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春高2025

相原昇監督(東九州龍谷高)帰ってきた名将 指導者としてのアップデート

  • 高校生
  • 2022.01.02

第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)が2022年1月5日(水)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する。女子では、10月下旬、前回大会3位の東九州龍谷高(大分)に、2018年度までの14年間で12度の日本一に導いた相原昇氏が復帰した。U20、U23女子日本代表の監督や東京2020オリンピックの女子日本代表コーチを経て、再び高校のカテゴリーへ。世界と戦って感じる、指導者としての自身の変化とは(取材日:2021年11月24日)

取材/田中風太 撮影/中川和泉

 

 

――監督への復帰はどのように決まりましたか?

相原 東京(2020)オリンピックが終わって、梅高(賢正)理事長から「東龍(東九州龍谷高)に戻ってきてほしい」というお話をいただきました。教頭というポストを用意してくれて、僕の後に監督を務めていた竹内(誠二)先生もコーチとして以前の体制に戻るということ、そして日本代表のスタッフも一新されたということで、東龍でもう一回お世話になりたいという思いでした。竹内先生も頑張ってくれて(19年度の春高で)日本一にもなっているし、(今夏のインターハイでは2回戦敗退という)現状の成績は関係なく、ですね。

 今は夫婦で選手寮に住んでいます。僕の妻が軸で、竹内先生の奥様とともに選手の食事の世話をしています。竹内先生もお子さんがいて、プライベートのこともあるので、いいタイミングだったかなと思います。

 

――高校生の指導は2018年度以来となります。アンダーエイジカテゴリーの監督や日本代表のコーチを経験して、指導面での変化はありますか?

相原 教え方は変わっていません。人間教育の部分や、監督として勝利に導く力は自信がありますから。ただ、アンダーエイジカテゴリーではアジア一(第20回アジア女子選手権/19年)、世界一(第20回世界ジュニア選手権/19年)になって、以前よりも余裕を持って選手たちに接しています。東龍では春高で5連覇、皇后杯でベスト4に入ったり、14年間で12回全国優勝したときは、とにかく「日本一、日本一」と選手たちに求めていました。でも、今は53歳になって、指導者として余裕が出てきていると思います。

 U20では監督として、東京オリンピックのときはコーチとして、コーチングの面で非常に成長させてもらいました。具体的には、情報共有や選手への落とし込みのていねいさ、わかりやすさですね。日本代表はいろんなチームから選手が集まって、それぞれのやり方があるので、わかりやすく伝えないといけません。昔から選手を褒めて鼓舞して、試合で乗せるのが僕のスタンスですが、東京オリンピックを経験して、純粋に褒められるようになっていると感じますね。強引に導くのではなくて、選手たちがノリノリになるように、ていねいに導けていると思います。

 

――選手への接し方は具体的にどう変化していますか?

相原 褒めるのもそうですが、選手たちに判断を任せきれるようになっていますね。高校生ではありますが、選手を大人扱いできる。今、東龍に来て3週間くらいですが、春高予選からチームはぐんと成長しています。優勝できるかは別として、おもしろいチームになりそうだな、と思います。

 

――3年生は1年生時に日本一に輝きました。その選手たちのポテンシャルはどのように感じていますか?

相原 能力は悪くないと思います。ただ、優勝は少し遠ざかっていて、徐々に結果は下がってきています。大分商との春高予選決勝もギリギリ勝っているので。どうなるかはわからない部分もありますが、間違いなくよくなりそうだと思っています。

 

――「よくなりそう」というのはどのあたりで感じていますか?

相原 竹内先生が、僕から伝授した基本のプレーをチームに教えてきたのが10点満点の7点くらいだとしたら、そこから10点までの伸ばし方については教えられると思っています。僕が掲げる高速バレーは、トランジションでの攻撃の速さが持ち味で、その部分に関してはいい時代の東龍に戻ってきている気がします。

 以前は日本一を目指す集団というチームの雰囲気が少し薄れていましたが、その意識もぐんと上がってきています。「バレーボールが学校の顔で、日本一を常に目指すのが東龍なんだ」という話が理事長からもありましたが、それが僕に戻ってきてくれといういちばんの理由だったと思います。

 

――世界と戦う選手を指導されてきましたが、高校生の年代に必要なことは何でしょうか

相原 個人の能力で戦える選手にならないと、トップにはいけません。世界中がデータバレーになり、東京オリンピックでも大会中に相手の情報がどんどん入ってきました。データ的、フォーメーション的に相手の急所を押さえることは大事です。しかし、メンタルの強さや、プレーの正確性であったり、自分の実力で戦えることが高校生の段階からいちばん重要だと思います。大人になって、相手の身長2mがあるから、といっても急には対応できません。石川(真佑/東レ)、平山(詩嫣/久光)、曽我(啓菜/NEC)、中川つかさ(東海大3年)といった、しっかりした選手がそろっていたから(U20では)世界一になれました。数字や情報で戦うというより、精神的、技術的にしっかり者になるのが高校生の段階で重要だと思います。

 その点でも自分は変わったと思います。監督主導で日本一を目指すというよりも、選手をそこまで引き上げることが勝利につながる、という考え方になりました。チームを舵取りしたり、技術を教えるのは監督ですが、最終的に勝ちとっていくのは選手。それはこの2年半でつくづく学びました。選手が指示を仰いでいたら一手遅れてしまいます。

 そういうことを考えると、若い段階から指導者がそういう点を重視しないと、世界一小さい選手たちが世界で勝っていくことは難しい。ましてや、これからの国際試合はアウェーでの戦いが多くなっていくと思います。その中でも勝つために、体や心の強さは絶対に必要です。東龍でいうと、飯山エミリにはそういうところにいってほしいと思いながら指導しています。

 

――監督復帰からおよそ2ヵ月で春高を迎えます。どんな大会にしたいですか?

相原 中学3年生のときに誘った選手が高校3年生になって、春高が最後の大会です。ただ、僕は彼女たちが入学するころにはチームを離れていて、正直引け目も感じていたので、3年生に満足のいく戦いをプレゼントしてあげたいです。竹内先生も頑張ってくれて、彼女たちが1年生のときに日本一になりましたが、最後の春高はとても大事。選手にも保護者にも完全燃焼できるようにしてあげたいですね。

 

――そのためにも、今回も選手たちを鼓舞されるわけですね

相原 僕はカッコつけないですよ(笑) U20でも日本代表でもそうでしたが、テレビカメラがあっても、メディアがいても、選手たちの力をいちばん引き出すことしか考えない。予選をギリギリ勝ってくれて、竹内先生にも選手にも、そしてまた監督に誘ってくれた理事長にも感謝しかありません。

 ただ、結果が優勝であれば最高ですが、インターハイでは初戦(2回戦)で(16-25,16-25で金蘭会に)やられたのも事実。大きい目標を考えるのではなく、一歩一歩勝ち上がるようなチームを作っていきたいですね。

 

 

 

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