第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」バレーボール競技(以下、栃木国体)の少年男子決勝が10月10日(月・祝)に宇都宮市清原体育館で行われた。愛知工大名電高、大同大大同高、星城高といった全国大会常連校の面々が結集した愛知県選抜は決勝こそ鎮西高単独チームの熊本県代表に2-3(26-24,18-25,21-25,25-20,11-15)で敗れたが、準優勝。それは、中学時代に夢半ばで散った自分たちの雪辱を果たす戦いの結果でもあった
今回の愛知県選抜12名のうち、中学3年生時にJOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学大会(以下、JOC杯)の愛知県代表に名前を連ねたのは10名。県全体から選りすぐりのメンバーが、再び集結した。
当時から、のちに令和元年度全日本中学生選抜入りを果たす笹本穏(現・愛知工大名電高)や細川晃介、伊藤蒼眞(ともに現・星城高)らはサイズにも恵まれ、JOC杯を前にした練習試合でも確かな力を証明していた。目指すは日本一、だが結果はベスト16に終わっている。
そのときの試合で「何もできなかったことが心残りでした」というのが細川だ。今夏のインターハイ県予選で敗れたことのショックは決して小さくなかったが、いざ栃木国体が選抜で構成されることを知り、その名簿に自分と、またJOC杯のときのチームメートの名前が並ぶのを見ると、気持ちは高ぶった。
「もう一回、このメンバーでやりたい。そして自分も一戦一戦、活躍したいと思って臨みました」
ふだんは全国大会出場を懸けて、しのぎを削るものどうし。とりわけ愛知県は予選が全国屈指のレベルの高さを誇る。けれども、いざ集まると雰囲気は抜群によかったといい、指揮した北川祐介監督(愛知工大名電高)も「みんなが『勝ちたい』気持ちでプレーしてくれました。監督として楽しかったですし、見ていて頼もしく感じました」と振り返る。本格的に始動したのは大会1週間前にだったというが、細川や東怜佑(星城高)、笹本らが中心となり攻守で高いレベルのバレーボールを展開。準々決勝ではインターハイで優勝した東山高単独チームの京都府を、準決勝では同3位の松本国際高単独チームの長野県を下し、失セット0で勝ち上がった。
熊本県代表との決勝では第1セットを先取しながら、徐々にサーブレシーブを崩される場面が増えてくる。当初は「ブロックで相手を上回ろう」(北川監督)という狙いから高さを優先した布陣を敷いていたが、第3セットからは守備力にたけた渡邉大和(大同大大同高)を先発で投入。立て直しに成功し、フルセットにもちこんだが、最後は熊本県選抜のアタックの前に屈した。
試合直後は、「日本一になりたかった、という悔しさが大きかったです」と細川。それでも解散時には「(県予選の)決勝で戦おう」と約束を交わした。
かつての仲間はライバルとなり、また仲間となって一緒に戦った。そして今、再びライバルに戻る。きたる春高県予選でも新しい友情物語が描かれるに違いない。
文/坂口功将
写真/山岡邦彦、坂口功将
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