岩美高 秋重葉沙が中高一貫校を出た理由と鳥取で胸に留める学びの数々
- コラム
- 2023.01.04
<第73回春高(2020年度)ではレギュラーの一員としてプレー(コート奥②が秋重)>
モチベーションが上がらない時期も
いざ岩美高では1年目に春高出場を果たし、自身もその舞台に立った。だが結果は一回戦敗退。「緊張もしましたし、気づいたら負けてしまっていました。何もできずに終わったという印象です」と秋重は振り返る。
その春高を終えた直後は、モチベーションが一気に下がったという。
「春高に行くためにここに来たのに、春高が終わって何をしてるんやろう、正直、何で練習しているんやろう、とぼんやりしていました。毎日モチベーションがわかなくて、練習でも心と体がさぼっているような感覚でした」
秋重自身は目標を定めれば、強い意志で向かうことができる性分だ。高校の進学先を決断したときも、彼女の芯の強さそのものが指導者たちにも伝わったのだろう。けれども、気持ちが落ちた時期があったとは。
<初めての春高は一回戦敗退に終わった>
感謝を欠かさぬように。今、秋重が抱く思い
そんな状況を、中学時代の学びが打開した。「このままではあかん」と、中学時代の部活ノートを手に取ると、気持ちが奮い立った。
また、中学3年間では佐藤監督から口酸っぱく、「周りに支えてもらっていることを絶対に忘れないように」と言われてきており、その言葉が身に染みた。
寮生活では、地域の住民がいつも優しく接してくれて、「頑張れー!!」と声をかけられる。毎日の入浴は近くの温泉が利用でき、試合後には「おめでとう」と迎えてくれる。そんな温かみが、背中を押すのだ。
「いつも応援してくださる地域の方々のおかげで、寮生活が成り立っていると感じます。笑顔で接してくださるぶん、自分からあいさつをして、私も明るくなろうと心がけていました」
そんな環境の中で過ごしてきた高校3年間を経て、今、秋重は「あのときの決断を後悔していません」と胸を張る。岩美高での学びも、彼女にしっかりと刻まれている。
「一人の人間として、成長できました。自主的に行動することや主体性といった社会に出たときに役立つことを身につけられていると感じます。それに、自分で課題を見つけて、行動に起こすことも大事だと学びました。それまでは自主性がなかったので、今ではどんなことにも毎日、目標を持って取り組めるようになっています」
高校生活最後の春高に向けて、思いは募るばかりだ。
「春高では活躍している姿を見せたいですし、金蘭会高には中学で一緒にやってきた前川唯奈や德本歩未香たちがいるので、『私も高校で3年間頑張ったよ』って表現したいです」
そして、中学時代の恩師にも。
「あのとき、佐藤先生には厳しいことを言ってもらい、ほんとうに悲しかったけれど、今は自分のために言ってくれたと思えるんです。最後の春高では佐藤先生に感謝の気持ちを伝えたいです」
プレーで恩返しがしたい。だからこそ、絶対に譲れない思いが、そこにはある。
<1年生以来(②が秋重)のオレンジコートへ。成長した姿を披露すべく、高校生活の集大成に挑む>
(文/坂口功将〔編集部〕)
▼この一冊で、春高が存分に楽しめる!!▼
『月刊バレーボール』2023年1月号は好評発売中
お買い求めは【NBPオンラインショップ】で → コチラ