プレーバック/JOC杯令和最初の王者 大阪北選抜(男子)の涙と笑いのビクトリーロード
- コラム
- 2021.12.21
今年12月25日から大阪で開幕するJOCジュニアオリンピックカップ第35回全国都道府県対抗中学大会(JOC杯)。昨年はコロナ禍のため中止となったが、今年も全国から選ばれし中学生たちが集い、その姿を見せてくれるだろう。
今回はプレーバック企画として、前回の第33回大会(2019年)で初優勝を飾った男子・大阪北選抜の軌跡を振り返る(『月刊バレーボール』2020年3月号「中学生の話題」一部加筆)
栄光なるナニワ排球道~ビクトリーロード~
令和元年12月28日(土)、丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館/大阪)ではJOC杯の最終日。決勝で熊本県選抜を下した大阪北選抜チームは、その試合後に一曲の歌を歌い上げた。
「ビクトリーロード~
この道~
ずっと~
ゆけば〜
最後は〜
笑える日が〜
くるのさ〜
ビクトリーロード」
それは19年のラグビー日本代表がワールドカップを戦うにあたり作成したという応援歌。この日、大阪北選抜のメンバーたちは、頂点にたどりついた喜びをかみしめていた。順風満帆ではない、けれども胸に深く刻まれたビクトリーロードを振り返りながら。
<第33回大会 大阪北選抜男子チーム>
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2019年度の大阪北選抜チームはセレクションが8月1日に実施され、12名が決定。緑中の梅原祥宏監督のもと、31日に初めて練習が行われチームはスタートした。そのメンバーを見ると、近年で全国大会優勝2度の実績を持つ昇陽中からはアタッカーの川内歩人と秦健太郎、セッターの當麻理人が選出された。
そのほか、身長190㎝で全日本中学生長身選手発掘育成合宿経験者の吉田怜真や、府内指折りのヤングクラブであるパンサーズジュニア在籍の川崎颯太や池田幸紀ら。その一方で、交野三中の尾幸汰や梶野龍之介、歌島中の内野大地など、中学からバレーボールを始めたという選手もいた。
そのチームは結成当初はバラバラ。和気あいあいと活動に励んではいるものの、第26回大会(2012年)から大阪北選抜に携わる梅原監督の目には「(自分が見てきた中で)いちばんまとまりのないチーム」に映った。一人の選手の保護者も「仲はいいのだけれど、心ここにあらず、といった雰囲気。本気で勝ちたいと思っているのか、正直わかりませんでした」と振り返る。
<(写真右から)當麻、秦、川内ら昇陽中の面々>
昇陽中やパンサーズジュニアのメンバーたちは、中学生世代においては高いレベルにあるといえる。だが、選抜となれば、それぞれの競技歴に違いもあれば、ふだんの練習環境や所属チームのスタイルが異なることから、すぐにまとまることは容易ではない。実際に、精度の高いコンビバレーを身上とする昇陽中の當麻は「トスを合わせるまで時間がかかりました」と、セッターとしての難しさを語っている。
『大阪北選抜』としてのチームづくりは難航を極め、それは練習試合に挑むローテーションの数に表れた。「ベストな形が見つからなかった」(梅原監督)がために、毎セットでコートに立つメンバーやポジションにはありとあらゆる手が施され、その数は30パターンにも及んだ。
また、選手たちの意識も一向に上を向かず、そんな様子を見かねたスタッフ陣からは幾度となく雷が落とされた。ある日、近畿大附高(大阪)で高校生と練習試合を組んだ際には、そのあまりの不出来ぶりに、「高校生の方々に場所も時間もいただいているのに、どういうことだ!?」と梅原監督は叱責。その場で声を出しながら走るように命じ、これはのちに“近大のランニング”という苦い記憶としてチームに刻まれた。
<開催地の代表でもある大阪北選抜>
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