「決めようと思っていました」石川祐希が明かす、フランス撃破まで残り1点で回ってきたサーブの胸の内
- コラム
- 2022.09.10
バレーボールの男子日本代表がスロベニアで行われていた男子世界選手権から、9月8日(木)に帰国した。最後は決勝トーナメント初戦で東京2020オリンピック金のフランスに敗れたが(ベスト16、最終順位12位)、フルセットにもつれ込んだその試合で日本はマッチポイントに到達した。その場面で、サーブは日本のエース石川祐希に回ってきたのだった
<世界選手権から帰国し、取材に応える石川祐希>
相手のミスで日本がマッチポイントに到達
「決めよう」
エンドラインに立った石川祐希は、この試合に決着をつけようとしていた。決勝トーナメント一回戦は日本がフルセットに持ち込み、先にフランスに14点目を奪われたが、石川が得点し、14-14の同点に。そこからフランスがタイムアウトをとり、直後のプレーで相手エースのイアルバン・ヌガペトがバックアタックからフェイントをかけたが、ボールはネットを越えず。得点は日本についた。
セットカウント2-2、日本リードで15-14。昨年の東京2020オリンピックや今年のネーションズリーグを制するなど、名実ともに世界トップのフランスを今まさに、倒すチャンスがきている。あと一点。
石川は平常心に努めた。
「『決めよう』と思っていましたし、かといって、そう思ってしまうと、力んでしまうので。いつもどおり、と思いながら、サーブを打つ前は準備をしていました」
そうして放たれたボールは…、ネットにかかった。
<サーブに入る石川(写真はネーションズリーグ)>
数字のうえでもサーブの能力がアップ
石川自身、今年磨いてきたプレーの一つがサーブである。具体的には、個人でサービスエースを奪う力。
日本代表もチーム全体としてサーブに力を注ぎ、それが今年のネーションズリーグで初の決勝ラウンド進出、過去最高成績となる5位につながった。石川はネーションズリーグの予選ラウンドで計29本のサービスエースをマークし、この数字は大会全選手の中で2番目の数字だった。
サーブで得点できるのは、数字の上でも証明済み。フランス戦のあの場面、石川は当然のごとく、エースを奪いにいった。だが、結果として必要以上に力が入ってしまったというのは本人の告白だ。
「ボールをヒットする瞬間に、『点を取りにいこう』として、力みが出てしまいました。点を取りにいくのは決して悪いことではありませんが、ダメなのは、そこで力んでしまうこと。
頭は熱く、体はいつもどおり、が絶対条件だと思います。いつもどおりを出せるように、もっともっと頭と体とを整理して打たなければいけない」
闘争心と平常心。そのコントロールにずれが生じたがゆえの、サーブミスだった。そこからブレイクを奪われた日本は、一度は追いついたものの、16-16から2連続失点。金星を逃す結果に終わっている。
<いつもどおりにプレーすることの大切さと、その難しさを象徴する場面だった(写真はネーションズリーグ)>
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