斎田杏インタビュー【後編】楽しいバレーボールを自分のために
- 海外
- 2021.02.20
自分のために楽しんでバレーをすること
――以前、日本のテレビ局のインタビューで「日本代表を目指しているわけではなく、楽しんでバレーをしている」と答えていたことが印象的でした。いつ頃からそう思うようになったのですか?
日本に4、5シーズンいましたが、試合に出場する機会が少なかったので、正直に言うと楽しくなかったです。 海外に来てから、当たり前のように必要としてもらい、試合で使ってもらえた上に評価してもらえたので、心から楽しいと思えました。みんなそうだと思いますけど、自分のためにやっているので、自分が楽しむことが一番です。
――「日本代表を目指すわけではなく、楽しむことが一番」とは言いづらい空気もあると思うのですが、気にしませんでしたか?
気にしなくなったと思いますね。海外では監督と選手という立場だったり、年齢だったりを気にせず、言いたいことを言える環境です。なので、自分も言いたいことを言えるようになったと思います。
――海外でプロとしてやっていくためには、選手として必要とされなければ続けられないと思います。楽しさだけではないとも思いますが、いかがでしょうか?
プロはすぐに首を切られることもあるので、みんな意識が高いです。練習時間も短いので、その分集中します。オンオフもはっきりしていて、みんなプライベートも充実させていますね。バレーだけではないからこそ、バレーもちゃんとして、プライベートも楽しめるのだと思います。
スイスのインターラーケンでチームメートとソリを楽しむ斎田選手(写真:本人提供)
――オフがあるからオンもより楽しめるのですね。今後の夢はありますか?
海外でプレーすることが夢だったので、もう叶いました。自分の中では1年ごとと思ってやっているので、とりあえず今シーズンを乗り切って、いい結果を残して、それで満足したら引退でもいいです。だいたいシーズン中盤を過ぎた頃になると「もうお腹いっぱいかな」と思って辞めたいという気持ちが大きくなってくるのですが、いい条件のオファーが来ると、もうちょっと頑張ってもいいかなと思い直します。ヨーロッパは国同士が隣接していて旅行もしやすいですしね(笑)
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斎田選手は明るく充実した様子で話してくれた。バレーボールも真剣に取り組むが、現地での生活も精一杯に楽しむ。ひたすら頂点を見つめ、そこを目指す選手もいれば、生活もバレーも存分に楽しむという選手もいる。様々なキャリアの歩き方があることはバレーボールの文化が多様性を含む証とも言えるのではないだろうか。今日も彼女はバレーボールを楽しんでいる。【完】
斎田 杏(さいた・あん)
1993年1月27日生まれ/宮城県多賀城市出身/リベロ
古川学園高ではインターハイと国体で優勝。2013年日立リヴァーレ入団。2017年よりドイツのシュヴァルツ・ヴァイス・エアフルトへ移籍。2018年にルーマニアのCSMブカレストへ、2019年よりスイスのスマッシュ・プフェッフィンゲンに移籍して現在2シーズン目。
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