選手と共に戦う 星城高・中根聡太監督
- 高校生
- 2021.06.22
全試合ストレート勝ちで3年ぶりのインターハイ出場を決めた星城高(愛知)。同校のOBで、自身初の全国大会予選突破を決めた中根聡太監督の指導スタイルに迫る。
胴上げの前に笑顔を見せる中根監督
選手たちと共に、若き指揮官は戦っていた。星城の中根聡太監督にとって、勝てば就任後初の全国大会予選突破が決まる一戦。決勝リーグ戦第2試合(栄徳戦)では静かに戦況を見つめていたが、大同大大同戦では試合開始直後にスイッチが入った。1点目が決まると「よし!」と大きな声を上げ、その後も時に熱く、時に冷静に指示を送る。昨年度の春高予選でフルセットの末勝利した相手にストレート勝ちし、見事インターハイの切符をつかんだ。
指揮官の熱い姿に、安達希音キャプテンは「自分たちと距離がすごく近いです。得点が決まったときは一緒に喜んでくれて、一緒に雰囲気がつくれたと思います」と笑顔。試合後には選手たちに手招きされ、中根監督は3度宙を舞った。「どうしても勝ちたくて」と語る表情には充実感が漂っていた。
星城高時代は、セッターとして石川祐希(ミラノ)らとともに前人未到の六冠を成し遂げた。筑波大に進学し、卒業後はジェイテクトに入団。2019-20シーズンには正セッターとしてチームを初優勝に導きながら、直後に母校の指導者になる決断を下した。同校のコーチを経て、昨年度の春高からは指揮官としてチームを率いる。中根監督を高校時代に指導し、現在は右腕として支える竹内裕幸総監督は、チームの変化を感じている。
「練習の質がほんとうに上がっていると思います。インターハイ予選に向けて、チームの安定感がかなり増しました。同じメニューをやっていても、子どもたちの心の張りというか、目の輝きが違います」
中根監督自身が高校、大学時代に経験したメニューが練習のベース。指導者としての経験不足を補うために、練習試合で対戦するチームを観察したり、動画サイトを見ながら、選手に合うメニューを日々試行錯誤している。中根監督が高校時代に取り組んでいたメニューに選手たちが取り組む姿を見ると、竹内総監督は新たな発見もあるという。
「子どもたちが漫画の『ハイキュー!!』を読んでいて、『近代的なメニューを取り入れなければ選手たちの心に刺さらないかな』と思っていたところ、中根監督が『スパイクの打ち込みは大事ですよね』と問いかけてきました。中根先生たちの世代がなぜ勝っていたかを振り返ると、そういう部分も大切にしていたな、と。忘れていたな、と思わされることもあります」
自主性を促す指導スタイルは、竹内イズムを受け継ぐ。大同大大同戦前にはミドルブロッカーの細川晃介と木下叶有を呼び、映像を見せながら言葉をかけた。その意図を「大同さん(大同大大同)がメンバーを変えてきたので、アジャストしてもらえるように」と話し、こう続けた。「でも、実際にどうするかは彼らに選択してもらうことです」。ミーティングに一切参加しない竹内総監督同様、選手たち自身に考える力を身に付けさせる。「3年間で心や頭を磨く」チームが、監督としての理想像の一つだ。
大同大大同戦を控え、木下(左)と細川(右)に指示を送る中根監督
中根監督の下、198㎝の細川、194㎝のサウスポー伊藤蒼眞、攻守で高いパフォーマンスを見せる東怜佑の2年生トリオを中心に、選手たちはメキメキと力をつける。インターハイでの優勝は、石川や中根監督を擁した2013年が最後である。
現役の選手たちと同世代だったころ、六冠に輝いた選手たちはどんなチームだったのか。中根監督が「勝ちに貪欲で、負けたくない思いが強い集団だったと思います。特に石川は負けず嫌いで、その思いが人一倍強かったです」と言うと、竹内総監督は笑ってツッコむ。「そう言いますけどね。石川以上に負けず嫌いだと感じる選手はほかに何人もいて、中根先生はその一人でした(笑) そういうメンバーを見ていると、石川の意見は非常に弱かったです」。
中根監督(左)と竹内総監督
月刊バレーボール7月号では、「祐希と藍 日本代表を担う2人へ」と題し、日本代表のキャプテンを務める石川祐希と、最年少ながら日本代表の中心選手として注目を集める髙橋藍をよく知る人物にインタビュー。中根監督と竹内総監督から見た星城高の石川祐希キャプテンとは――
文・写真/田中風太
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