岩美高 秋重葉沙が中高一貫校を出た理由と鳥取で胸に留める学びの数々
- コラム
- 2023.01.04
春の高校バレー 第75回全日本高等学校選手権大会(春高)で、2年ぶり4回目の出場を果たす女子の岩美高(鳥取)。3年生の秋重葉沙は金蘭会中(大阪)出身で、中学時代は日本一を経験している。そのまま中高一貫校の金蘭会高に進学する選択もありながら、なぜ彼女は鳥取の地へと渡ったのか。決断の理由と最後の春高への思いに迫る
<秋重葉沙(あきしげ・はずな/身長163㎝/最高到達点284㎝/金蘭会中〔大阪〕→岩美高〔鳥取〕/3年/アウトサイドヒッター)>
全国屈指の強豪・金蘭会中高で姉妹そろってプレー
高校生活最後の春高が迫る。年が明けた1月4日が開幕日だ。秋重葉沙は自分の部活ノートに力強く記す。
「絶対譲らん!! 春高まで□日!!」
所属する岩美高自体に部活ノートの文化や決まりはない。けれども彼女は高校に入学してから、ノートをつけてきた。そのわけを「自分を振り返ることで、課題や今の自分に必要なことがわかるので。書くのは、その日の練習で先生に言われたことや、気づいたことに対して、『もっと練習でこうしよう』とか。それに、モチベーションを上げるためにも書いています」と語る。
ノートをつけること自体は、中学3年間欠かさなかった。こちらはチームの取り組みの一つだった。
金蘭会中で得た学びを高校でも生かしている、そのことが十分に伺えた。だからこそ、さらに気になった。なぜ、彼女は姉と同じ金蘭会高を選ばなかったのだろうか。
<姉の秋重若菜は金蘭会高を卒業後、早稲田大に進学している(写真は2022年の全日本インカレ)>
中学の恩師からはっきりと突きつけられた現実
2019年、夏。その年の第49回全日本中学校選手権大会(全中)で金蘭会中は4度目の日本一に輝いた。そうして全国大会を終えると、次は部員たちの進路を決定するタイミングとなる。一貫校である金蘭会高への「内部進学」か、違う高校への「外部進学」か。その二択が記された用紙が部員に渡される。
当時、秋重は中学3年生。なお、2つ上の姉・若菜(現・早稲田大2年)は中高と金蘭会のバレーボール部で主力を担い、実際に全国大会出場や日本一も経験していた。自身もリリーフサーバーが主だったとはいえ、チームの一員として優勝をじかに味わった。ゆえに、秋重は「内部進学」と決めていた。
「日本一を経験させてもらって、やっぱり高校でももう一度、あの感動を味わいたいし、レベルの高いところで学ばせてもらいたい」
いちばん最初に設けられた、中学の佐藤芳子監督との面談で、そのように理由を伝えた。だが、指導を仰いだ恩師から返ってきた言葉は重く、つらいものだった。
「厳しいことを言うけれど、高校は中学と違って、他校からの選手も入ってくる。技術面で競い合うことになるし、世界が違ってくる。今のままでは厳しいと思う」
それまで監督から、これほどまでに厳しい言葉をかけられたことはなかった。加えて、自分の実力をはっきりと痛感させられたことで、涙があふれ出た。
<2019年の和歌山全中を制した金蘭会中。その後、日本一の回数を6にまで伸ばしている>
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