男子ポーランド代表のクレイジージャーニーは世界一のチーム内競争
- コラム
- 2021.05.19
■男子ポーランド代表が歩むクレイジージャーニーは世界一のチーム内競争
2018年に世界選手権を制した男子ポーランド代表。世界屈指のタレント集団と、情熱的な指揮官が織りなすサクセスロードの今。
<男子ポーランド代表>
現体制で世界選手権優勝、ワールドカップ準優勝
1年越しのオリンピックイヤーを迎え、各国も代表シーズンをスタート。すでに4月ごろから強化合宿に励み、5月下旬からリミニ(イタリア)で集中開催されるネーションズリーグを経て、戦いの舞台を東京2020オリンピックへ移していく。
どのチームも“オリンピックの金メダル”を最大のターゲットにし、列強諸国との争いを制すべく、己を磨いていく。と同時に、オリンピックという舞台に立つ12名の座をめぐる争いも繰り広げられている。
それは東京2020オリンピックの金メダル候補筆頭、男子ポーランド代表も同じ。そのサバイバルは世界一熾烈といっても過言ではない。
まず、これまでの男子ポーランド代表を振り返ると、2017年に一度はフェルディナンド・デジョルジ氏が監督に就任したものの解任。2018年から現在のフィタル・ヘイネン監督体制となった。
ヘイネン監督といえば、「私はクレイジーな人間だよ」と自負するほど。言い換えれば、それほどまでに熱心ということだが、とにかく個性的な人物だ。試合中の激しいリアクションのほか、インタビューでも自分のペースに引き込む。置かれた状況に苦言を呈することもいとわず、例えば2019年のワールドカップでは試合後の記者会見の時間短縮を訴えた。結果的に、そうした言動でその場を支配し、自分だけでなく選手そしてチームが有利に事を進められるように導く手腕は秀逸だ。
もちろんバレーボールに関しては、卓越したチームマネジメントが武器。代表レベルでは2014年世界選手権で男子ドイツ代表を銅メダルに導いた実績を持ち、その4年後の世界選手権でポーランドに金メダルを持ち帰っている。翌年は東京2020オリンピック大陸間予選をクリアしたほか、ワールドカップで準優勝、ネーションズリーグとヨーロッパ選手権で銅メダルへと導いた。
東京2020オリンピックは新型コロナウイルス感染拡大の影響のため延期となったが、昨年夏には代表合宿を実施。その後、クラブシーズンを経て、今年は4月から代表活動を始動した。
<フィタル・ヘイネン監督(写真右)>
地上最強アタッカーが加入し、チーム力はさらにアップ
2017年からのサイクルにおいて、ヘイネン監督の就任と同時に大きなトピックスとなったのが、ウィルフレド・レオンの加入だ。弱冠14歳でキューバ代表入りを果たすと、2010年の世界選手権準優勝に貢献。その後、ポーランドに帰化し、2019年の夏から代表メンバーの登録が解禁されている。
身長202センチ、最高350センチから強烈なアタックを繰り出し、時速130キロを超す弾丸サーブは、今まさに“地上最強アタッカー”と呼ぶにふさわしい存在。そのレオンが世界選手権王者に加わったのだから、対戦国にとっては脅威が増した以外の何物でもない。
2018年の世界選手権を戦った主力メンバーを見ると、大会MVPに輝いたオポジットのバルトシュ・クレクとテクニックが光るアウトサイドヒッターのミハウ・クビアクが攻撃の中心。この2人とセッターのファビアン・ジズカ、リベロのパベウ・ザトウスキ、ミドルブロッカーのピヨトル・ノバコフスキはほぼ固定で、クビアクとノバコフスキの対角は対戦相手や試合の状況によって、選手が入れ替わっていた。
もっとも誰が出ても劣ることがない選手層の分厚さと、また当時は前年の男子U21世界選手権優勝メンバーである若手選手たちも与えられた出場機会の中で引けを取らないパフォーマンスを披露した点に、ポーランド代表の底力を感じたものだった。
やがて2019年のネーションズリーグでは、クビアクやクレクらの主力メンバーを欠いた、実質セカンドチームと呼べる陣容でありながら、フルメンバーのブラジルからファイナルラウンドで2勝(ファイナル6、3位決定戦)をあげている。
<ウィルフレド・レオン(写真コート奥)>
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