天皇杯ファイナルラウンド2回戦で、順天堂大はV1のサントリーサンバーズと対戦。1年生の花村和哉らが得点を重ねたが、ストレート負けを喫した。大学1年目の公式戦を終えた花村は、1月5日(水)に開幕する第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)に出場する東山高(京都)の後輩たちへ、エールを送った
取材/田中風太 写真/中川和泉、田中風太
かつて見たことがない高い壁に、花村和哉は真っ向から挑んだ。身長210㎝の彭世坤らがそろうサントリーのブロックに対し、最高到達点342㎝の高い打点からスパイクを打ち込む。大学生との試合ではリバウンドを取って攻撃につなげることもあるが、この日はあえてそれをせず。「(高橋和幸)キャプテンと(飯塚初義)監督から『どれだけ通用するか、思いきってやってみたらいい』と言われました。ブロックが3枚ついても、自分のいいポイントでしっかり打ちきって、どれだけ通用するのかを試したかった」。
バックアタックからも得点を重ね、1年生ながら存在感を発揮。二段トスになるとシャットアウトされる場面もあったが、それもプラスにとらえる。「トスがいい状態で上がってきたら通用すると思いましたが、(サントリーの)皆さんは自分と違って難しいボールの処理がうまかった。そういう部分を直せば、これからにつながると思います」。ストレート負けに終わったが、将来Vリーグ入りを目指す花村にとって、濃密な時間になった。
三枚ブロックにスパイクを打ち、ブロックされる花村
ブロックされ、苦笑いする花村。「ごめんなさい!」と先輩たちに謝る場面もあった
試合中は、コートの後ろで男子日本代表のフィリップ・ブラン新監督が視察。いつも以上に力が入ったのは言うまでもない。「日本代表になって、オリンピックで金メダルを取るという夢を小学生のときからずっと持っていて。その監督がいて気持ちも上がったし、ここで頑張ればワンチャン…と思いながらやっていたので(笑) すごく楽しかったです。多少はアピールできたと思います」と満面の笑みを見せた。
得点を決めると、笑顔が弾けた
およそ1年前、東山高3年生だった花村に笑顔はなかった。前年度優勝校として臨んだ春高で、3回戦の試合直前に発熱者が確認され、無念の棄権。連覇に挑戦する権利すらなく、涙を流して会場を後にした。つらい思いを味わったからこそ、同じ感情を共有した後輩のことはずっと気にかけてきた。3大会連続で出場権を得た春高予選決勝も画面越しで応援した。
「インターハイ予選では洛南高に負けて。とてもつらかったと思いますが、監督さんとコーチがすごく一生懸命指導してくれて、全体的にレベルが高くなっていました。両サイドは1年生ですが、すごく活躍している。ミドルブロッカーも自分がいたときはまだまだでしたが、練習してクイックもブロード(攻撃)も打てるようになっていたので。それを見た時は感動しました。
後輩たちは『絶対に春高で優勝する』と自分たちに言ってくれました。その思いがあって、春高予選は優勝できたと思うので、その気持ちを忘れずに、自分たちの代の春高の悔しさを取り返して優勝してほしいです」
昨年度の春高1回戦(対東海大付相模[神奈川])で豪快にスパイクを打つ花村。この試合が、同大会で最初で最後のプレーとなった
注目が集まる後輩たちに負けじと、大学生になって初めての全国大会となったインカレで準優勝。「ほんとうは(大学で)4連覇したかったので」と満足はしないが、目指すべき選手像はより明確になった。「岡本(捷吾/4年)さんがベストスコアラーを獲っていたので、自分もたくさん得点して、チームに貢献できる選手になりたいです。3連覇を狙います」。
東山を初の日本一に導き、日本代表で活躍した髙橋藍(日本体大2年)だけでなく、花村ら現大学1年生も後輩たちから憧れを抱かれる存在である。これからも先輩として、母校の後輩たちに刺激を与え続ける。