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春高2025

春高直前! 大会を前に今年度の男子インターハイを振り返る【月バレ2021年9月号】

  • 高校生
  • 2021.12.23

 年が明けるといよいよ今年度最後の全国大会となる第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)が始まる。新型コロナウイルスの影響で今秋も国体は中止となったため、今年度の全国大会は春高とインターハイの二つのみ。最後の大会の前に、月刊バレーボール2021年9月号のインターハイ報道号で夏の激戦を振り返ってみよう。

 

――――――

 

 

 

エース舛本劇場 土壇場から大逆転優勝

男子優勝 鎮西(熊本)

 

 

鎮西(熊本)が駿台学園(東京)とのフルセットに及ぶ熱戦で逆転勝ちし、4年ぶり4回目の優勝を飾った。優勝に大きく貢献したのは決勝で49得点をあげた2年生エースの舛本颯真。大会直前にツーセッターにするなど、エースを孤立させない策も実った。

 

攻撃の幅を広げたツーセッター

 

 この試合3度目のジュースを制すと、選手たちは一斉に拳を握った。ベンチから控え選手が飛び出し、コートに大きな固まりができる。準決勝では昨年度春高王者の東福岡(福岡)をフルセットの末に下し、決勝は駿台学園と5セットにもつれ込む死闘。マッチポイントを4度握られながら逆転優勝を飾り、畑野久雄監督は「まさか勝つとは思っていなかったです」と驚きを口にした。

 

 土壇場に追い込まれるたびに、エース#4舛本を中心に驚異的な粘りを見せた。予選グループ戦では駿台学園にストレート負け。再戦となった決勝でも連続でセットを落とし、第3セットは先にマッチポイントを握られた。それでも、舛本のバックアタックなどが決まり、セットを取り返す。第4セットは13-14から舛本が3連続バックアタックを決めるとチームは勢いづき、試合を振り出しに戻した。最終セットも12-14と先に王手をかけられたが、相手のミスや舛本の活躍で逆転勝ちした。

 

 チームの半数以上の打数となる111本のアタックで47得点をマークしたエースに対し、セッターの#3九冨鴻三キャプテンは「100点です。いつも安定しているので、チームとしても信頼しています」と絶賛した。

 

ツーセッターの#3九冨(左から2番目)はブロックでも活躍し、両チームトップの7得点をマーク

 

 今大会は九冨、#11平川天翔のツーセッターで臨んだ。畑野監督は「私が若いころにはよくやっていた」と語るが、近年は決して多くないフォーメーション。エースにマークを集めないため、熊本を出発してから決断を下したものだった。数日練習したものの、もちろん公式戦では初。舛本は「(予選で)駿台学園と試合をした経験が優勝につながった」と試合を重ねるごとに連係を強めた。決勝は九冨と平川が要所で得点を決め、ともにアタック決定率は50%を超えた。

 

 今年度初の全国大会を制し、エースの舛本は「ここから絶対にマークされますが、努力してそれでも決められるエースになりたいです」と力強く語る。九冨は「春高、国体で優勝したいです」と意気込んだ。

 

 新たなスタイルで、伝統校が今年度の主役へ名乗りを上げた。

 

リベロ優秀選手に選ばれた#12髙木大我は、粘り強いレシーブで何度もピンチを救った

 

 

 

優勝しても満足せず憧れの水町を超える存在へ

 

 

舛本颯真

ますもと・そうま/2年/身長182cm/ 最高到達点330cm/アウトサイドヒッター/龍田中(熊本)

 

「颯真、頑張れ!」

「4番! 4番!」

 

 味方からはトスを託され、相手からは徹底的にマークされる。会場の視線を一身に浴びながら、舛本は何度も助走に入った。チームの半数以上のスパイクを打ち、第3、4セットには「足がつりかけた」と話しながらも、最後までそのパフォーマンスは衰えず。前衛からは鋭くコースを打ち分け、バックアタックでも11得点。その姿は、自身が憧れる選手のようだった。

 

 中学生時から何度も動画を見ているのが、春高とインターハイで同校を優勝へ導いた水町泰杜(早稲田大2年)。「3枚ブロックがきても上から打ったり、コースの際どいところに決められるのがすごい。バックアタックもまねしています」と尊敬してやまない。中学3年生時には一緒に練習をする機会があった。「緊張しました」と笑いながらも「パワーがすごかったし、一つ一つのプレーを意識している」とあらためて刺激を受けた。同校のインターハイでの優勝は、水町が1年生だった2017年以来。「サーブレシーブが安定していなくて、どんなボールでも決めるエースにはなれていません。これから努力して、もっと近づけるようにしたいです」。その背中を追って、どこまでも高みを目指す。

 

 

 

打ち合いを制せず悔いが残る初めての夏

男子準優勝 駿台学園

 

 

佐藤遥斗

さとう・はると/2年/身長191cm/最高到達点335㎝/アウトサイドヒッター/下山中(新潟)

 

 またしても頂点まであと一つ届かなかった。2セットを先取し、何度もマッチポイントを握りながら、フルセットで逆転負け。2019年度の春高から3大会連続で準優勝となり「最後、自分が打ちきれなくて悔しい」と2年生エースの#1佐藤遥斗は悔やんだ。

 

 今大会は佐藤にとって初めてのインターハイ。やみくもに打つだけだった昨年度の春高から半年たち、「相手を見てコントロールして打てるようになった」と成長を実感する。決勝では前衛後衛関係なく攻撃し、アタックでは34得点。安定したサーブやレシーブも発揮し、攻守の要と言える活躍を見せた。

 

 今大会前に梅川大介監督が「全国で戦えるレベル」と話していたように、スパイカー陣は層が厚い。佐藤と対角を組んだ#2中島彬は、パワフルなスパイクを武器に決勝で29得点。ベンチスタートが多かった#4渡邊秀真は、交代で入るとコートを縦横無尽に駆け回り、得点を量産。3人で切磋琢磨しながら日本一に挑んだ夏だった。

 

 決勝で戦った鎮西のエース舛本は2年生。佐藤は「同じ2年生として負けられない」と強く意気込む。「責任は重いけど、打ちきれないとエースじゃない」と覚悟をにじませ、悲願の優勝に向けて再スタートを切る。

 

 

エースとして初の全国三冠への思いは届かず

男子3位 東福岡 

 

川野史童

かわの・しどう/2年/身長199cm/最高到達点339cm/オポジット、ミドルブロッカー/木花中(宮崎)

 

 願い続けた三冠への道は、準決勝で断たれた。#7川野史童にとって、ミドルブロッカーから転向し、エースとして臨んだ初めての全国大会。攻守の要である坪谷悠翔が7月中旬に右肩を痛め、万全ではない中で川野にトスが上がった。しかし、準決勝の鎮西戦では相手ブロックにワンタッチを取られる場面が目立ち、なかなか得点を奪えず。第1セットをジュースの末に落とし、第2セットに追いついたが、最後は再びジュースをものにできなかった。「(柳北)悠李さん(東亜大1年)がいたときは何もできない1年生のミドルブロッカーだったけど、今年はサイドのスパイカー。決めないといけない場面を決めきれず、悔しさしかありません」と声を振り絞った。

 

 199cmの大型サウスポーで、広角に打てるスパイクが魅力の2年生。今後も東福岡の看板を背負う存在として、初めての試練となった。残る2つの全国大会に向け「エースとして全部決められるように」と誓った。

 

 

大会ナンバーワンセッター 小柄なチームで日本一へ

男子3位 清風(大阪) 

前田凌吾

まえだ・りょうご/3年/身長178㎝/最高到達点314㎝/セッター/蹉跎中(大阪)

 

リベロを除いたスタメンの平均身長は179.3cm。小柄な選手たちが、意気揚々とスパイクを打ち込む。その力を引き出したのが、司令塔の#1前田凌吾だ。堅実なレシーブでつながれたボールから、大胆かつていねいなトス回しを展開。コート幅をいっぱいに使ってコンビバレーを組み立てた。準決勝で高さのあるエースがそろう駿台学園に逆転負けを喫したが、完成度の高い攻撃は、今大会一と言ってもいいだろう。

 

 中学時代に日の丸を背負い、将来は世界で戦うことが目標。「日本代表も世界のチームと比べたら小さい。だから今、清風で大きくて強いチームを倒すことは絶対に次のステージでも生きると思います。小さいからダメというわけではなく、小さくても日本一になれることを証明したいです」とチーム事情をプラスにとらえる。

 

 今大会は優勝を逃したが、目指す場所は変わらない。「相手に嫌だと思われるチームをもう一度つくり直します。目標は日本一です」。そのトスワークにさらに磨きをかける。

 

――――――

 

 インターハイを終えて、選手たちはそれぞれに次の目標を設定し、ここまでの時間を過ごした。夏に抱いた思いは、今年度最後の大会でどのように表現されるのだろうか。

 

 春高バレーは、2022年1月5日(水)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕。ここで紹介してきた各校はシード校として1月6日(木)に初戦を迎える。鎮西はCコート第4試合(12:40〜)、駿台学園は同第6試合(15:00〜)、東福岡はBコート第6試合(15:00〜)、清風はCコート第3試合(11:30〜)に登場する。※時間は変更となる場合あり 月バレ.comでは春高バレーリアルタイム速報配信予定

 

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