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富士通 兵頭佳樹/新人賞に輝いた“5番手の男”

■富士通カワサキレッドスピリッツ 兵頭佳樹/新人賞に輝いた“5番手の男”

 たとえ最後尾からのスタートでも。たゆまぬ努力を続け、周囲の要求に応えることで道を切り開いた。そんな一人の男の、ルーキーイヤーをここに記す。

 

兵頭佳樹(ひょうどう・よしき/大阪商大/身長183センチ/アウトサイドヒッター)

 

チームメイトの誰もが認める成長株

 

 2020-21 V.LEAGUE DIVISION2 MEN(V2男子)で最優秀新人賞に輝いた、富士通カワサキレッドスピリッツの兵頭佳樹。Vリーグを終えた今、チームのいたるところから、「今季いちばん成長した男」という評価が聞こえてくる。それもそのはず。入団してまもないころは、練習試合はおろかAB戦でさえ、なかなか出番を与えられずにいたのだから。チームを指揮する山本道彦監督は正直に告白する。

 

 「2020年度の新人選手は4名いましたが、実力からの期待度でいえば4番手でした。それにアウトサイドヒッターでは、もともとレギュラーの浅野卓雅と米澤寛武に、角大樹と谷平拓海が続いて、その後ろの5番手。それが兵頭への評価だったんです」

 

 昨季、内定選手として帯同していたこともあったが、当の本人が明かすに「いつかコートに入れればいいかな」という心持ち。甘んじていたわけではなかったが、練習を見ているときも「周りから浮いているような…、チームに馴染めていない感覚でした」という。

 

 そうしてスタートしたルーキーシーズンだったが、リーグ戦開幕までに米澤と谷平が練習で故障したことで、兵頭に白羽の矢が立つ。もちろん、そこには彼の取り組み方が背景にあった。再び山本監督の評価。

 

「最初はプレーが粗かった。ですが、先輩たちから言われたことを彼はほんとうに貪欲に吸収して、努力を続けていました。アドバイスを忠実に形にする、それが成長と活躍につながったと思います」

 

<シーズンを通して、攻守で活躍を見せた(写真中央)>

 

<次ページ>【ミスをしないという武器】

<どのプレーでも安定感が光る>

 

ミスをしないという武器

 

 リーグ戦では全試合でスタメン出場を果たし、ていねいなプレーで貢献した。コートに立つうえで、「自分のポジジョンは、いわゆる“裏のレフト”。対角の浅野選手やオポジットの栁田(百織)選手のような花形ではありません。ただ、このポジションがミスしなければチームは勝てる、そのイメージでプレーしていました」と兵頭。

 

 その姿を見ていた谷平も同期の活躍に悔しさをにじませながら、どこか自慢げに、こう話す。

 

 「お手本のようなプレーなので、たくさんの人に見てほしいです。見ているだけで、うまくなりますよ」

 

 谷平が言うに、それは“勝利につながるうまさ”だというのだから、兵頭自身が胸に留めていることと合致する。

 

 「個人のうまさ、ではないんです。だって、練習や遊びでネットを挟んだら、めちゃくちゃ弱いんですよ(笑) けれども、チームが決めた組織的な動きの中で、確実に光るうまさ。点の決め方もそうですし、ミスをしないこともです」(谷平)

 

 自身のことを“ライバル”と言ってやまない同期の、「ミスをしない」というコメントに兵頭は照れ笑いを浮かべた。チームの4連覇に貢献し、最優秀新人賞を手にした兵頭にとって、今も成長の糧になっているのは先輩たちからの言葉だ。

 

「『兵頭、安定しているね』と言われるときは、すごくうれしかったです。安定したプレーヤーとは、自分がずっと目指しているものでしたから」

 

 愚直なまでに、自らに成長を課し、役目をまっとうした。それが最後尾から駆け上がることができた理由だった。

 

 「試合に出させてもらえたこと自体が楽しかったですし、富士通のバレーボールが好きになりました。今、すごく楽しいです」

 

 同年代の“先頭に立つ男”の口元で、白い歯がキラリと光った。(取材・文/坂口功将〔編集部〕)

 

<2020-21シーズン、13勝目の試合後に集合写真の真ん中へ>

 

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