◆ワタシのS6+1(プラスワン)/備 一真[大分三好ヴァイセアドラー]◆
今季のV.LEAGUE DIVISION1 MEN(V1男子)におけるサーブレシーブ成功率の個人ランキングを見ると、山本智大(堺ブレイザーズ)や小川智大(ウルフドッグス名古屋)、本間隆太(ジェイテクトSTINGS)ら日本代表にも選出されたリベロたちの名前が並ぶが、その中で堂々と輝く新星がいる。大分三好ヴァイセアドラーのリベロ、備一真だ。
<備 一真(そなえ・かずま)/1998年1月6日生まれ/身長167㎝/最高到達点284㎝/鹿児島商高(鹿児島)→大同大→大同特殊鋼レッドスター→大分三好ヴァイセアドラー/リベロ>
不完全燃焼だった高校時代を経て
自身にとってVリーグは2シーズン目。昨季はV2男子の大同特殊鋼レッドスターでプレーし、ルーキーながらサーブレシーブ成功率81.0%をマークし、サーブレシーブ賞を受賞。そうして大分三好に移籍すると、そのパフォーマンスをトップリーグでも存分に発揮している。
興味深いのは、高校時代の彼は出場機会がほぼ皆無だったこと。地元・鹿児島県の強豪である鹿児島商高で過ごしたが、「最後の春高で、リリーフサーバーで出たくらい」(備)だという。飛躍のきっかけをつかんだのは、高校を卒業し、東海大学リーグの大同大へ進学してからだ。
場合によっては、出番がなかった高校生活で競技から身を引くこともありえた。それでも、「自分に声をかけてくれた大学で4年間頑張って、見返してやりたい」という思いで進学を決意する。そんな備に、大同大を率いる山田雄太監督はサポートを惜しまなかった。
「自分が入学したときから山田先生は、『技術に関して、それほど教えることはできない。けれども“うまくなりたい”“4年間で見返したい”という思いを持ったお前に練習場所を提供することはできる』と言ってくださっていたんです」(備)
ほかの部活の練習がキャンセルとなり急遽、体育館が使用できるとなれば、たとえバレーボール部がオフであろうと備に連絡が入った。そうして自主練習に励むことができたのである。
<東海大学リーグきってのリベロへと成長した大同大時代>
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<精度の高いサーブレシーブで今季はV1上位の成績を残している>
サーブレシーブの名手、青山繁さんのアドバイス
山田監督のサポートは練習環境の提供だけでなく、「いろんな人の声を聞くことが大事」というねらいから、備には多くの指導者の話を聞く機会が設けられた。その中の一人に、元・男子日本代表で、現在は中京大を指導する青山繁さんがいた。現役時代はサーブレシーブで鳴らした名選手からのアドバイスは、備に大きなヒントをもたらした。
「青山さんが『おれは現役時代、相手サーバーの目を見るようにしていた。逆に、自分がサーブを打つときは、コートと向き合っても、相手チームを見ないようにしていた』と仰っているのを聞いて、自分の中でも試せるのではないかと思って、取り入れてみたんです」(備)
相手の視線を見ることはVリーガーになった今も意識している。すると、何人かの相手サーバーとは、ボールを打たれる瞬間までずっと視線が合うケースもあるという。また、相手チームが巧みにブロッカーたちを配し、サーバーの動きをこちらに読ませないようにすることも。そうした駆け引きを制しながら、味方の攻撃の起点となるべく、ていねいにサーブレシーブを返すのだ。
<目指すは、コート上で存在感を放つ選手。大分三好の守護神として躍動する(写真右から2番目)>
どんな環境でも、まずは自分自身を磨くことから
バレーボールが好きで、ひたすらにうまくなりたかった。そんな彼だったからこそ、貪欲になれたし、周りも手を差し伸べた。大学時代を振り返り、備はこう語る。
「初めは、関東1部の大学に行けば、力がつくと思っていたのも事実です。ですが、自分が上達しなかったり、チームが勝てないことを環境のせいにするのは違うな、と感じました。それを実感したのが、大学2年目に東海大学秋季リーグで優勝できたとき。練習の場所は提供されていたわけですから」
高校時代に腐ることがなかったのも、レベルの高い先輩や仲間たちが刺激となっていたからだ。大学卒業後にV2男子で成績を残せたのも、「1年目で結果を出すんだ」という野心があったからだ。
今、自分がいる環境で最善の力を出し、己を磨く。それが、備一真の生きざまだ。
(文/坂口功将〔編集部〕)
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◆備選手のキャリアを振り返る「ワタシのS6」は
『月刊バレーボール』4月号に掲載
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