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吉原知子(JT)×山村宏太(サントリー) 昨季Vリーグ優勝監督が語る指導術【月バレ11月号/Vリーグ開幕特集】

 

 

 昨シーズン連覇を飾ったV1女子、JTの吉原知子監督と、14年ぶりの優勝に導いたV1男子、サントリーの山村宏太監督。シーズン開幕を直前に控えた9月下旬、月刊バレーボール11月号で初の対談が実現した。本誌には掲載できなかった内容をお届けする。

 

――吉原監督は引退後に筑波大大学院で、山村監督はコーチ時代にイタリアのリヴォルノで指導者として学ばれました。それぞれ監督を務めながら、今はどんな勉強をされていますか?

山村:僕はバレーボールにかかわらず、いろんな競技の指導者の方の本を読むようにしています。そのほかにも、リーダーになる人の考え方が気になって、分野は違いますが、ビジネス書も読んでいます。自分らしさや、自分の特徴を最大限に生かすためのコミュニケーションって何なのかな、と常に考えて、そのヒントとして読書をしていますね。

 

――印象的な一冊はありますか?

山村:たくさんありますが、最近は社会人野球のENEOSで監督をされている大久保秀昭さんの本(『優勝請負人の導く力』)を読みました。とても選手に寄り添った考えを持っている方で、いろんな指導者の元で学ばれていると書いてあって参考になりました。

 

吉原:私も本は大好きで、いろんな分野のものを読んでいます。ただ、だからといって、自分がそれに全部左右されるかといえばそうではありません。自分という軸があって、もっとこういうことが必要だな、ということは常日頃から自覚しないといけないと思います。

 読書のほかにも研修や講義を聞いたり、栄養学や女性の問題などバレー以外の部分も学んでいます。トレーニングについてはある程度、自分も経験してわかっていますが、わからないことがまだまだあるので、いろんな分野を少しずつ勉強しています。

 

――ほかの指導者から学ぶという点では、それぞれに聞きたいことはありますか?

山村:女子は高校を卒業してすぐにVリーガーになるケースが多く、これは語弊があるかもしれないですが、「先生の言うことは絶対」という環境でやってきた選手もいると思います。男子ですら、Vリーグに入っても大学の考え方を通そうとする選手が多く、その彼らが、Vリーグで自主性を求められると、かなり戸惑いがあるのかなと考えています。(練習を)やらされてきた弊害が出ているのかな、と思いますが、女子はいかがでしょうか?

 

吉原:自分で考えることを訓練されておらず、指示待ちになってしまうので、まず私は「自分でやるべきことを見つけて、自分で答えを出しなさい」という話をいつもします。コートでは、最終的には一人で判断して、決断しないといけません。ただ、自立ができていなくて、指示待ちをしてプレーが遅れてしまったり、自分のパフォーマンスを出し切れないことがすごく多いと思います。

 今、山村さんに指摘されたことは、チームに入ってきてすぐにかなりうるさく言いますね。「言われたことだけじゃなくて、自分でも考えないと。それでは前に進まないよ」という話もします。

 

山村:自分で考えられるようになる選手と、なかなか抜け出せない選手に分かれてくると思います。それって、バレーボールだけじゃなくてふだんの生活でも見えませんか?

 

吉原:見えますね(笑)

 

山村:僕らはお酒の会社なので、酒席のマナーだったり、人のグラスに気を遣うようになっていきます。コートでも自分で考えられると、すごく気遣いができたり、周りに目を配るのが得意な選手が多いです。でも、なかなか自分で考えられない選手は、言ってあげないと気づけないことが多い。なぜ気づかないのかがわからないので、どう声をかけていいか悩みますね。

 

吉原:悩みますね。私はとにかくコミュニケーションを取りながら、「どう思う?」という聞き方で話すようにしています。バシッと言うのではなくて、「ああいう風にできたらいいよね」とか、「ああいうところを気づけたら、プレーでも相手のやってくることを読めるんじゃない?」とか。ふだんの会話で気づいてもらいたいと思って、自分から話に行きますね。

 

山村:そういう話し方になりますね。でも、なかなか気づかないですよね?(笑)

 

吉原:そうなんですよ。だけど、私はあきらめない人なんで(笑)

 

山村:僕もあきらめません(笑)

 

 

 

【次戦はサントリーとJTが大阪で共催!】

日時:10月30日(土)、31日(日)

<V1女子>

12:00~ JT  vs.  KUROBE

<V1男子>

16:00~ サントリー  vs.  ジェイテクト

 

場所:丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)

※会場および組み合わせは両日共通

 

 

吉原知子

よしはら・ともこ/1970年2月4日生まれ

現役時代はイタリアリーグを含む6チームに所属し、国内では在籍したすべてのチームで優勝。2015年にJTの監督に就任し、19-20シーズンに優勝。20-21シーズンはチーム初の連覇に輝いた

 

山村宏太

やまむら・こうた/1980年10月20日生まれ

現役時代は2m5㎝の長身ミドルブロッカーとして、14シーズンにわたってサントリーひと筋で活躍。20-21シーズンにサントリーの監督に就任し、チームを14年ぶりの優勝に導いた

 

 

取材/田中風太

 

 

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