プロバレーボール選手の斎田杏選手は海外でプレーを始めて4シーズン目になる。現在はスイスリーグで活躍中。スイスを始め、海外での選手生活について話を聞いた。
買い物は国境を超えて
――スイスは寒そうなイメージがありますが、気候はいかがですか?
だいたい日本と同じくらいの気温です。夏は結構暑くて30度くらいになる日もあります。冬は0度やマイナス1度くらいです。この冬は結構雪も降っていましたけど、昨冬はほとんど積もりませんでした。私が住んでいるエッシュというところはそんなに降っていません。
チームメートと訪れたスイス・シルトホルン山(写真:本人提供)
――言葉は何語を使うのですか?
スイスは地域によって4ヵ国語に分かれており、エッシュはドイツ語圏です。でもスイスドイツ語といって標準ドイツ語とは違います。あとはイタリア語圏、フランス語圏と、もうひとつあります(編注:ロマンシュ語。南東部のごく一部、アルプスの山麓部でのみ使われている)。チームではスイス以外の国の選手もいるので英語です。
――食生活はどうですか?
今は自炊していて、日本からいろいろと調味料を持ってきているので、それを使って料理しています。日本にいた頃、寮に住んでいる間はやっていませんでしたが、ひとり暮らしをした時に始めました。海外に出てから料理をする機会が増えましたね。でも、こっちは物価が高いので、スイスのスーパーにはあまり買い物に行きません。今は新型コロナウイルスの影響で国境が封鎖されていて行けないのですが、ドイツまで車で20分くらいと近く、物価もスイスに比べると安いので、普段はみんなドイツまで買い物に行きます。
――買い物に国境をまたいで行くなんて国が隣接し合うヨーロッパならではですね。スイスの生活で大変なところはありますか?
スイスは日本と似ているので、あまり大変なことはありません。町もきれいですし、電車も時間通りに来ます。日本人にとっては結構住みやすい町です。ただ、物価が高いです(笑)
選手がビール配達員に!?
――現在所属しているチームやスイスリーグについて聞かせてください。まずチーム名は何と読むんですか?(Sm’AeschPfeffingen)
チームのある場所がエッシュで、頭についたSとMを続けて読むので、スマッシュ・プフェッフィンゲンです。ドイツ語みたいな発音で、ちょっと鼻に空気が抜けるような言い方でふがふがする感じです(笑)
――チームのロゴがデザインされたビールをホームページで発売していますね
スポンサーにビールメーカーがあるので、一度チームのみんなで工場に行ってビールを作りました。本来であればホームゲームの時に販売するのですが、今シーズンは無観客なので、注文が入ると選手がお届けするサービスをしていました。私も一度届けたことがあります。
――選手が届けるのですか。すごいですね
でも、その分高いです。こちらではビールは基本的に安いのですが、このビールは6本で3〜4000円します。
――選手お届けプレミア価格なのですね
たぶんそうです(笑)
――現在(1月25日時点)のチームの順位は?
1位です。昨シーズンもレギュラーシーズンは1位でしたが、新型コロナウイルスの影響でプレーオフはありませんでした。女子の1部リーグは10チームあり、ホーム&アウェーで2試合ずつ戦うレギュラーシーズンを消化して、通常でしたらその後プレーオフを行います。今のところ今季はプレーオフも開催予定です。3戦先勝で勝ち上がる形式なのですが、今シーズンは短縮されて2戦先勝形式になるかもしれません。勝ち上がったとしたら、シーズンは4月の後半まで続きます。
所属チームの監督アンドレアス・フォルマーとの一枚(写真:本人提供)
――チームに外国籍選手は何人くらいいるのですか?
スイス人の選手は4人しかいなくて。アメリカ人が5人、ロシア人とオーストリア人が1人、あと日本人の私が外国籍です。
――試合に出る際のルールはあるのですか?
コートの中にスイス人の選手が2人以上入っていないといけません。リベロは自由に交代できるので、リベロとしてスイス人の選手が出る場合はリベロ登録の選手が2人ともスイス人でないとダメです。普段は私がリベロで出ているのですが、弱いチームと戦った時に1試合だけスイス人の選手がリベロで出場して、私は普通のユニフォームを着てプレーしました。
――試合はどのようなペースで行われていますか?
毎週土日のどちらかが試合です。(リーグ戦以外に)CEVカップやチャレンジカップが入ってくると、水曜日にも試合をするのですが、今季は新型コロナウイルスの影響で全部キャンセルになったので、国内のリーグ戦だけが行われており、それらも無観客試合です。
――リーグのレベルはいかがでしょうか?
例えばVリーグのトップチームには勝てないかもしれませんが、いい試合はできるのではないかと思います。
新型コロナウイルスの影響で練習時間が延長
――新型コロナウイルスの状況はどうですか?
スイスは小さい国の割に感染者は多いようですが、チームにはいません。他のチームには感染者が出ていて、10日間隔離などの対応を取ったようです。町ではスーパーや薬局などの生活必需品のお店以外は全部、2月末まで休業しています。年末までレストランはテイクアウトなどの対応をしていましたが、年明けからはスポーツジムなどを含め、いろいろなお店が全部閉まっています。
――練習などへの影響はなかったのですか?
特にありません。練習で使用している体育館は他のスポーツチームも使用するので、使用時間は制約があったのですが、新型コロナウイルスの影響でアマチュアスポーツは活動中止となりました。その分、私たちは体育館が自由に使えるようになってしまい、夕方から始まって通常2時間くらいで終わる練習が、21時過ぎまでやることもでてきました。みんな「長いよー」って言っています。日本ではそれほどでもないですけど、私もこっちの生活に慣れてしまったので、「長いなぁ」って思います(笑)
――――――――――――――
斎田 杏(さいた・あん)
1993年1月27日生まれ/宮城県多賀城市出身/リベロ
古川学園高ではインターハイと国体で優勝。2011年日立リヴァーレ入団。2017年よりドイツのシュヴァルツ・ヴァイス・エアフルトへ移籍。2018年にルーマニアのCSMブカレストへ、2019年よりスイスのスマッシュ・プフェッフィンゲンに移籍して現在2シーズン目。