第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」バレーボール競技(以下、栃木国体)の少年女子3・4位決定戦が10月10日(月・祝)に宇都宮市体育館で行われた。インターハイを制した金蘭会高と、四天王寺高による選抜チームの大阪府は、下北沢成徳高単独チームの東京都に3-2(18-25, 18-25, 25-19, 25-20,15-12)で逆転勝ち。準決勝で敗れるも切り替え、エースのサーブから勝機を見いだした
勝っても負けても、国体ラストゲーム。悲壮感を漂わせず、大阪府の選手たちは明るくその舞台を楽しんでいた。3・4位決定戦、2セットダウンから迎えた最終第5セット。相手のサーブがネットにかかり、試合終了の笛が鳴ると、コートに輪ができた。仲間を何度も力強く抱きしめた2年生エースの上村杏菜は「三冠を目指していたので、優勝できなかったのはすごく悔しいです。でも、3位と4位では全然違う。昨日負けたからこそ、次は負けたくない気持ちで戦い抜けたと思います」と笑った。
インターハイ女王として、目指した今季二つ目のタイトル。だが、前日の準決勝で就実高単独チームの岡山県に1-3で敗れた。ここ3年間で就実高に4度目の敗戦を喫し、三冠の夢は消えた。東京都との3位決定戦も、相手のサーブに押され、0-2と崖っぷち。第3セットも中盤までリードを許していた。
だが、上村にサーブが回ると、試合の潮目が変わった。両腕には「笑顔」「負けない!!」「やりきれ!」「打ちきれ!!」「平常心」という文字。マジックペンで書かれた同級生からのエールに背中を押されるように、力強くボールをたたいた。
「インターハイ予選でも四天(四天王寺高)に負けて、次の日の絶対に勝たないといけない試合の前に書いてもらっていたんです。それで調子がよかったので、今日も書いてもらいました。やっぱり自分の力だけやと勝ちきれないので」
16-17から強烈なジャンプサーブを放つと、リリーフサーバーで入っていた西川凜がディグでチャンスメイク。扇谷葵衣が2本ブロックを決めるなど、8連続得点で逆転した。「西川が入ってきたら安心できるし、自分が決めたときに小声で『かっこいい』って言ってくれて(笑) テンションが上がりますね」。エースはさらにギアを上げた。第4セットも18-16からこの日2本目のサービスエースを含む4連続得点で突き放す。8-7でコートチェンジした第5セットは、第3、第4セットに続いて投入された西川のサーブから3連続得点で勝利を決定付けた。
インターハイを制し「六冠を取りたい」と話していた上村は、次の目標を問われると即答した。
「二冠です! 今回で3位になってしまったので、次は自分たちがチャレンジャーとして上のチームを倒します。全力で全部の試合に立ち向かっていけたらと思います」
今大会は四天王寺高との選抜チームで臨んだが、第14回アジアU18(ユース)選手権大会MVPの大森咲愛や同メンバーの平野シアラなど、ベンチ外にも有望な選手がそろう。德本歩未香キャプテンは「インターハイ府予選では四天王寺高に負けているので、自分たちが油断して勝てる相手は大阪にいません。国体で出た課題に向き合って、春高で日本一を獲るためにまずは大阪府をしっかり勝ち切りたいと思います」。激しいチーム内競争を経た最強メンバーで、まずは春高予選に挑む。
文・写真/田中風太
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