2021-22 V.LEAGUE DIVISION1 MEN V・レギュラーラウンドが終了し、昨年10月に始まった長い戦いのゴールが近づいている。V・ファイナルステージはいよいよ4月9日(土)から始まる。
その前に、過去のVリーグファイナルを月バレ誌面で振り返ってみよう。今回は月バレ2012年5月号からパナソニックパンサーズと東レアローズが対戦した2011/12V・プレミアリーグファイナルを振り返る。
2011/12シーズン、3レグ制の短いシーズンでスタートダッシュに成功し、レギュラーラウンドを19勝2敗の1位で通過したのは東レ。このシーズンでブロック賞を獲得した富松やレシーブ賞に輝いた米山、ベスト6に選出されたボヨビッチ、現監督の篠田、同じく女子東レアローズを率いる越谷らベテランで構成されたチームは高い安定感を発揮した。
対するパナソニックはレギュラーラウンド17勝4敗の2位。清水、福澤、宇佐美、永野をはじめ日本代表メンバーが多いチームにとってシーズンを通じてコンディションを維持する難しさはあったが、尻上がりに調子を上げ、総力戦で戦い抜きファイナルに到達した。
ファイナル史上に残る激闘と評された両チームの対決を見ていこう。(編注:文中の所属・チーム名は当時のまま)
月刊バレーボール2012年5月号掲載
2012.3.25 男子決勝戦
パナソニックが2年ぶりの頂点!
東レの追撃を許さず
パナソニックパンサーズ 3-2 東レアローズ
(25-22, 26-24, 41-43, 20-25, 15-11)
かつてこれほどの激闘を演じた決勝戦はあっただろうか――。
レギュラーラウンドを序盤から突っ走った東レと、終盤に向けてチームのコンディション、モチベーションを高め、東レの独走に3レグ、セミファイナルでストップをかけたパナソニック。
シーズンを通して好調を保った福澤が高く舞い、エースの清水、チアーゴ頼みになるのではなく、宇佐美がセンター線をうまく絡めて1、2セットをパナソニックが制する。しかし対する東レも終わらない。43-41で第3セットを激闘の末に粘り勝ちすると、富松、篠田が気迫を前面に打ち出したブロックでパナソニックの攻撃を封じ、フルセットへと持ち込む。
まさに、日本の頂点を争うにふさわしい、拮抗(きっこう)した力と力がぶつかり合う最高峰の戦い。
パナソニックパンサーズ対東レアローズ、両雄の対決は、まさに歴史に刻むべく名勝負となった。
王座奪回! 激戦を制し天皇杯に続く2冠目達成
男子優勝 パナソニックパンサーズ(2年ぶり3回目)
真の勝者にふさわしい戦いだった。コンディション調整やプレッシャーの壁、そのすべてをはね返して栄冠をつかんだ男たち。代表メンバーも多いパナソニックは、勝利を味わったあと、すでにその先の舞台を見据えている。
凝縮されたチーム力でシーズン突破、最終戦へ
今季を迎えるにあたり、パナソニックパンサーズが掲げた目標は他でもない。
世界照準を目指す――。
チームとしての戦い方はもちろん、役割を全うすべく、個々の力もつける。全日本に招集されるメンバーは国際大会という舞台で結果を残すことが求められるように、残ったメンバーたちにも常に高い目標が課せられた。
4季ぶりのキャプテンに就任した川村がこう言う。
「夏場のトレーニング、練習。すべてが今まで以上でした。だからこそ、自分が一番頑張らなきゃいけないし、その姿を若い選手に見せなきゃいけない。しんどいのはしんどいですよ。でも、それ以上に強く責任を感じていました」
自ら率先して先頭に立つ主将の背中に、若手選手も牽引(けんいん)される。代表で多くの選手が抜け、密度の濃い練習がおのずとチーム力を高める原動力となっていった。
代表組もしかり。昨秋のワールドカップでは、これまでの国際大会とはまったく異なるプレッシャー、そしてある時は中傷の中にさらされた。なかなか結果が出ない責任の矛先が曖昧(あいまい)であったため、無責任に見る者は戦う選手たちに責任があるかのように無言の圧力を加える。その中心で「エース」の看板を背負う清水、福澤が背負うプレッシャーの大きさは計り知れないものがあった。
そのまま休むことなく突入したV・プレミアリーグシーズン。開幕直前の天皇杯では優勝を遂げ、「1つのきっかけをつかむことができた」と清水は言ったが、コンディションは決して万全ではない。昨年の手術後、満身創痍(そうい)で戦ってきた宇佐美も同様であり、南部監督も「宇佐美、清水に関してはコンディションを復調させ、維持することが精一杯の状況でもあった」と言うように、さらに先を見据えた強化まで着手する余裕がないのが現状だった。
それでもシーズンは続く。ましてや3レグ制の今季は、前半戦から例年以上に負けられない試合が続き、代表組が顔をそろえるパナソニックには「勝って当然」のプレッシャーも付きまとう。宇佐美の状態が芳しくない時には大竹が司令塔を務め、チアーゴが戦線を離脱した際には川村が代役にとどまらぬ活躍を見せ、1つ1つ勝ち星を重ね、後半戦を迎えた。
群雄割拠の男子プレミア勢ではあるが、ファイナルで戦うであろう相手として、南部監督が常に意識してきたのが前半からリーグを独走する東レの存在だ。シーズン当初から高い完成度を誇る東レに対し、どう攻め、どう戦い、どう勝つか。地道なミーティングやポイントを絞った練習を重ね、その成果が示されたのがレギュラーラウンドの最後、3レグでの戦いであり、セミファイナルで収めたストレート勝ちだった。
万全を期して、臨んだ東レとの決勝戦。1、2セットは宇佐美が好調の福澤にボールを集め、ブロックのマークが福澤に偏りがちになったところで、うまくミドルの白澤を使う。「攻撃力のサイドに、ミドルをうまく絡められれば勝機はある」と宇佐美が事前に描いていたとおりの展開へと持ち込み、さらには秋山監督が「宇佐美選手のサーブが予想以上によかった。対策してローテーションを変えたが、うまく対応できなかった」と賛嘆したサーブで試合の流れを引き寄せる。
しかし、1、2セットを取ったところから東レが粘りを発揮し、第3セットは41-43と大激闘の末に落とし、第4セットも失ったパナソニックは2-0から2-2、東レの勢いに押される形でフルセットを迎える。
意地と意地、力と力がぶつかり合う決勝戦を制するのはどちらか。
枩田のブロック、福澤のサービスエースで13-6と突き放しても、そこから追い上げ東レが10-13と迫る。まさに激闘と呼ぶにふさわしい名勝負に決着をつけたのはチアーゴ。レフトからスパイクを決め、2時間31分に及んだ熱戦を制した。
疲労をにじませながらも、最後に宇佐美は喜びを噛みしめた。
「お互いの力が拮抗(きっこう)しているからこそ、こういう試合をすることができた。両チームだけでなく、すべてのチームの力を結集してオリンピックを目指したい」
歴史に残る名勝負を経て、再び、決戦の舞台は世界へと続いていく――。
コンディションの安定が奏功
周囲に支えられてのMVP
最高殊勲選手賞 福澤達哉
シーズンを通し、攻守両面において安定した力を発揮した福澤が、自身初のMVPに輝いた。チームとしてはもちろん、個人としても結果にこだわり、サーブ、レシーブ、スパイク、レセプション。すべてのプレーでテーマを掲げ、追求し続けた充実のシーズンを終えた。きたる世界との戦いに向けて、ワールドカップで得た課題から積極的に取り組んできたこととは何か――。激闘を演じた決勝戦とともに、日本のエースが振り返る。
「決勝戦はほんとうに苦しい戦いでした。自分たちの持ち味であるサイドアウト型のスタイルへ持っていくことができれば勝機はあると思っていましたが、3セット目以降は完全に東レのペースにはまってしまいました。
競った場面で何度か『ここで決めれば優勝』というシーンがありましたが、そこで『自分が決めてやる』と力みが生じ、それまでは見えていたブロックが見えなくなり、視野が狭くなってしまいました。それでも最終セットに入る前、周りからも『思い切って奥へ打っていけ』と声をかけてもらい、『ここで絶対に勝たなきゃダメだ』ともう一度気持を切り替えることができたので、最後にチームの力を出し切って勝てた。いい結果を残すことができてよかったです。
リーグを通してコンディションが安定していたので、自分の持ち味であるジャンプ力がシーズン通して発揮できたのが一番大きなポイントでした。以前は打点も少し前でボールを捕らえていましたが、高さを生かした打ち方をするために腕はまっすぐ伸ばした一番高いところでミートを意識しながら捕らえるようにして、ブロックアウトを取ったり、ブロックの上から打ち切るような打ち方に取り組んできました。その結果ヒットポイントも広がったし、世界の高いブロックに対しても、自分の高さを生かすにはどうすべきか、シーズンを通して取り組んだ成果は残すことができたと感じています。
レセプションもフローターサーブだけではなく、ジャンプサーブも基本は得意なオーバーでさばくようにしたら、さほど崩れなくなりました。身体のバランスがよかったことも一因ですが、得意な位置で捕るよう心がけた結果だと思います。
個人としても、周りに支えられながらMVPという栄誉ある賞をいただいて内心ホッとしていますし、自信になりました。実は今季はスパイク賞を狙っていたのですが、それは獲(と)れなかったので(笑)個人として最後に賞を獲ることができて『獲れてよかったぁ』という気持でいっぱいです(笑)」
今回は月バレ2012年5月号に掲載された2011/12V・プレミアリーグ男子ファイナルを振り返った。
今シーズンのクライマックスとなるV・ファイナルステージ。連覇を狙うサントリーサンバーズか、6年ぶりの優勝を狙うウルフドッグス名古屋か、2年連続準優勝に終わり雪辱を狙うパナソニックか。どこが優勝してもおかしくない最後の舞台は、4月9日(土)に幕を開ける。
【2021-22 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN V・ファイナルステージ】
特設サイト
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【動画】V・ファイナルステージに向けた出場争いを動画で復習