プレーバック/JOC杯令和最初の王者 大阪北選抜(男子)の涙と笑いのビクトリーロード
- コラム
- 2021.12.21
多彩なローテーションで選抜史上初の大会制覇
結果的に、張られていた伏線は、すべて本番で回収された。JOC杯では予選グループ戦において登録メンバー全員に出場機会が設けられるようにルールが定められているが、大阪北選抜のローテーションは、誰が出ても、誰にとっても“一度は経験したことがある”といったもの。もっとも、出場メンバーは各セット開始直前に監督から発表されたそうで、選手たち自身は“いつ、どのように起用されるかわからない”ことにドギマギしていたとか。
そのように大会中も、メンバーが固定されることはなかった。各セットでガラリとメンバーを変えながら、勝機をたぐり寄せる。大屋久志コーチが活動期間中に練り上げたデータと、梅原監督の直感が融合した采配だった。
<誰がどのように起用されても力を発揮できるチームだった(写真コート奥)>
とはいえ特筆すべきは選手たちが、その起用に応えてみせたこと。昇陽中の3人はパフォーマンスを存分に発揮し、吉田や尾は高さを生かしたクイックで相手ブロックを寸断。リベロの池田や椎原大翔がボールを拾い上げ、レシーブに定評ある神田アレックスもワンポイントで投入されては、しっかりと返球して攻撃の起点となった。
また、チームの雰囲気も試合を重ねるごとに上昇した。もともとは秦の気持ちを押し上げるためにスタッフ陣が提案したという『どすこいポーズ』や、こぶしを振り上げる『熱男―ッ!!』は得点シーンの定番に。応援席に向かって選手たちが繰り出すと、ボルテージが上がった。
<得点時のパフォーマンスでは全身を使って感情を爆発させた>
そして熊本県選抜との決勝では予行演習どおりに、マッチポイントから最後は川内が得点。控えメンバーたちがコートの中へ滑り込むと、歓喜の輪の中でみんなが顔をくしゃくしゃにした。まさに一丸となってつかみ取った、大阪北選抜史上初の優勝だった。
大会直後に設けられた祝賀会。そこで選手・スタッフが約半年間に及ぶ活動を振り返り、さまざまな感情を共有した。
競技歴の浅い選手たちは、チームのレベルについていけるか不安だったことを思い出して涙した。
“近大のランニング”はスタッフ陣の前だけで声を出していたことが明かされ、皆で爆笑した。
何より金メダルを手に全員が、「このメンバー、このチームでよかった」と喜んだ。
ナニワの若きバレーボーラーたちが歩んだビクトリーロード。それは涙と笑いと喜びに彩られて、完結したのであった。
(取材・文/坂口功将〔編集部〕 写真/山岡邦彦)
<胴上げされるキャプテンの川内>
■大阪北選抜 スタッフ・選手
監督:梅原 祥宏
コーチ:大屋 久志
マネジャー:武林 崇司
アシスタントコーチ:片桐 秀人
アシスタントマネジャー:堂 佳則
① 川内 歩人/昇陽中3年/身長180センチ/OH
2 吉田 怜真/豊中第十四中3年/身長190センチ/OH
3 秦 健太郎/昇陽中3年/身長190センチ/MB
4 尾 幸汰/交野三中3年/身長187センチ/MB
5 内野 大地/歌島中3年/身長185センチ/OH
6 梶野龍之介/交野三中3年/身長181センチ/S
7 吉田 翔星/梶中3年/身長177センチ/OH
8 神田アレックス/緑中3年/身長180センチ/OH
9 當麻 理人/昇陽中3年/身長175センチ/S
10 川崎 颯太/摂津三中3年/身長174センチ/OH
11 椎原 大翔/此花中3年/身長165センチ/OH
12 池田 幸紀/枚方二中3年/身長160センチ/L
※丸囲いはキャプテン
※プロフィルは大会当時。ポジションは当時の所属校でのもの〔表記〕OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、S=セッター、L=リベロ
※梅原監督の「祥」は、正しくは“示ヘン”
<全国から集いし中学生たちによる“オリンピック”。また熱き戦いが見られることを願ってやまない>
******
第35回JOC杯の選手名鑑は
現在発売中の『月刊バレーボール』2022年1月号に掲載
お求めは【NBPオンラインショップ】まで→コチラ
>>><次ページ>第33回大会 大阪北選抜男子チーム ギャラリー