■セリエA/石川祐希のミラノが準決勝進出を懸けて対峙するペルージャ。逆襲のピースとなりうるオポジットの面々
(文中のポジション表記/OH…アウトサイドヒッター、MB…ミドルブロッカー、OP…オポジット、S…セッター、L…リベロ)
<“トップ4”の一角を担う、ペルージャ>
リーグ屈指の強豪ペルージャ
イタリア・セリエAはプレーオフ本戦に突入し、現地3月14日にクオーターファイナルラウンド(準々決勝)の第2戦が実施される。このラウンドは2勝勝ち抜けとなっており、第1戦を制したチームは準決勝進出を懸け、敗れたチームはあとがない状況からの逆襲を目指す。
第1戦のハイライトといえば、石川祐希が所属するミラノとペルージャの一戦だろう。レギュラーシーズンを1位で通過したペルージャを相手に2セットダウンの状況に追い込まれながら、同8位のミラノが驚異の粘りを見せて逆転勝利。今季はトレンティーノやモデナといった、リーグ屈指の強豪クラブから勝ち星を挙げたミラノの地力の高さを象徴する結果となった。
とはいえ、ペルージャもこのまま引き下がることはないはず。2017/18シーズンで初優勝に輝き、ルーベやトレンティーノ、モデナとともに『トップ4』の地位を確立したペルージャは、今季もスーペルコッパ(スーパーカップ)で優勝、コッパイタリア(カップ戦)準優勝を遂げ、国内リーグ最後のタイトル獲得を狙う。
<20/21シーズン最初のタイトル、スーペルコッパ制覇に沸いた>
磨きがかかるサーブ&ブロック
今季のペルージャの強みは、『サーブ&ブロック』だ。時速130キロオーバーの弾丸サーブを繰り出す“地上最強アタッカー”OHウィルフレド・レオン(ポーランド)や、サウスポーから打ち出す横の変化の大きいサーブが特徴のOHオレイ・プロトニスキ(ウクライナ)が相手を効果的に崩し、MBセバスティアン・ソレ(アルゼンチン)を中心とした固いブロックで仕留める。現・男子ポーランド代表監督のフィタル・ヘイネンが2019/20シーズンから指揮を執り、このスタイルはより磨きがかかっている。
メンバーを見ると、Sドラガン・トラビカ(イタリア)やLマッシモ・コラーチ(イタリア)、ソレは各国代表の選出歴もある面々で、シーズンを通して固定。レオンは言わずもがな、プロトニスキはヘイネン監督が抜擢して以降、ポテンシャルが開放され、メンバー表のファーストチョイスとなっている。
一方、今季に臨むにあたり、最も補強したのがOP。これによって、攻撃に豊富なオプションが備わった。必勝を期すミラノ戦で誰がコートに立つのか? 4人のOPを紹介しよう。
<“ブロックデビルズ”の異名を持つペルージャ>
<男子ポーランド代表でも出場機会を得ているムザイ>
プレーオフを前にムザイを獲得
ミラノとの第1戦で登場したのは、OPマチェイ・ムザイ(ポーランド)だった。身長207センチの高さもさることながら、リーチの長さを生かしたアタックが魅力で、2019/20シーズンにはロシア・スーパーリーグで得点王に輝いた。今季もロシアでプレーしていたが、今年2月初旬にペルージャに移籍加入。もっとも、ヘイネン監督は代表でもムザイを積極的に起用しており、プレーの良し悪しは知った仲。この時期に迎え入れたということは、タイトル獲得へのピースとしての期待もあるだろう。
そのムザイが加入するまでファーストチョイスだったのが、OPテイス・テルホルスト(オランダ)。パンチ力のあるアタックで得点を重ね、昨季はラヴェンナで活躍、今季ペルージャに移籍加入した。サーブを打つ際には、チームメイトから「テイス!!」コールがかかり、ムードも高まる。ただ、ミラノ戦では敵将が男子オランダ代表を指揮するロベルト・ピアッツァ監督だったこともあってか、リザーブとしての起用にとどまった。
<テルホルスト(写真左)とエバンズ(同右)>
アタナシエビッチはラストシーズン
テルホルストと同じく、ラヴェンナから今季移籍したのがOPシャローン・バーノン-エバンズ(カナダ)。なんといっても身体能力を生かしたアタックが持ち味で、代表でも高いポテンシャルの片鱗を見せつつある。とはいえ、まだ荒削りな部分が多く、今季はほぼ出番なし。磨けば輝く点はヘイネン監督の好みでもあり、今後の成長が楽しみな存在といえるだろう。
そして最後は、ペルージャの顔。背番号14番は愛称“マグナム(弾丸)”、OPアレクサンダル・アタナシエビッチ(セルビア)だ。セリエAでのキャリアをペルージャでスタートさせ、初年度の2013/14シーズンから3季連続で得点王に輝いたアタッカーであり、代表でも2019年ヨーロッパ選手権では金メダルとベストオポジットに輝いた実績を持つ。昨季終了後に施した手術の影響もあってか、今季は本来のパフォーマンスとは遠いのが正直な印象だが、コートに立てばその存在感は絶大。すでに今季限りでの退団が決まり、8シーズンを戦ったこのチームで最後の国内タイトル獲得をにらむ。
<ファンの期待を集めるアタナシエビッチ(写真コート奥)>
必勝を期する第2戦、コートに立つのは?
OPに関していえば、多くの選択肢を有しているのが今季のペルージャの特徴でもあるが、反対の見方をすれば、唯一のウィークポイントともいえるかもしれない。これまではテルホルストとアタナシエビッチを主としてきたが、ミラノ戦ではムザイを抜擢。実は2月の入団後、CEVチャンピオンズリーグ2021を含めると、これが初の先発起用でもあり、そこにはリスクもあったはずだ。
実際、リードを最大6点までつけながらミラノの追撃に見舞われた第4セットで、ムザイは鳴りを潜め、最終的にアタナシエビッチと交代している。
レオン、プロトニスキの両サイドアタッカーが軸となり、センターエリアからソレが加わることで攻撃にリズムをもたらすが、やはり決定機で役目を果たすOPの存在は不可欠。継続してムザイを使うか、従来のテルホルストか、花道を飾るアタナシエビッチか、それとも隠し球のエバンズか? ヘイネン監督の選択や、いかに。
対するミラノも、それだけにとらわれはしないだろう。ペルージャの強力なサーブに崩されることなく、ゲームを作ることがまずは必要だ。その点、石川やOHティネ・ウルナウト(スロベニア)のサーブレシーブにおける安定感は折り紙つき。攻撃枚数はそろっており、勝機は十分にある。昨季の5位(コロナ禍により打ち切り時点の最終成績)を超える、セミファイナル進出は目の前。第2戦の舞台がホーム、ミラノであることもアドバンテージになりうる。
歴史が動くか、それとも決着は最終第3戦に持ち込まれるか、注目だ。(文/坂口功将〔編集部〕)
<ヘイネン監督(写真左端)の手腕の見せどころだ>