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もう一つの男子日本代表 “日本のバレーが変わった” 薩摩川内合宿レポート6

 

 

笑顔がキラリ

 

男子日本代表Bチームは6月27日(月)から7月8日(金)まで、鹿児島県薩摩川内市のサンアリーナせんだいにて強化合宿を行った。6月上旬から行われた味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC・東京都北区)での合宿に続くもので、本年度男子代表登録メンバーと「2022AVCカップ男子」日本代表候補選手の中から計17名が参加。期間中、チームはネーションズリーグ(VNL)大阪大会に向け合宿していた男子アルゼンチン代表と、練習試合を2試合行った。日本代表Bチームにとって最大のターゲットは、8月7日(日)からタイのナコンパトムで開催される「2022AVCカップ男子」。同大会の成績はFIVB世界ランキングにAVC大陸ランキングポイントとして反映されるため、優勝を目指して準備を進めている。

 

 合宿終盤の選手、監督に合宿の成果や現在の心境などを聞きました。

 

 

「刺激を受け合って頑張りたい」深津旭弘

――チームの雰囲気はいかがですか?

 年齢の幅が、僕もいて(34歳)けっこう広いですけれど、だいぶコミュニケーションがとれてきました。真保監督のもと、いい練習ができているんじゃないかなと思います。

 

――深津さん、大竹さんがチームを引っ張っています

 僕もそんなに代表の経験があるわけではないですが、若い子たちに刺激を受けながら、いいチームをつくっていければいいかなと思っています。

 

――若い選手も多いです

 今の若い選手は高い力量を持っていて、あとはそれをどう発揮できるかの部分が大きい。その手助けをしたいと思うし、力になれたらいいなと。

 

――ご自身の調子はいかがですか?

 僕自身は別にあんまり(笑) 相変わらずといった感じですけど。アタッカー頼みでやっています、申し訳ないトスばっかりで。コミュニケーションをとって、若い子に助けられながら、楽しんでやっています。

 

――7月末の沖縄での紅白戦、8月の2022AVCカップまで長丁場です

 合宿は一度解散して、また東京、沖縄で合宿です。代表はこういうところなので、リフレッシュするときはして、やるときはやる、とメリハリをつけてやっています。

 

――2022AVCカップでは優勝を目指して

 そうですね。その目標のためにやっていますので。いい準備をして入りたいな、と思います。

 

 

――深津三兄弟の存在感が光ります

 (星城高校の恩師)竹内(裕幸)先生からは「いつまでやるんだ、いいかげんやめろ」と言われるんですけど(笑) 自分が何かできるかぎり、頑張ります。

 

――ファンの皆さんにメッセージを

 こちらBチームの若い選手も頑張っています。ここで結果を出して、ステップアップになればいいと思っていますし、そういう姿をぜひ見ていただけたら。トップチームとの選手の入れ替えなど、難しい部分もあるなかで、ここでどうにかチャンスを生かす、いいプレーをしてものにする、というのが大事。僕もここではここの役割で、頑張りたい。若い子よりも元気を出して、彼らの刺激になれたらいいなと思います。

 

 ご自身のSNSで合宿地のPRを多数投稿、「職員の皆さんによくしていただいてきたので」と、義理堅い深津選手です。「町の様子も含めて、こちらBチームも頑張っていますよ、と伝えられたら」とのことでした。

 

【次ページ】高橋和幸・山田大悟が合宿を通して感じたこと

練習終わりの体幹トレーニング

 

「トップを狙ってやっている」高橋和幸

――合宿の成果は?

 アルゼンチンという強豪と練習試合をして、通用する部分、しない部分がはっきりわかった点。チームとしてトップを狙ってやっている、というのをみんなで一致団結してできたのがよかったと思います。

 

 高橋選手もVNL帯同からの合流組。きびきびとした動きで、コートにエナジーをもたらしていました。

 

 

「この経験をチームに伝えて」山田大悟

――東京グレートベアーズ(GB)から監督と山田選手が参加しました

 僕自身、このカテゴリーに選ばれるのが初めてで不安もありましたが、周りのレベルが高いなかでやるのは楽しみでもありました。自分がどれだけやれるのか、思いっきりやろうと思って参加して、やりきったなという感じはあります。代表チームでは監督が言わなくても選手がその意図を汲んで主体的に動きますし、自分の意見をしっかり言える環境がありました。自分がチームに戻ったときには、そういうことをチームメートに伝えていきたいと思います。

 

 「やりきりました」とすがすがしい笑顔で答えてくれた山田選手。東京GBの大きな力となる予感です。

 

【次ページ】大竹壱青が思うチームの伸びしろ

左からエバデダン、大竹選手

 

「日本のバレーにプラスの力を」大竹壱青

――チームの調子、自身の調子は?

 チームとしては、アルゼンチンと練習試合をして、1、2試合目とも、接戦で勝てなかったセットも多かったですが、内容としてはとてもよかった。練習のときのムダが僕も含めまだ全員ありますが、試合になると全員調子も上がりますし、力のある人たちなので。6月と今回の合宿を経て、いいチームに仕上がってきているんじゃないかなと思います。僕自身、いろいろなことに挑戦してみて、6月からやってきたことが少しずつ身についてきていますし、修正しながら完成度を上げられたらというところですね。

 

――代表歴も長いです

 ずっと選ばれてはいましたが、結局は東京2020オリンピックも出られませんでしたし、大きな大会に出ていたわけではないので、おごることなく、こちらで全力を尽くすという気持ちでやっています。若手も多いですが、いい意味で彼らにいじられたりもしながら(笑) 何も気にすることなく、楽しくやっています。

 

――所属先でもコンスタントに結果を出してきました

 まだまだなところもありますが、年齢も上がってきたので、代表でも所属チームでもいろいろと変えていかなければいけない、と思うところはあります。チームでもそこが課題かなと。

 

――2022AVCカップでは結果が求められます

 今のバレーの基本は、主流がサーブで攻める、攻めきったチームが勝つというのが一つのパターンなので、そこを大事にしたい。日本のよさといえばやはり、ディフェンスです。どんどんつないで、相手のミスを誘う、そこから自分たちのブレイクを取るというケースを増やしていければ、いいバレーもできるし、数多く勝てると思います。

 

――トップチームもVNLで結果が出ています

 今日本が目指すバレー、本来やらなきゃいけなかったバレーをAチームが表現していて、それを見て「バレーボールって楽しい」と思える人がどんどん増えていってくれたらいちばんありがたいですよね。やはり、あの形がいちばんいいんじゃないかな。バレーをやっている身としてもおもしろいと思って見ています。

 

 

――練習試合ではサーブがさえていました

 サーブはいちばんの個人技なので、そこでいかに勝負していけるか、質を上げられるかが大事です。周りからすれば、僕が点を取っているようには見えますが、まだまだサーブは成長段階だと思っています。

 

――チームの伸びしろは?

 能力が高く、ブロックもレシーブも引けを取らないと思うので、まだまだ積み上げて、いい状態に完成度を上げられると思います。

 

――ファンへのメッセージをお願いします

 いつも応援ありがとうございます。これからも日本のバレーをもっとおもしろく、いろんな方に見てもらえる機会を増やしたいですね。日本のバレーっておもしろいな、楽しいな、やってみたいなと、プラスの気持ちで見てもらえて、プレーしてもらえる機会を増やせるように、僕自身、精いっぱい頑張って結果も残しながら、しっかりチームの勝利を目指して頑張っていきたいなと思います。応援よろしくお願いします!

 

【次ページ】真保綱一郎監督が合宿の目的を語る

ジェントルマンな真保監督

 

「野心を持って、少しずつ」真保綱一郎監督

 練習中は穏やかな真保監督。「試合では変わりますが」とほほえむ指揮官は、国際経験も豊か。フィリップ・ブラン監督と連係したチームづくりが、選手層の厚みを増すことにつながっています。

 

――合宿参加の選手選考は?

 各チームの主力選手、将来を嘱望されている選手、もともとレベルの高い選手たちが集まっている。途中VNLに選手を出したり、向こうから受け入れたりしてやってきた。Aチームからの加入は刺激になると思います。モチベーション的に難しい面もあるかと思ったが、富田(将馬)や永露(元稀)も、みんなしっかり前を向いてやっていますね。

 

――本合宿での目的をあらためて

 東京合宿に続く2回目の合宿で、ゲームのコンセプト、チームのコンセプトを浸透させることが目的。アルゼンチンにチャレンジできるという最高の機会をいただきました。ゲーム全体としては勝てませんでしたが、ブロックとディフェンスが機能し、組織として日本らしく点を取れたシーンも多くありました。合宿開始から1ヵ月で両試合ともフルセットを戦うことができ、負けはしたが選手がやることをしっかり発揮してやっていました。

 

――期待以上のものがありましたか?

 このチームとして一発目の試合だったので、最初はアルゼンチン相手に試合になるのかな? という予想でした。ブロックが機能して、サイドアウトも日に日によくなり、コンビネーションも向上してきました。

 

――招集当初はおとなしい印象もあったそうですが?

 合宿当初はチームビルディングを意識して、ボールゲームや、初めてやる者どうしで対人を組むなど工夫しました。最年長の深津(旭弘)が率先してコミュニケーションをとり、永野健(パナソニック、今回はコーチ参加)はじめ、コーチ陣がほんとうによくやってくれています。

 

――AチームがVNLに参戦するなかで本合宿も重要な意味を帯びました

 そうですね。Aチームもフィリピンラウンドでは新型コロナウイルス感染者が出る事態があり、バックアップの必要性を痛感しました。この時期、Vリーグのチームはシーズンオフで、選手は通常まだボールを触っていなかったり、筋トレの期間だったりするので、急に呼ぼうと思っても対応できない。代表選手のバックアップ機能という意味でも、このBチームの存在感は大きかったです。

 

 

――AVCカップに向けて

 他の国はAチームが出たりもするので難しさはありますが、しっかりやることはやって、結果を出したいですね。

 

――このオフには所属チーム(東京GB)の運営体制が変わるなど、動きがありました

 おかげさまで忙しく働かせてもらっています。日本のバレーは変わりました。外国人指導者の影響、Vリーグに世界有数の選手がいること。ジェイテクトやJT広島の補強も目をみはるものがあります。私たち東京GBも野心を持って、少しずつではありますが、チャレンジしていきます。

 

 2018年、19年に薩摩川内合宿を行った龍神NIPPON以来の男子代表チーム取材となりました。当時、高校を卒業したばかりの西田有志選手は、あっという間に世界のニシダになりました。石川祐希、西田有志というゲームチェンジャ―の出現、MB陣の覚醒、新時代セッター、そして若手の代表入りも珍しいことではなくなった今、日本バレーの確かな上昇気流を感じます。  

 

 世界と渡り合うに十分なフィジカルを持った若い選手も出てきました。その勢いは当然、日本代表Bチームにも波及していましたし、Bチームの選手層の厚さ、上を目指す選手の熱こそが、上昇気流を生み出しているともいえます。何より、選手自身がワクワクしてプレーしている、その明るいオーラとエナジーが日本バレーの新たな地平を切り開いていくと期待させます。  

 

 2024パリオリンピックに向けて、さらなる高みへと登っていく龍神NIPPONを楽しみに、本レポートを終わります。

 

 

取材・文/泊 亜希子

 

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【次ページ】薩摩川内合宿の他の写真

 

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