【プレイバック!】第3セットは43-41 歴史的な激戦を制したパナソニックが優勝 最高殊勲選手賞は福澤達哉【2011/12シーズンVリーグファイナル】
- SV女子
- 2022.04.07
王座奪回! 激戦を制し天皇杯に続く2冠目達成
男子優勝 パナソニックパンサーズ(2年ぶり3回目)
真の勝者にふさわしい戦いだった。コンディション調整やプレッシャーの壁、そのすべてをはね返して栄冠をつかんだ男たち。代表メンバーも多いパナソニックは、勝利を味わったあと、すでにその先の舞台を見据えている。
凝縮されたチーム力でシーズン突破、最終戦へ
今季を迎えるにあたり、パナソニックパンサーズが掲げた目標は他でもない。
世界照準を目指す――。
チームとしての戦い方はもちろん、役割を全うすべく、個々の力もつける。全日本に招集されるメンバーは国際大会という舞台で結果を残すことが求められるように、残ったメンバーたちにも常に高い目標が課せられた。
4季ぶりのキャプテンに就任した川村がこう言う。
「夏場のトレーニング、練習。すべてが今まで以上でした。だからこそ、自分が一番頑張らなきゃいけないし、その姿を若い選手に見せなきゃいけない。しんどいのはしんどいですよ。でも、それ以上に強く責任を感じていました」
自ら率先して先頭に立つ主将の背中に、若手選手も牽引(けんいん)される。代表で多くの選手が抜け、密度の濃い練習がおのずとチーム力を高める原動力となっていった。
代表組もしかり。昨秋のワールドカップでは、これまでの国際大会とはまったく異なるプレッシャー、そしてある時は中傷の中にさらされた。なかなか結果が出ない責任の矛先が曖昧(あいまい)であったため、無責任に見る者は戦う選手たちに責任があるかのように無言の圧力を加える。その中心で「エース」の看板を背負う清水、福澤が背負うプレッシャーの大きさは計り知れないものがあった。
そのまま休むことなく突入したV・プレミアリーグシーズン。開幕直前の天皇杯では優勝を遂げ、「1つのきっかけをつかむことができた」と清水は言ったが、コンディションは決して万全ではない。昨年の手術後、満身創痍(そうい)で戦ってきた宇佐美も同様であり、南部監督も「宇佐美、清水に関してはコンディションを復調させ、維持することが精一杯の状況でもあった」と言うように、さらに先を見据えた強化まで着手する余裕がないのが現状だった。
それでもシーズンは続く。ましてや3レグ制の今季は、前半戦から例年以上に負けられない試合が続き、代表組が顔をそろえるパナソニックには「勝って当然」のプレッシャーも付きまとう。宇佐美の状態が芳しくない時には大竹が司令塔を務め、チアーゴが戦線を離脱した際には川村が代役にとどまらぬ活躍を見せ、1つ1つ勝ち星を重ね、後半戦を迎えた。
群雄割拠の男子プレミア勢ではあるが、ファイナルで戦うであろう相手として、南部監督が常に意識してきたのが前半からリーグを独走する東レの存在だ。シーズン当初から高い完成度を誇る東レに対し、どう攻め、どう戦い、どう勝つか。地道なミーティングやポイントを絞った練習を重ね、その成果が示されたのがレギュラーラウンドの最後、3レグでの戦いであり、セミファイナルで収めたストレート勝ちだった。
万全を期して、臨んだ東レとの決勝戦。1、2セットは宇佐美が好調の福澤にボールを集め、ブロックのマークが福澤に偏りがちになったところで、うまくミドルの白澤を使う。「攻撃力のサイドに、ミドルをうまく絡められれば勝機はある」と宇佐美が事前に描いていたとおりの展開へと持ち込み、さらには秋山監督が「宇佐美選手のサーブが予想以上によかった。対策してローテーションを変えたが、うまく対応できなかった」と賛嘆したサーブで試合の流れを引き寄せる。
しかし、1、2セットを取ったところから東レが粘りを発揮し、第3セットは41-43と大激闘の末に落とし、第4セットも失ったパナソニックは2-0から2-2、東レの勢いに押される形でフルセットを迎える。
意地と意地、力と力がぶつかり合う決勝戦を制するのはどちらか。
枩田のブロック、福澤のサービスエースで13-6と突き放しても、そこから追い上げ東レが10-13と迫る。まさに激闘と呼ぶにふさわしい名勝負に決着をつけたのはチアーゴ。レフトからスパイクを決め、2時間31分に及んだ熱戦を制した。
疲労をにじませながらも、最後に宇佐美は喜びを噛みしめた。
「お互いの力が拮抗(きっこう)しているからこそ、こういう試合をすることができた。両チームだけでなく、すべてのチームの力を結集してオリンピックを目指したい」
歴史に残る名勝負を経て、再び、決戦の舞台は世界へと続いていく――。