やらされるよりも、自分で「うまくなりたい」と思ってもらえる練習を 新鍋理沙さんインタビュー
- SV女子
- 2022.09.08
「どうやったら伝わるか」を考えながら指導にあたる
――教えていて難しいところは?
小学生から質問されるときは「どうやったらスパイクを打てますか?」とか「どうやったらうまくなれますか?」というように、ざっくりと聞かれることが多く、どのように伝えるか難しいです。でもみんな本心だと思うので、そこからできるだけ具体的に聞きだすことを意識します。そして、その子に合った、やりやすい方法を見つけてあげたいと思っています。バレー教室などの限られた時間のなかでは難しいことも多いですが、可能な限りうまくなるためのヒントをわかりやすく伝えたいです。
――教えるのは得意ですか?
言葉にして、簡単にわかりやすく伝えることはとても難しくて、私は多分不得意な方です(笑) でも、どうやったら伝わるかはすごく考えます。子どもに伝わったかどうか、リアクションですぐ分かるじゃないですか。アドバイスをしたあとに表情を見て、「ちょっとわかってないな」というときは、違う言い方をします。そういうことを心がけてはいますけど、教えるって難しいですよね。
――では子どもたちに教えていて、楽しさやうれしさを感じる瞬間は?
子どもたちが楽しそうにバレーボールをプレーしている姿を見ることが、まずうれしいですね。さらにこちらが教えたことを、一生懸命にやってくれようとしている姿を見ると、「次はもっとわかりやすく伝えられるようにしよう」と思えるモチベーションにもなりますね。
インタビュー後に行われたスプリングスアカデミーの練習で、生徒に教える新鍋さんは笑顔も多く、生徒たちと楽しむ様子も見られた。しかし、生徒から質問を受けると一転、真剣に考えて答えていた姿は、現役時代のプレーに対するストイックな姿勢と同様のものだった。引退後はプレーすることよりも、誰かに伝える機会が増えていく。しかし、役割は変わっても、取り組むその姿勢は、現役時代から変わらないのかもしれない。
新鍋理沙(しんなべ・りさ)
アウトサイドヒッター/身長175センチ/1990年7月11日生まれ/延岡学園高/鹿児島県霧島市出身
延岡学園高を卒業後、久光製薬スプリングスに入団し、高い守備力と攻撃力をあわせ持った主力選手として長年活躍した。最優秀新人賞、レシーブ賞、サーブレシーブ賞、最高殊勲選手賞などを受賞。2011年より日本代表に選出され、2012年ロンドンオリンピックで銅メダルの獲得に貢献した。2020年6月に引退。現在はSAGA久光スプリングス株式会社に所属し、試合解説、バレーボールクリニックなどを通じてバレーボールの普及に携わる。
(取材・撮影/中川和泉〔月バレ.com編集部〕)
【フォトギャラリー】新鍋理沙さんのアカデミーでの指導の様子など