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[連載④完]デンソーエアリービーズが挑む2022-23シーズン/「50年目にBEE CHAMPION」

 1972年に創部され、2022年に50周年を迎えたデンソーエアリービーズ。その節目の年に掲げたスローガン「BEE CHAMPION」の元、2022-23 Vリーグではその言葉に記された頂を目指す。半世紀を経て、次にチームが歩む先は。全4回の連載企画、最終回

 

 

満場一致で決まったスローガン

 

 まさに、それは蜂に刺されたような衝撃だったかもしれない。今年6月2日、きたる2022-23シーズン始動に向けて、チームのスローガンを検討するミーティングの場で一つの言葉が掲示された。

 

 たくさんの候補が上がる中、ホワイトボードのど真ん中に記されたのは「BEE CHAMPION」。その言葉を目にしたメンバーたちは最終的に、ほぼ満場一致に近いかたちで今季のスローガンをこの言葉に決めたのであった。

 

 そこには、まだ見ぬリーグ優勝=CHAMPIONを目指して突き進む、という意味が込められている。それに、BEEとは蜂のことで、チーム名にも含まれ、ロゴマークからも連想される単語である。

 

<ホワイトボードに記されたスローガン(写真:チーム提供)>

 

 すごくいい言葉ができたな。チームのいたるところから、そんな声が聞こえてくるのも、うなずける。辻健志監督はスローガンの感想をこのように語る。

 

「スローガンを決めるにあたって、選手たち自身の中で覚悟を決めてほしかったんです。そして、それをただ口にするだけでなく、ほんとうにそれを達成するためにはどうしなければいけないかを考えてもらいたかった。その点、「BEE CHAMPION」は“チャンピオンになる”というのが、すごくしっくりきました。

 

 言葉しだいでは、時間が経つにつれて薄れてしまう可能性もあると思うんです。けれども、バレーボールをして、試合を戦って、やっぱりチャンピオンになりたい。それに、目指すのは優勝だけではなくて、それを達成するまでの過程で、魅力的なチームや子どもたちが憧れるチーム、たくさんの方々に応援されるチームになることを選手スタッフ全員が共通認識として持つためにも、すごくいいスローガンができたと感じています」

 

<選手、スタッフ一丸となってシーズンに挑む。写真は2022 V・サマーリーグ>

 

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「今の自分に何ができるかを考えている」(横田)

 

 指揮官の思いとシンクロするように、この言葉は選手にとっても指針となって、しっかりと胸に刻まれているようだ。ルーキーの横田紗椰香は話す。

 

 「目標を定めるときに、やっぱり最終的なゴールはそこですから。チャンピオンという言葉を使うと重く感じてしまう部分もあるかもしれませんが、自分たちが目指すのはそこであり、それを大きく掲げることで、いろんなことが大切という話になりましたから。このスローガンがあることで、常に“優勝する”てっぺんを取る”という気持ちを忘れないですし、何ができるかをすごく考えることができています」

 

<活躍に期待が寄せられる横田>

 

彼女自身にとっては、22-23シーズンが初めてのリーグになる。内定選手として昨季はコートに立つ場面もあったが、新しい戦いが幕を開けようとしている。

 

 「もちろん、コートに立てるときもあれば、立てないときもある。ユニフォームを着られるときも、着られないときも出てくると思うんです。ですが、状況に応じて、自分の持てる最大の力を発揮できるように頑張りたいな、と思っています。

 

 プレー面では私が得意としているブロード攻撃を磨くことを。また、ミドルブロッカーとしては身長が低い分、しつこくブロックや攻撃に参加する選手になりたいです」

 

 チームに貢献するために、自分が目指す選手像に向かって、ステップアップを続けていく。

 

<それぞれが自分の役割を果たす>

 

>>><次ページ>「原点に立ち戻れる」

「原点に立ち戻れます」(吉田広報担当)

 

 さて、そんなキャッチーなスローガンだが、発案したのは今季から新しく広報担当に就任した吉田美貴だ。以前は同じVリーグの久光スプリングスでスタッフを務め、アイディアにあふれチームの魅力を発信してきた人物である。今回の「BEE CHAMPION」と、当の本人はどう向き合っているのか?

 

 「50周年の節目を迎えたデンソーエアリービーズにとって、リーグ優勝はそれ自体が、初めて成し遂げるべきもの。その中で広報担当の私ができることは、活動するメンバーたちの思いを、ファンの皆さんへ発信することです。外に向けて発信していることは、同時にチームのみんなの目にも触れているわけなので、私自身も“チャンピオンになる”という思いをずっと持っておかないといけないと思います。

 

 スローガンに表れている目標自体がすごくわかりやすいですし、私もSNSでハッシュタグをつけるたびに、原点に立ち戻れているので。すごく気に入っていますし、大事にしていきたいです」

 

 広報担当として、さっそく大仕事を果たしたといったところか。辻監督も、その働きぶりに目を細める。

 

 「SNSを通して選手やスタッフの魅力を発信してもらっていますが、“どのように見せていくか”“どのように見られたいか”をすごく意識されていて、新たな発見がありますし、私たちも刺激をもらっています」

 

<チームの要である中元南の結婚発表に際しても、チームからは工夫をこらして発信された>

 

「優勝した瞬間を具体的にイメージすることを」(辻監督)

 

 今、チームはスローガンとともに、シーズンを過ごしている。その言葉を目にし、口にすれば、脳裏に浮かぶのは、まさにその言葉どおりの情景だ。指揮官も、この言葉が持つ効果を感じている。

 

 「スローガンがバーンと出たときに、すごくいいイメージがふくらみますよね、という意見が出ました。私もイメージすることはすごく大事だと思っていて。このスローガンの場合ですと、優勝した瞬間のイメージが具体的に描けていることによって、今の自分が頑張れるという力を生み出すんです。だから、すごくキャッチ―であり、イメージしやすいスローガンですよね」

 

 22-23 Vリーグの女子は10月29日から、約半年に及ぶ長く、激しい戦いが繰り広げられる。コート上で羽ばたくミツバチたちよ、いざ「BEE CHAMPION」。

【完

 

「BEE CHAMPION」-デンソーエアリービーズ

 

(取材・文/坂口功将〔編集部〕)

 

>>><次ページ>【ギャラリー】V・サマーリーグを戦ったデンソーエアリービーズ〔15点〕

 

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