身長178㎝と小柄ながら、日本代表でも活躍した浅野博亮さん(元・日本代表、ジェイテクトSTINGS)と、その浅野さんに憧れる前嶋悠仁(日本航空高/山梨)の対談が実現。エースとして、キャプテンとして春高でチームを初優勝に導いた前嶋は、浅野さんに聞きたかった質問をぶつけた
試合の“流れ”を引き寄せるために
————お互いへの質問はありますか?
前嶋:じゃあ、自分からいいですか? 浅野さんのことをプレーはもちろん、キャプテンとしての得点後の喜び方もマネしていました。自分からチームを盛り上げようと意識していたのでしょうか?
浅野:そうですね。小さいころから、練習ではいくら機嫌が悪くても、けんかをしてもいいけど、最終的にみんなで協力しないと試合では絶対に勝てないと思っていました。バレーボールはチームがまとまらないと勝てないスポーツで、いかに自分たちに流れを持ってこられるかが大切だと思っています。前嶋選手は春高であの決勝(鎮西高〔熊本〕に0-2と追い詰められながら逆転勝ち)をしているので、よくわかると思います(笑)
「自分の喜び方で味方の心に火をつける」と言ったらちょっと言い回しがクサいですが(笑) そのためには、もちろんプレーで引っ張ることもそうですし、「浅野がこれだけやっているんだから、俺もやらなきゃ」と思ってもらうために、意識していたこともありました。
でも、Vリーグに入ってからの私は、プレーでガンガン引っ張れる選手ではありません。その中で、チームにとってマイナスな表現をしないようにしたことはもちろん、常にチームの心が折れないように笑顔でプレーしたり、コートの中で冗談を言うようなコミュニケーションを心がけていました。例えば「ナイススパイクじゃん!」とか、後輩だと「次に決めたらジュースをおごってやるよ!」という風に言っていましたね。
あとは、バレーボールを5歳から始めてから、単純に死ぬほど負けず嫌いで、プレーをするのが楽しいということもあったと思います。
前嶋:浅野さんはやっぱり工夫されていて、考えながらプレーしているところも吸収していきたいと思います。これから自分のプレーがどれだけ伸びるかわかりませんが、行動や言葉、盛り上げ方ももっと磨いていきたいです。
————前嶋選手は春高でかなりチームを盛り上げていた印象があります
前嶋:そうですか?(笑)
浅野:ほんとうに笑顔、笑顔でしたね。チームが苦しいときに、1人だけ勝っているゲームをしているような雰囲気がすごかったです。
前嶋:ありがとうございます(笑) ご本人に直接言うのも何ですが、それも浅野さんを見てまねしたことなので。
浅野:いやいやいや(笑) でも、そう言ってもらえることはうれしいですね。
————浅野さんから質問はありますか?
浅野:前嶋選手のインタビュー(https://www.getsuvolley.com/220218_nikku_maeshima)を読ませていただきました。レシーブが好きで、大学ではリベロをしたり、リベロとしても生きていきたいという話もありましたが、大学からVリーグ、日本代表までどういうビジョンを持っていますか?
前嶋:あまり明確なものはありませんが、それこそ浅野さんのような選手になれたらと思っています。
浅野:自分は日本代表になれると思っていなくて、大きなビジョンを持たないでここまできました。VリーガーになるまではVリーグのことを知らず、Vリーグのデビュー戦が、初めてVリーグを見た日でした。
石川(祐希〔ミラノ/イタリア〕)選手のように、将来オリンピック選手になろうという大きな目標を掲げることも一つだと思います。だけど今、いろんな講習会にも参加させていただいて、大きな目標がなくても、前嶋選手でいうと春高での優勝だったり、大学でレギュラーを取るとか、目の前のことをクリアしていくことも重要で、間違いではないと思います。
月刊バレーボール4月号(3月15日発売)では、「小さな巨人新時代」と題し、小柄な体で活躍する選手たちの対談をとおして、高く跳ぶための秘けつと逆境をはねのける術を探る。それぞれのテクニックを話し合ったあと、浅野さんは前嶋にある思いを託した
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浅野博亮(元ジェイテクトSTINGS)
あさの・ひろあき/1990年10月6日生まれ
身長178㎝/最高到達点330㎝/アウトサイドヒッター/三郷中(長野)→長野日大高(長野)→愛知大
2015年に日本代表に初選出されると、高い守備力を評価され、17年にはリベロとしてもプレー。昨シーズン限りで現役引退
現在は社業に専念しながら「VRAVO N+」で小、中学生の指導にあたる
前嶋悠仁(日本航空高)
まえしま・ゆうと/3年
身長180㎝/最高到達点330㎝/袋井中(静岡)
袋井中3年生時には全日本中学生選抜としてプレー。攻守で抜群の安定感を誇り、今回の春高では最優秀選手賞に選ばれる活躍を見せた
春高ではコース幅の広いスパイクで得点を量産
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