プロバレーボールプレーヤーの石川祐希が昨季から在籍する、イタリア・セリエAのミラノ。レギュラーシーズンでは年明けからは4連勝、コッパ・イタリア(カップ戦)ではクラブ史上初の準決勝進出を果たすなど、世界最高峰と称されるリーグの中でも上昇気流に乗るチームの一つだ。
そのミラノは昨季からセッターやミドルブロッカー、それに石川選手の対角まで、メンバーを大きく変更している。と同時に、大きな変化があった。それがユニフォームのサプライヤーの変更である。
<石川が昨季に続いてプレーするミラノ(©Lega Pallavolo Serie A)>
イタリア発祥のエレア社が手掛ける
昨季まではアディダス社がユニフォームを提供していたが、今季はエレア社にチェンジ。エレア社といえば、イタリア発祥のスポーツメーカーで、バレーボール界では現在、セリエAの強豪トレンティーノや男子イタリア代表を手掛けている。今年1月下旬には、代表の未来を担う若きスター選手、アレッサンドロ・ミケレットと、いわゆるアンバサダー契約を締結した。
そのエレア社が作成するユニフォームの特徴は、カルチャーをデザインに落とし込む点にある。今季のミラノも顕著に、それらがディテールに表れている。
主にホームで着用する白色、アウェーで着用する青色、それぞれがベースのユニフォームが用意されているが、そこでまず目を引くのがスネークスキン(蛇柄)。蛇はミラノに縁ある生き物で、町を代表する名家であったヴィスコンティ家の紋章に描かれていた。
さらに、そでの先や後ろの首元には“赤十字”が施されており、これはミラノの市章と同じ。いわゆる「セント・ジョージ・クロス」だ。
<パンツにも赤十字が施されている(©Lega Pallavolo Serie A)>
ミラノといえば“蛇と赤十字”
“蛇と赤十字”といえば、お気づきの方もいるだろう。イタリアを代表する自動車メーカー、アルファロメロのブランドロゴはまさにこの2つの要素で構成されており、メーカー発祥の地はミラノだ。
スポーツ界でも、これらを模したユニフォームを着用しているチームが存在する。それが、サッカーのセリエAでミラノに拠点を置き、人気を二分するクラブ、ACミランとインテルナツィオナーレ・ミラノ(通称、インテル)である。
ACミランは“ロッソネロ(赤と黒)”のストライプが伝統で、ユニフォームに施すチームエンブレムには時折、“白地に赤十字”が登場する。サッカー日本代表の本田圭祐選手が所属し、プレーした2014/15シーズンにも、このエンブレムが使用されていた。
一方で、ライバルチームであるインテルは“ネッラズーロ(黒と青)”のストライプが伝統で、これまでに蛇をモチーフにしたデザインを輩出している。実は、いま現在行われている2021/22シーズンではピクセル状のスネークスキンが全面に施されたユニフォームが採用された。このホームキットは、バレーボールのミラノの青色版とよく似た印象を抱くこと間違いなしだ。
<青色版は全面に施されたスネークスキンがはっきり(Photo:legavolley.it)>
文化や伝統、歴史を落とし込む
ACミランとインテルはホームスタジアム「スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ」(サン・シーロ)を共有しており、その隣に(バレーボールの)ミラノはホームアリーナ「アリアンツ・クラウド」を構えている。
競技は異なるが、今季のミラノのユニフォームにACミランとインテル双方で用いられている意匠が“ミックス”されている点がおもしろい。まさにエレア社がミラノという町を、ユニフォーム上のデザインで表現したのである。
なお、昨年12月5日のレギュラーシーズン第10節パドヴァ戦で、ミラノは“スカラ座”ユニフォームを一試合限りで着用している。これもまた、ミラノを代表するオペラ劇場「スカラ座」の公演シーズン開幕を祝してのもので、歴史を感じさせるレトロ調の書体やデザインが施されていた。
ホームタウンの文化や伝統、歴史が刻まれたユニフォームを着て、選手たちがプレーする。その姿を見たファンたちは、“おらが町”を覚えずにはいられないだろう。
エレア社が手掛けたユニフォーム、お見事だ。
(文/坂口功将〔編集部〕)
<一夜限りの“スカラ座”ユニフォーム(Photo:legavolley.it)>
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