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ネーションズリーグって何だ? 男女日本代表が戦う今、大会を知る&味わうポイント

 バレーボールの大型国際大会「FIVBネーションズリーグ(VNL)2022」が5月からスタートし、女子日本代表は開幕から無傷の4連勝、男子日本代表も初戦白星発進を飾った。7月上旬には大阪でも開催が予定されている、この大会をあらためて解説する。

<男女通して、2021年大会に女子日本代表があげた第4位がVNLでの過去最高成績となっている>

 

【1】2018年に新設され、16チームで争われる

 

 VNLの歴史は比較的浅く、第1回大会は2018年。それまで20年以上催されてきた男子の「ワールドリーグ(WL)」、女子の「ワールドグランプリ(WGP)」に代わる大型国際大会として、新設された。

 

 開催国が世界各地に設定され、チームが移動する“サーキット型のコンペ”である点は、WLやWGPを引き継ぐかたちとなったが、一方で出場チーム数は男女とも16チームに絞られ、より競争力のある大会に。そのほか、競技方式は男女で共通となっている。

 

 毎年開催され、時期は代表シーズンに突入してまもない5月から7月にかけて。まず予選ラウンドを実施し、その上位成績チームがファイナルラウンドに進出する。

<コートを囲む電光掲示板に表示される「VNL」の大会ロゴマーク(写真は2019年大会)>

 

【2】以前は総当たり戦も、今年から予選ラウンドの試合数を削減

 

 VNLは2018年、2019年と開催され、2020年はコロナ禍により中止、2021年はリミニ(イタリア)でバブル方式にて実施された。

 

 大会形式も変化し、最初の2年間の予選ラウンドは16チームによる総当たり戦。4チームずつプールに分けられ、5週にかけて毎週3試合が行われていた。

 

 だが、その週の全試合を消化すれば、すぐに次の開催地へ長距離移動し、また3試合…、とスケジュールはハード。3試合すべてをレギュラーメンバーではなく、選手を組み替えながら戦う、といった戦略のおもしろさがあったとはいえ、選手たちの負担は相当に激しいものだった。

 

 そうした背景もあってか、今回の2021年大会から予選ラウンドは各チームの試合数を12に設定。スケジュールも連戦を避けるように、各週の中でも試合のない日が設けられるなど変更が施された。

 

 また、ファイナルラウンド進出チームは、従来の上位6チームが今年から8チームに拡大。トーナメントで頂点を争う。

<第1回の2018年大会は予選ラウンド第3週が大阪で開催され、男子日本代表はブルガリアやイタリア、ポーランドと対戦した>

 

【3】シーズン最初の実戦。オリンピック出場にも影響する大会に

 

 バレーボールでいえば、オリンピックが世界最高の大会、世界選手権が世界最大の大会であり、FIVB(国際バレーボール連盟)はVNLを、それらに続く大型大会として位置づけている。

 

 今年の場合は、夏以降に世界選手権が控えていることから、そこに向けたチームの現状把握や強化に充てる機会。同様に、来年は秋に予定されているオリンピック予選へ、その翌年はいよいよパリオリンピックに向けて、その前段階を踏むのがVNLとなる。

 

 もっとも、オリンピックの出場権獲得フォーマットも従来から変更され、予選で出場権を手にできなかった場合は、FIVBランキング(いわゆる国際ランキング)の上位から割り振られることになった。このVNLも、そのFIVBランキングの対象となっており、一戦ごとの勝敗が獲得ポイントに直結する。ランキングの上位チームから勝利すれば一気にポイントを稼げる一方、下位チームから取りこぼせば痛手となる。

<今大会では女子日本代表が予選ラウンド第4戦で、FIVBランキング1位(試合開始前)のアメリカからストレート勝ちを収めた(Photo:FIVB)>

 

>>><次ページ>大会の特徴や、これまでの結果は?

【4】新戦力の見本市でも。昨年は髙橋藍がデビュー

 

 勝敗に対してシビアとなったことに間違いはないが、開催時期やチームの強化という点も含めて、毎年、コート上の顔ぶれにフレッシュさを感じさせることもVNLの大きな特徴だ。

 

 代表シーズンが始まった直後の大会であり、同時に、各国のクラブシーズンも終わったばかり。選手たちによっては、この時期を疲労回復や治療、オフシーズンに充てているケースも見られる。例えば、今や“世界最強アタッカー”と称される男子ポーランド代表のウィルフレド・レオンは手術のため、早々に出場しないことを表明していた。

 

 そしてその分、新戦力の台頭を見ることができる。男子日本代表でいえば、髙橋藍にとって初の大型国際大会となったのが昨年のVNL。そこで堂々とプレーしてみせ、見事その夏の東京2020オリンピック出場メンバー入りを果たしている。

 

 ほかにも、2019-20シーズンから3季、Vリーグ女子のJTマーヴェラスでプレーしたオポジットのアンドレア・ドルーズも、2019年大会で女子アメリカ代表優勝の立役者となり、一躍ブレイクを遂げた。

 

 とりわけ今年はオリンピック翌年とあって、一つのサイクルが終わり、新たなサイクルが始まるタイミング。ニューフェイスにも注目だ。

<大型国際大会デビューを飾った髙橋藍(写真は2021年大会/Photo:FIVB)>

 

【5】女子はアメリカが3連覇。開催国のジンクスも

 

 大会を振り返ると、女子はアメリカ代表が3連覇を果たしており、“VNL女王”として君臨。昨年はブラジルとの決勝を制すると、続く東京2020オリンピックでもブラジルの再挑戦を退け、金メダルを獲得している。今年はメンバーもガラリと変えて臨んでいるが、即戦力級のニューフェイスたちが試合を重ねるごとに成長していくに違いない。

 

 一方の男子は、2003年からFIVBランキング1位を譲らずにいるブラジルが2021年大会決勝でポーランドを下し、意外にも初優勝を果たした。なお、大会MVPはブラジル代表オポジットのバラセ・デソウザと、2020-21シーズンからVリーグのウルフドッグス名古屋でプレーするポーランド代表のバルトシュ・クレクがダブル受賞。表彰式ではお互いに仲良く背中を押しながら登場する姿が印象的だった。

 

 ちなみに、男子には“ジンクス”がある。それは一極集中開催となった2021年を除き、ファイナルラウンド開催国のチームは、決勝に進出しながらも優勝を逃している、というもの。2018年はフランスが、2019年はアメリカが、いずれもロシアの前に自国優勝の夢を打ち砕かれた。

 

 今年の男子ファイナルラウンドの開催地はボローニャ。イタリア代表は昨年秋のヨーロッパ選手権を制するなど力はあるが…、果たしてジンクスを破ることはできるだろうか。

<現在はFIVBが主催する国際大会への参加が認められていないロシア代表だが、男子チームは“VNL強者”だった>

 

【6】精力的なブランディングの元、モダンな大会として発展を続ける

 

 さて、今年で4回目の開催となるVNLだが、大会の魅力を裏付けているのは、そのブランディング。テーマである「BE PART OF THE GAME」は、選手も、見ている人も“試合の一部である”ことを掲げたもの。青とオレンジで彩られたロゴマークの「VNL」は、直線的な文字で形づくられており、これはコート上のボールの動きを表現している。2020年には、このロゴマークが、世界各国のさまざまな企業や団体の事業やキャンペーンを表彰する「第22回TOP/COMプロジェクト」で銀賞を受賞した。

 

 また、2019年にはオーストラリア出身の姉妹DJデュオ、NERVO(ナーヴォ)による大会テーマソング「Worlds Collide」が誕生。公開されたミュージックビデオでは、2018年大会決勝(男子はロシアvs.フランス、女子はアメリカvs.トルコ)の映像がふんだんに使われている。

 

 そして、昨年はFIVBが取り組む男女平等社会実現にむけた啓発活動の一環として、「イコール・ジャージ キャンペーン」を展開。前出のクレクやバラセ、女子アメリカ代表のジョーダン・ラーソンらがスペシャルユニフォームを着用してプレーする機会が設けられた。

 

 これまで時代ごとにルールも変わるなど、“変化するスポーツ”として今に至るバレーボール。VNLもまた、それを象徴する大会の一つであり、今後も新たな取り組みや試行錯誤を重ねながら、発展を遂げていくだろう。

<2019年大会の男子ファイナルラウンドの会場で、生のDJプレイを披露したNERVO>

 

(文/坂口功将〔編集部〕)

 

>>><次ページ>【ミュージックビデオ】大会テーマソング「Worlds Collide」

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