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春高2025

元監督のバレーボール便り from ハワイ 第1回

  • 海外
  • 2022.09.17

 アメリカのハワイといえばどのようなイメージをお持ちだろうか? 海、砂浜、リゾート地など日本人にも人気の観光地だが、バレーボールにおいては男子アメリカ代表のセッター、マイカ・クリステンソンや兄弟で代表入りを経験しているカウィカ・ショージ、エリック・ショージらを輩出した地でもある。またハワイ大学の男子バレーボール部はNCAAのディビジョンⅠに所属し、2002年、21年、22年と3度の大学チャンピオンに輝く強豪校。現在このハワイに視察、研修に訪れているのが、元慶應義塾大バレーボール部監督の宗雲健司さん。現地で見た生の情報を、不定期連載としてレポートしてもらう。

 

バレーボールにおける日本とアメリカの違い

 

 元慶應義塾大学体育会バレーボール部監督の宗雲健司です。勤務先の国外長期研修制度を利用し、2023年3月までハワイ州において大学、高校、クラブチームなどの視察、研修をしています。バレーボール発祥の地でもあり、先進的なスポーツ文化を持つアメリカで見聞きした、さまざまな話題をご紹介していきたいと思います。今回は日本とアメリカでの「違い」にフォーカスしていきます。

 

 まず、日本でも広く知られているのが、アメリカの学生競技において導入されているシーズン制です。アメリカの学校では競技や性別ごとにFall(秋), Spring(春), Summer(夏)とシーズン制が導入されており、選手たちは指定シーズン以外、学校で活動せずに外部のクラブで他校の選手たちと一緒に活動をするか、他競技を選択して活動します。ちなみにハワイでは、こういった選手たちを受けいれるためのバレーボールクラブが30~40程度あるそうです。また他競技を選択するのであれば、Springにベースボール、Fallにアメリカンフットボールをプレーする選手がいることはよく知られています。いわゆる二刀流ですね。

 

 成長段階における競技のシーズン制は、一つの競技に偏らずにトレーニングができるメリットがありますが、他方で一つの競技に没頭したい選手にとっては、同じチームで活動することを妨げられるデメリットもあるようです。年齢、学年が上がるにつれて徐々に一つの競技に没頭する選手がほとんどのようで、高校生くらいになると一つの競技に絞っていることが多いようです。

 

 日本のスタイルとアメリカのスタイル、どちらがよいのか意見が分かれると思いますので、個人的な意見は差し控えますが、日本では学校における部活動の地域移行が活発化している現在、こういったさまざまなスタイルを検討するには、よいタイミングではないかと思います。ちなみに日本でシーズン制が導入されていたら、皆さんは何の競技にチャレンジしていましたか? 私なら、センスはさておき野球だったと思います。

 

高校の試合視察で見たさまざまな違い

 

 9月8日にホノルルにあるPunahou High School(以下、Punahou)にて同校対Kamehameha High School (以下、Kamehameha)の女子の試合を視察しました。Punahouと言えばオバマ元大統領の母校であることが広く知られています。ここでもさまざまな違いを経験することができました。

 

Punahou と Kamehameha の試合

 

 まずはテレビ放映について。高校生の試合でも多くの競技はローカルテレビで州内に放送されます。実況や解説なども春高バレーのそれと同じで本格的です。このことから観客とスポーツの距離がとても近く感じます。観戦していると「あれ? タイム長いなあ」と思い、スコアボードを確認すると1:45と表示されていました。おそらくテレビ放映にCMを入れるためだと推測されます。通常は30秒ですが、国際大会などでそれよりも長い「テクニカルタイムアウト」が導入されていたりします。これもスポーツが商業化した流れに伴う変化ですね。ちなみに、タイムアウト時のベンチの様子も日本と違いがあります。両チームともスタメンをベンチに座らせ、コーチが立って指示しており、ベンチメンバーがコーチの後方に並んでいます。日本と逆の光景です。

 

 コート内にもさまざまな違いがあります。公式ルールではリベロはサーブを打てませんが、こちらでは交代でコートインしたリベロの選手が、当然のようにサーブを打っています。ということは交代でコートアウトするミドルブロッカーは、試合でサーブを打つ機会がありません。またラインズマンは1人で2本のラインを担当します。つまりコート上には2人の線審しかいません。これは私が高校生のころから海外で目にしており、当時から効率的で何の問題もないと考え、自分のチームの紅白戦や練習試合に導入していましたが、日本ではなかなか浸透しませんでした。

 

 こちらでは高校の試合であっても常に入場料がかかります。日本でも春高バレーでは有料になりますが、こちらはいわば県大会クラスのリーグ戦でも有料になります。それでも400〜500人程度の観客数でした。また有料であるために、その対価に見合う演出も工夫されています。この辺りは「見せてやっている」ではなく「見ていただいている」「一緒に楽しむ」という文化を感じます。

 

 ご紹介したいくつかのルールは、ミドルスクール、ハイスクール、カレッジにおいてそれぞれのローカルルールとして違うところもあるようです。

 

 試合中、ふとベンチメンバー(写真のNo.11)を見ると、左耳に花飾りを付けていました。「ああ、おしゃれだなあ」と感心していると、隣に座っている男性スタッフも付けていました。なんだか心温まる光景です。これはハワイの文化の一つで、耳の花飾りは既婚か未婚かによって付ける位置が違うそうです。こういった花飾りからでも「文化を楽しむ」「バレーボールを楽しむ」「人生を楽しむ」といった精神が感じられ、素敵な体験でした。

 

花飾りを耳につけてベンチに座る選手とコーチ

 

 このような「違い」をご紹介すると、いろいろなご意見があると思いますが、9月15日現在、FIVB(国際バレーボール連盟)のワールドランキングにおいて女子アメリカ代表は1位、男子アメリカ代表は6位にランクされており、強豪国の一つです。日本の規律正しいスタイルを否定している訳ではありませんが、違った文化を知ることで自分たちの進化にもつながっていくのではないでしょうか。

 Mahalo.

 

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