テヘラン(イラン)で開催され、8月21日(日)にセミファイナルラウンド(対韓国)を迎える第14回アジアU18(ユース)男子選手権大会。今夏のインターハイでチームを初優勝に導き、日本代表でもエースを務める東山高(京都)の尾藤大輝は、苦境を乗り越えて今大会に臨んだ
インターハイ初優勝を決め、尾藤の表情に笑顔が戻った。「めちゃくちゃうれしいです。今まででいちばんですね」。その2週間前、2年生エースは絶望の淵にいた。
3年ぶりにインターハイ本戦の切符をつかみ、勢いに乗って臨んだ7月下旬の近畿大会。準々決勝で近江高(滋賀)に2-0で勝利したあと、尾藤は松永理生監督に呼び止められた。同監督はその場面を振り返る。
「ブレイクチャンスでフェイントはないよね、と伝えました。する場合はできるだけ確実にボールを落とせる場所を狙わないといけないのに、簡単に相手に返していました。そこをエースとして求めていくことが、インターハイでは確実に必要になるので」
パフォーマンスが上がりきらない中、翌日の決勝では昇陽高(大阪)にストレート負け。目標の三冠へ突き進むチームに、危機感が漂った。尾藤はその責任を痛感していた。
「この大会でずっと調子が悪くて。復調できず、まだまだだなと思います。日頃から『最後は頼られるから、割りきって打ちきれ』と言われていましたが、ミスで失点につながることを恐れてしまって。みんなから求められていることに値しないプレーが続いていました」
若きエースは壁にぶつかっていた。髙橋藍(日本体大3年)に憧れて東山へ。1年生時のインターハイ予選からレギュラーをつかみ、得点源として活躍してきた。世代屈指の得点力を誇り、パイプ攻撃や鋭いサーブで存在感を発揮。一方で、課題をあげるとすれば好不調の波が大きいことだろう。「自分は集中が切れやすいタイプ。終盤になると、(トスが)上がってくることはわかっていても、どうしてもちょっと助走に入るのが遅れてしまうことがありました」と自身も痛感していた。
忘れられない敗戦を胸に刻み、インターハイに臨むにあたって松永監督から声をかけられた。「最後までお前が打ち切ってこそ、東山のエースだぞ」。その言葉に、「エースとしての自覚を改めて認識するようになりました」とスイッチを入れた。
失セット0で勝ち上がったインターハイ決勝(対東福岡[福岡])。第1セットは序盤から押され、ビハインドの展開に。だが、13-19から尾藤が3連続バックアタックを決めるなどして逆転。主導権を奪い、ストレート勝ちで歓喜の瞬間を迎えた。アタック決定率は56.8%、チームトップの23得点をマーク。松永監督は「今日はほんとうに頑張っていました」と言い、続けた。「ただ、もっと技術を上げられると思うので。まだまだ成長してもらいましょう。大エースになってもらいましょう!」
その熱戦からおよそ1週間後。尾藤は日本代表のエースとして第14回アジアU18(ユース)男子選手権大会を戦っている。予選グループ戦では初戦のインド戦、続く韓国戦でチームトップの37得点。第3戦のタイ戦でも26得点を挙げ、3試合連続フルセット勝ちに導いた。
試合を重ねるごとに結束力を高めてはいるものの、短期間で力を合わせる即席チーム。自チームとは違うポジションでプレーする選手もいる中、チームに安心感を与える「大エース」へ。セミファイナルラウンドでの韓国との再戦も、ステップアップの舞台にする。
文/田中風太
写真/AVC、坂口功将(編集部)
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