令和4年度全国高等学校総合体育大会(インターハイ)が、女子は7月28日(木)から8月1日(月)に徳島で、男子は8月3日(水)から7日(日)に香川(男子)で行われる。大会直前に注目選手たちの声をお届け。7月4日から11日に行われ、日本が優勝した第21回アジアU20(ジュニア)女子選手権大会(カザフスタン)で、金蘭会高(大阪)のエース上村杏菜(2年)とリベロの德本歩未香(3年)が個人賞に輝いた。帰国後に出場した近畿大会でも8連覇に貢献し、いいイメージを抱いてインターハイに挑む
アジアU20選手権大会で最優秀選手賞とベストアウトサイドヒッター賞のダブル受賞。Vリーガー、大学生も名を連ねる中で、エースとして最高の称号を得たのが、高校2年生の上村だった。「身長も高くないし(168㎝)、いちばん年下。自分よりレベルが高い人ばっかりで、賞を獲ったけど「ほんまに?」って思いました(笑) うれしさよりも驚きのほうが強かったです」。
初めて日の丸を背負い、苦労したのがチームスタイルである速いトス。助走をたっぷりとって、インパクトで爆発的なパワーを生む上村にとっては、なかなか持ち味を発揮できなかった。「日本のスタイルはトスが低いから、合わせようと頑張りましたが、なかなか合いませんでした。でも、スタッフの方から自分の打ちやすいトスでいい、と言われて」と現地入りしてから高いトスに変更。予選ラウンドで一度敗れた平均身長185㎝を超える中国とのファイナルでは、パワフルなスパイクで得点を量産した。ストレート勝ちでリベンジを果たし、日本に歓喜の瞬間をもたらした。
高校2年生ながらアジアNo.1スパイカーに輝き、将来への期待も高まるが、上村は「ふふっ」と笑って答えた。「シニアのメンバーに入るんやったら、もっと成長しないとあかん、と思います。周りからも次はシニアやな、と言われますが、まずは高校での日本一。それを達成してから、そういうところも目指して頑張りたいです」。
帰国し、金蘭会高に合流してから初の公式戦となった近畿大会(7月21日~23日)では、コンディションを考慮して23日の準決勝からコートへ。決勝の城南学園高(大阪)戦はなかなかエンジンがかからず、第1セットを落としたが、第2セットから本領発揮。最終第3セットには強烈なジャンプサーブで相手を崩し、立ち上がりから6連続得点と流れをつくった。自信を胸に、インターハイ本戦へ乗り込む。
その今季注目のエースが「さすがです。いつもどおりすごかった」と絶賛したのが、金蘭会高のチームメイトで、同じくアジア一に導いた小さな守護神だ。
Vリーガーや大学生も出場するアジアU20女子選手権大会で、高校生の德本が唯一リベロとして選ばれた。当初は「年上の方が多い中で選ばれてうれしかったけど、コミュニケーションをとれるのかな、という不安もありました」と話すが、その心配はすぐに解消された。
高校時代からよく知る仲間も多く、特に全国大会で何度も対戦した就実高(岡山)出身の深澤めぐみ(久光)、つぐみ(東レ)とは、「『自分たちは金蘭が相手になったらなぜか強くなるねん』って言われて(笑) 『まじですごかったんですけど(笑)』と話しました」とコミュニケーションもバッチリ。「最初は言いづらかったですが、年齢は関係なくリベロとして声かけも大事」と後衛から仲間を鼓舞した。得意のディグでは相手の強打をことごとく防ぎ、152㎝の体で絶大な安心感を与えた。
ベストリベロ賞にも輝き、インターハイ本戦への手応えを得たが、帰国前にアクシデントが待っていた。出国前の空港検査で、無症状だったのものの陽性判定を受け、8日間現地で足止めとなった。チームに合流したのは近畿大会2日目、22日の朝。到着直後の3回戦は観覧席から仲間たちのプレーを見守った。「久しぶりに帰ってきて、みんなすごい拾うし、西村(美波/1年)はスパイクのキレもありました。自分も負けてられへんな、と思いました」。
決勝の城南学園戦で満を持してコートへ。隔離期間もトレーニングが中心で、ボールを使った練習はほとんどしていなかったが、強打を難なくセッターへ返す姿は、さすが世代を代表するリベロ。大会を通してベンチメンバーも力をつけ、インターハイの頂点に向けて最後のピースがはまった。
日の丸のユニフォームを着た経験は、2人の背中を押す。「賞に選んでもらったからこそ、『自信を持ってインターハイを戦おう』と杏菜と話しています」。昨年のインターハイは、上村は1年生エースとして、德本は守護神として奮闘するも、準決勝で敗戦。リベンジの舞台へ、準備は整った。
取材/田中風太
写真/AVC、田中風太
上村杏菜
うえむら・あんな/2年/アウトサイドヒッター/身長168㎝/最高到達点301㎝/金蘭会中(大阪)
德本歩未香
とくもと・あみか/3年/リベロ/身長152㎝/最高到達点260㎝/金蘭会中(大阪)
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