クラブ、代表でV逸のクレクが敗戦後に見せるリーダーの姿。永露元稀への抱擁に込めた思い
- SV男子
- 2022.09.13
<自らがやるべきことを胸にコートに立つ>
キャプテンに就いた経験は多くない
WD名古屋の選手、スタッフに聞くと、誰もがクレクの人柄の素晴らしさを口にする。コート内外を問わず、その立ち居振る舞いに感動すら覚えるというのだ。
2020-21シーズンから来日し、WD名古屋で2年目を迎えた昨季にはキャプテンマークをつけるようになったのもうなずける。ただ不思議なのは、クレク自身、そのキャリアにおいてキャプテンの経験がほとんどない、という点だ。代表でも、おなじみの背番号6の下に今季からラインが入ったが、それよりさかのぼると、主要国際大会では2019年のワールドカップだけ。それも大会序盤の数試合のみで、フィタル・ヘイネン監督(当時)も「彼(クレク)がキャプテンマークをつける、歴史的な瞬間ですよ」と話していた。
では、クレクが口にした、チームをモチベートすることとは。“キャプテンとして”やるべきこととは言ったものの、それは一人の選手としてなすべきことの一つに過ぎず、そこに役職は関係ない。
「キャプテンになればユニフォームの背番号に線が入るわけですが、ヨーロッパではそれがなくてもリーダーシップを発揮する選手がいます。私自身、コート上ではいつも自然でいることを心がけています。常にチームや自分にとってベストであろう、と。自分以外の何かを表現するのではなく、私自身が自然体でいること、それがリーダーシップにつながっているのではないかと思っています」
<WD名古屋の小川智大(右)も「みんなが彼の言葉に耳を傾け、彼がやるなら自分もやらなければ、と思わせてくれる」とクレクの存在を語る>
負けてなお、次に向かうことが喜び
2021-22 Vリーグを戦い終えたクレクの表情はどこか誇らしげに、そして、そのまなざしは温かく見えた。彼いわく、WD名古屋の好きなところは「人」。チームメートやスタッフ、自身を取り巻くつながりが愛しいのだという。
「2シーズン目を終えて間違いなく、よりいっそう好きになりました。なぜなら、ここで過ごす時間が増えた分だけ、私たちに携わる多くの方々のことを知ることができましたから。選手やスタッフだけではない、このチームのためにサポートしてくれる方々の献身に、私はほんとうに驚くばかりなのです」
ネーションズリーグ、世界選手権と続いた代表シーズンが終わり、じきにVリーグでの、WD名古屋での戦いが始まる。クレクにとって、いちばんに望んだものを手にすることができなかった点では、1年前とシチュエーションは似ている。それでも、こう語っていたものだ。
「すべての大会において、金メダルを取ることは最も困難なものに違いはありません。もちろん負けることだってあるわけですから。
(21-22シーズンの)Vリーグもそうでしたが、東京2020オリンピックの結果(準々決勝敗退)も、私にとって難しい時間を過ごすものになりました。ですが、その苦しさを乗り越え、また新しい大会でのゴールを設定する。そこに向かって戦いを続けていく、その喜びがあります」
2022-23シーズンのVリーグは10月22日に開幕する。そこでもまた、クレクは仲間を思いながら、リーダーシップを発揮するだろう。それはいつだって彼の自然体、あるがままの姿だ。
<喜びを全力で表現し、周りを奮い立たせる>
(取材・文/坂口功将〔編集部〕)
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