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月バレで振り返る 東日本大震災後のバレーボール選手たちの祈り【2】

 2011年3月11日に発生した東日本大震災。被害に遭われた方に向けて当時の月刊バレーボールでは、国内外問わず多くのバレーボール選手からメッセージをいただき、掲載しました。その一部をウェブに掲載いたします。当時を振り返りながら、今の自分たちに何ができるのか、考える時間となれば幸いです。(所属は2011年当時のまま・文章については一部省略、また表現を改変しています)

 

【写真】国内外のバレーボール選手から集まったメッセージ

 

 

バレーを通じて周囲を勇気づける連鎖を

山本隆弘(パナソニックパンサーズ)

 

「今まで普通にあったものがこういう形でなくなってしまうことなんて想像できなかったし、何とか助けられないのか。そればかり考えていました。だからといって、現地へ行っても何ができるわけでもない。もどかしさがある中、できることを探していたら、陸上の為末(大)選手が立ち上げたアスリートによる募金のサイトを見つけました。手助けできることがあるならどんどんやっていきたかったし、ぜひ賛同しようと。清水や宇佐美を始め、チームメイトのみんなも協力してくれたし、多くの方に賛同していただいたおかげで、微力ながら協力することはできたのかなと思う部分もあります。

 

 とはいえ、僕の本職はバレーボールなので、義援金集めだけが協力できることなのかといえば、それだけではないですよね。バレーボールを通じて何かサポートをしていかないといけないだろうし、バレーをしたくてもできない子どもたちもいっぱいいるので、そういう人たちに勇気や希望をプレーで見せていかないといけない。アスリートとしてやらなきゃいけないことがいっぱいあると思います。まずは5月の黒鷲旗で、100%の力を発揮して正々堂々戦う姿を多くの人に見てもらい、勇気を与えていくことが、今、僕たちに与えられている一番の仕事じゃないかなと思っています。

 

 少し状況が落ち着いたら東北地方で試合をしたり、避難所にいる方々と触れ合いの場を設けたいとも思っています。東北はもともとバレーが盛んな地域だし、バレーをやっている人たちをまずは僕らが勇気づけて、その人たちが今度は周りの人たちを勇気づけるような連鎖を起こしてくれたら一番いい。それこそが僕らの役割だと感じています。

 

 僕1人の力ではどうしようもないかもしれないけれど、1人でも多くの人が一緒に考えて、動くことができれば小さなことも大きなものに変わるはず。そのためには、僕らが協力できることは何でもします。我慢することなくどんどん言ってもらえれば協力体制は作れると思うので、みんなの力を合わせてこの困難を乗り越えられるように頑張っていきましょう。今はただ、その思いだけです」

 

↓【次ページ】清水邦広選手からのメッセージ↓

 

被災者の方々のことを思ってもっと頑張らなきゃ

清水邦広(パナソニックパンサーズ)

 

 「地震の時は大阪にいました。かなり大きな地震だとテレビで報道されていたので、すぐに親へ電話したら『大丈夫だった』というので安心しました。

 

 自分自身も高校時代に福井豪雨を経験しました。大雨で川が氾濫(はんらん)して、家も浸水しましたし、川沿いでは流されてしまった家もありました。自分は合宿で家にいなかったのですが、腰まで水につかったので役場まで逃げるのがたいへんだったとか、水道管が破裂して道路がぐちゃぐちゃになったことをあとから聞いたので、水の怖さを知っていましたし、そういった面でも被災者の方がたいへんだろうと気になります。しかも、雪国はまだ寒いですから思っている以上に苦しい状況だと思います。福井も海が近いし、原発もある。他人事じゃありません。

 

 チームとしてはすぐに練習を再開しましたが、自分自身はあまり身が入らない部分もありましたし、津波の情報や原発のことが気になっていました。みんなとも『こんな時に練習をやっていていいのか』という話をしましたし、悩みました。何ができるかわからない中、山本さんが募金活動を始めたので、自分たちもそれに協力させてもらったり、関西はあまり関係ないかもしれないけれど節電をしたり。

 

 自分にできることといえば、周りの人を勇気づける、元気にしてあげることぐらいしかないので、頑張っているプレーを見て少しでも笑顔が戻ればいいなと思うし、被災者の方々のことを思って、自分自身ももっともっと頑張らなきゃいけないと思います。

 

 満足な食糧がなくて1日2食で過ごしていたり、東と西、同じ日本なのにいる場所が違うだけでこんなに生活が違うのかと思うと悔しいです。それでも被災者の方々には希望を持って生きてほしいし、そのために勇気づけられるような試合をするとか、バレー界でも今後はしなければならないことがたくさんあると思います。国際大会でも少しでも勝って勇気づけたいですし、希望の光を持ってもらうためにも勝たないといけないし、その義務があると思っています」

 

↓【次ページ】福澤達哉選手からのメッセージ↓

 

精神的に弱ってくる時に大きな力を与えるのがスポーツ

福澤達哉(パナソニックパンサーズ)

 

 「3月11日、体育館にいたのですが、テレビを見て広がった光景にただただ驚きました。どんどん被害が大きくなっていく中で、少しでも多くの人が助かることを祈りながら、救援物資が少しでも多く現地の人に届いたらいいなという思いが強くありました。今はまだ、見つかっていらっしゃらない方もたくさんいらっしゃいますし、段階的に復興というよりも救済、いかに現地の人を手助けするかというのが一番だと思います。

 

 (山本)隆弘さんの取り組みに自分も賛同してやらせていただいたのですが、プロ野球の開幕が決まったり、サッカーのチャリティーマッチがあったり、徐々にスポーツ界が動いてきています。これから被災者の方々や日本全体が精神的に弱ってくる時に、一番大きな力を与えるのがスポーツだと思います。プレーでみんなを勇気づけたり、あきらめない心で希望を与えることができる。これからが自分たちの動きだす番だと思っています。

 

 まずは、直近で黒鷲旗が予定されているので、そこで少しでも多くの人に、自分たちのプレーする姿というのを見てもらったり、伝えてもらったりしていくことによって、『勇気をもらいました』という声が一つでも多く上がればいいと思いながら、練習をしています。

 

 バレーでしか表現できないことを、チームとしても個人としても発信していくことが大事だと思います。自分にできることは少しかもしれないですが、とにかく一生懸命のプレーを見ていただけるように頑張ります」

 

 

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