存在だった。両チームとも最後までサーブレシーブは崩れなかった。
二つ目は、開幕前、腹筋を痛めて、佐藤にポジションを譲ってきたレフト萩原の投入だ。2日前の対戦でも、この萩原が入ってリズムが変わり、敗れたもののファイナルセットへともつれ込んでいたからだ。
第2セット、その萩原が爆発した。
だが、久光製薬も順位決定予備戦で東洋紡とNECを連破したときと同様、エース大村がふんばった。中盤、11-12と追いすがった。
しかし、東洋紡には、久光製薬にはないものがあった。結局、勝負を決めることになる「リラックスし、 勝つ自信に満ち、優勝を経験していた」ベテランセンター、吉原の存在だった。定評のあるセンター攻撃だけでなく、右に流れるブロードもきれいに決めて、攻めあぐねる久光製薬とは対照的に得点を重ねた。東洋紡が25-18で逃げ切った。
第3セット。久光製薬もセンターが奮起した。敢闘賞とベスト6に輝くことになる関井が、独特の、縦に高く弾むジャンプを生かしたブロードをストレート、超クロスへと決めやっとリズムを引き寄せた。前回の対戦ではおもしろいように決まっていたフェイントを拾われて疲労困ぱい、ベンチに戻るたびに励まされていた橋本も、体重を乗せたスパイクをよみがえらせて16-11。その後もセンター陣が佐々木、西村を連続ブロック。最後は大村が決めて25-17と1セットを奪い返した。
だが、第4セット序盤、サーブで崩されたのがすべてだった。3-8とリードを許すと、その差は最後まで縮めることができなかった。24-17とマッチポイントを握った東洋紡は、3点を許したものの、最後は佐々木が決めてぴょんぴょんと跳ねるベテランセッター永富とセンター吉原。柳本監督、林部長が宙に舞ったその脇で、13得点をたたき出した佐々木は、疲労困ぱいして倒れ込みそうになりながら、涙も流せず立ち止まっていた。
東洋紡のエース佐々木みき
4強入りが決まってから、いちばん頑張ってきたのが、永冨と吉原だった。「二人のために頑張れてよかった」と思ったが、「しんどすぎて、涙も出てこなかった」(佐々木)
新チームとしては初(ダイエー時代から数えると3年ぶり3回目)のリーグ制覇をねらった久光製薬の夢は成らなかった。だが、その若い軍団が、陽気な姿に戻るまでに時間はかからなかった。静かにスタンドのファンに手を振ると、大きな拍手が返ってきた。もちろん冷静だったわけではない。「ただ、精一杯に戦った」(鶴田)という充実感を感じていた。セリンジャー監督の言ったことばが、選手たちの気持だった。
「東洋紡がいいゲームをした。チャンピオンとしてふさわしいチームだった」
ベスト4に進出したチームは4チームとも、それぞれに懸命に戦った。
3位となったNECは、大友という宝石を抱えていたし、だれもがその姿を称賛し、新人賞のリストにその名前を書き込んだ。
勝利した東洋紡にも、エース佐々木、センター森山の復活といううれしいニュースがあり、ベテランセンター吉原も、そのうまさでは、まだまだどんな若手にも負けないことを証明した。
だが、やはり、適度なウォーミングアップでもあるかのように平常心で戦った久光製薬の、戦いぶりがさわやかだった。バレーの練習も試合も“苦行”ではないことを教えた、新時代を切り開く選手たちの登場でもあった。
ヒロイン・インタビュー
吉原知子 (東洋紡)
同級生として目立時代から頑張ってきた永富と“もう一度、 優勝しようね”と言ってやってきたので、それが実現できてうれしいです。永富とは暗黙の了解があって、大事な場面で思うようなコンビを展開できたのが大きかったと思います。
今回は第7回Vリーグ女子決勝ラウンドを振り返った。吉原監督はシーズン中、会見で勝った試合に関しても「まだまだです」と話すことが多い。それは現役時代、日立、ダイエー、東洋紡、パイオニアなど、各所属チームで優勝を経験している監督から見ると、選手たちに「もっとできる」という思いがあってこその厳しさかもしれない。選手たちからは「監督」ではなく、「トモさん」と親しみを込めて呼ばれており、厳しさだけではなく、信頼関係を結んでいると感じることができる。昨シーズンのVリーグ、そして昨年末の皇后杯でも優勝し、JTの選手たちは一歩ずつ確実に、たくましく成長している。今季もたどり着いたファイナルステージでJTはどのような戦いを見せるだろうか。
【2020-21 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN V・ファイナルステージ】
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