中学生世代のクラブチームによる全国大会、「第25回全国ヤングクラブ男女優勝大会」(以下、全国ヤンクラ)は9月24日(土)~25日(日)に大阪府と和歌山県で開催された。チームによっては、いちばんの目標を今大会に定めるケースがあれば、ここで中学バレーを引退するケースも見られる。そんな中、京都匠ヤング(京都/男子)のキャプテン、江口昂太朗(桂川中〔京都〕3年)は誇らしげにメダルを首元にかけていた
目標には届かずも、最後は勝利で締めくくった京都匠ヤング
全国ヤンクラは例年2日間で行われ、初日は1グループ3チームによる予選グループ戦を戦う。そこでの1位が決勝トーナメント、2位は2部ブロックトーナメント、3位は3部ブロックトーナメントへ進み、それぞれ2日目に順位を決定する。
決勝トーナメントに進めずとも、下位ブロックトーナメントの勝者は表彰対象となっており、それぞれメダルが贈られるのもこの大会の特徴だ。予選グループ戦で敗れて日本一の道は閉ざされたとしても、“勝って締めくくる”ことができるのである。
3年ぶりの開催となった今年も全国各地から多くのチームが参加した中、初出場を果たしたのが京都匠ヤング。2016年から活動をスタートさせ、今年ついに念願だった全国の大舞台に立った。全国ベスト8を目指したものの、予選グループ戦で黒星を喫する。それでも最後は2部-Bトーナメントを制して、メダルを手にした。指揮した川瀬康資監督は選手たちの健闘をたたえる。
「3年生たちが目標を立てたものの、初日で負けてしまい2部に回ったのですが、気持ちをしっかりと切り替えていました。大会初戦ではすごく緊張が見られましたが、それもいい経験になったでしょうし、次のステップでもチャレンジしてほしいです」
表彰式のあとは、監督が選手一人一人にメダルを渡した。受け取った選手たちの顔からは笑みがこぼれたが、その喜びの輪の中でキャプテンの江口は目を赤くさせながら、仲間と抱き合った。
「僕は中学からバレーボールを始めたので、こんな全国の晴れ舞台に来られて、ほんとうにうれしかったです。全国ベスト8はかなわなかったのですが、最後はブロックトーナメントで優勝できたので『やりきった』思いでいっぱいです」
「プレーはそこまでうまくなくても」、自分のやれることを考えた
江口がバレーボールを始めたのは中学に入ってから。小学生の終わり頃に興味を持ち始めたが、入学先の桂川中に男子バレーボール部がなく、クラブチームへの入団を決めた。
京都匠ヤングには小学生チームもあり、そこから上がってくる選手もいる。小学生時代はいわゆる帰宅部だった江口は、経験がない中で競技に取り組んだ。結果的にレギュラー入りは果たせなかった。それでもユニフォームの番号の下にはキャプテンを示すラインが入っている。
中学3年目で自分たちのシーズンが始まった際、みんなで話し合ったすえに、キャプテンを務めることになった。江口は振り返る。
「中学からバレーボールを始めた僕なんかができるんかな、と思いました。キャプテンをやるには頼りない性格ですし、このチームを支えるとなると少し不安といいますか、どきどきしていました」
プレーのレベルからしても、常にコートに立つまでに至らない現実は自分がいちばんわかっていた。けれども、とことん夢中になれたバレーボールの魅力を表現したいと考えた。それが、仲間を励まし、ムードを盛り上げることだった。
今年5月、岡山県で開催されたPROGRESS CUPで江口は力強く口にしたものだ。
「自分はプレーがそれほどうまくないので、声だけでもいちばんを取ると思って、いつも必死に声を出しています。
それにバレーボールは励まし合うことが大切だと思っているので、ミスしてもいかに切り替えられるか。どんなピンチでも笑って、盛り上がるチームでありたいですし、自分がそうしたいと思っています」
チームメートから送られた「ほんまにありがとう」の言葉
リリーフでコートに入ると、江口の目はいっそう輝きを増す。周りに視線を配りながら、ラリーが終われば、仲間の肩や背中にそっと触れながら言葉をかける。
チームにとっての集大成だった全国ヤンクラでも、それは変わらなかった。「初日は全体的に盛り上がりきれなかった。なので、一回一回、チームメートにボディタッチすることで仲を深めて、そのつながりを力に変えたかったんです」と江口。自分がチームにできることを、最後まで貫いた。
そんなキャプテンと、京都匠ヤングはシーズンを完走した。エースの源蓮翔(大谷中〔京都〕3年)は「チームを盛り上げてくれるので、ほんとうにありがたい存在です」と感謝し、川瀬監督も「バレーボールが大好きで、たとえうまくはなくても頑張ってくれました」とほほえんだ。
メダル授与の列で、江口は源から「ほんまにありがとう」の言葉をかけられると、涙があふれ出た。
「このチームで、そして源というエースの副キャプテンと一緒にバレーボールができて、ほんまによかった。バレーボールをやって、一つ人生が変わったと思います」
京都匠ヤングが卒業していく選手たちに授けるのは「楽しもう。挑戦しよう。感謝しよう」という3つのモットーだ。楽しいバレーボールで、自分ができることにトライし、チームへの感謝で胸がいっぱいになった。そんな充実した時間を過ごせたからこそ、江口は次に踏み出す一歩を決めている。
「これからもバレーボールは続けます!! 高校は周りの高さやパワーもさらに違うと思うので、自分もパワーアップして張り合えるようになりたいです」
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
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