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小野寺太志、母校に帰る<高校生バレーボーラーに伝えたいメッセージ>

世界バレー直後の9月中旬

小野寺が母校・東北高を訪問

 

 

  「『春の高校バレー』はみんなが目指す場所、野球でいったら甲子園みたいなものですよね。あの舞台を経験できたのはすごくうれしかったです。会場の広さや、いろいろな高校が一堂に会して試合をする環境など特殊ですし特別な舞台だなと思うんです」

 JTサンダーズ広島のキャプテンとして、そして男子日本代表に不可欠な戦力として活躍する小野寺太志が、「春の高校バレー」についての思いを語る。

 

 小野寺は2022男子世界選手権を戦い終え、帰国して早々というタイミングの9月16日(金)、母校である東北高校(宮城県仙台市)を訪問した。大学のキャンパスを連想させるような広い敷地に校舎や体育館、グラウンドを構える同校に足を踏み入れると「やっぱり懐かしいですね」と笑みがこぼれる。

 今回の母校訪問は、契約ブランドである「ザムスト(ZAMST)」の協力があって実現したものでバレーボール部を指導する吉田康宏監督からの強い要望もあって、後輩たちの指導を行うことになった。

 

 

 

 すぐに着替えて体育館入り。ウォーミングアップをこなすと、後輩たちの指導を開始する。コート外では柔和な表情が印象的な小野寺だが、練習が始まると顔が引き締まってバレーボール・モードに。真剣な表情で練習を見ていくと、気づいたこと、気になったことを一人一人に諭すかのように伝え、上手くできると笑顔で親指を立てて見せ、後輩たちを喜ばせる。

 

 

 

 小野寺が特に念入りにアドバイスをしていたのがミドルブロッカー陣だ。練習後、実際に教わった選手たちに感想を聞くと「ブロックの待ち方について教えてもらいました。自分の待ち方だと重心が安定しないよ、と的確なアドバイスをいただきました」「課題のスパイクについて、1枚ブロックに付かれたときの打ち方、入り方について教えていただき、勉強になりました」と大先輩の金言に手応えを感じた様子。


 

 進んで助言を求めにいっていた小山暖人キャプテンは「ミドルブロッカーとしてのブロックの付き方、クイックのスピード、打ち分けについて、世界レベルの内容に触れられて勉強になりました。個人個人に合っているフォーム、ステップがあるとも教えてもらったので、自分たちのステップを確立させてブロックからリズムを作っていきたいと思います」と同様に貴重な学びになった模様。そして、「日本一という目標を掲げている中で、インターハイではベスト16という結果でした。力を出しきれませんでした。教えていただいたことも踏まえて全員で集中して、教え合い、意識しながら、目標に向かって戦っていきたいです」と語ってくれた。

 

 

 

忘れられない高2の春高バレー

「あの負けがあって今の僕があると思います」

 

 今や日本代表の中軸と言える小野寺が、本格的にバレーボールを始めたのは、高校時代からだったことはご存知の方も多いはず。「春の高校バレー」2002年大会(当時は選抜大会)覇者としても知られる名門校で小野寺は「基礎の基礎からこの学校で習い」、1、2年生時と「春の高校バレー(全日本高等学校選手権大会)」に出場。さらに2年生時からはユース男子日本代表に選出され、石川祐希(イタリア/パワーバレー・ミラノ)や大宅真樹(サントリーサンバーズ)、髙橋健太郎(東レアローズ)、永露元稀(ウルフドッグス名古屋)たちと共に世界を相手に戦っている。

 

 

   

 当時は、どんな高校生だったのだろうか?

質問してみると、「バレーボールしかしてないと言っていいくらい、ほとんどバレーがメインでした。授業のカリキュラムなども部活動を優先してくれるような学校だったこともあります。いろいろな場所に合宿に行きましたし、もちろんユース代表だったりもあって、何が一番の思い出かというと一番にバレーと出てくるくらい。本当に休みなくバレーをしていたなと思います」と、とにかくバレーボールに明け暮れていた高校時代だったと笑顔で返してくれた(また当時から共に戦っていた石川や大宅、髙橋といった同世代の存在について聞くと「気心知れているというか、付き合いも長いし、何でも話しやすい関係なのでやりやすいし、頼もしいなと思います。知り合って、もう10年ですね(笑)」と答えている)。

 

 “みんなが目指す場所”と語ってくれた「春の高校バレー」での思い出については、「一番は、やっぱり高校2年生の時の最後の試合ですね。(3回戦で)東洋高(東京)と戦って、1学年上にいた大エースがすごく頑張ってくれたのですが、第1セット序盤こそリードしていたけど、終盤に逆転されて、そのままセットを落として負けてしまったんです。簡単に勝てなかった悔しさもあったし、もっと上に行けたという思いもありました。悔しい思いをして帰った印象があります。涙も流しましたね。本当に悔しかったです」と、悔しさが印象的だったと振り返った。

 

 

 しかし、その悔しい思いは、自身を高める糧になる。

「自分の中に、何も達成できていない、という思いがずっとありました。そういった思いがあったから、そのあとの大学やVリーグ、日本代表で頑張れたんだと思います。もし、あそこで勝っていたら達成感もあったかもしれませんが、その後も頑張りきれず。手を抜いた状態というのか、もっと成長できるのにもったいないという状態でプレーをしていたかもしれません。今、振り返ってみると、あの負けもいい経験になったと思いますし、あの負けがあったからこそ今の僕があると思います」

 

春の高校バレー予選に向けて

「思いをぶつけて頑張ってほしい」

 

 秋となり、各都道府県で春の高校バレー出場校が続々と決まっていく時期を迎えた。かけがえのない高校時代をバレーボールに費やす全国の後輩たちに向けてのエールをお願いすると、小野寺は快く応えてくれた。

 

 

 「高校生という期間は短くて、僕らは春高には2度と出られません。目指す人が多い一番大きな大会なので、そこに出られるよう全力を尽くしてください。そのためにもただ精いっぱいやるだけではなくて、ここがよくなるはず、ここが足りないなど、しっかり自分たちで考えながら練習してください。そうしたほうが、練習の効率もよくなるし、頭を使いながらやることで上達のスピードも変わってきます。特に3年生にとってはラストの大会になり、目指している思いはみんな強いと思うので、その思いをぶつけて頑張ってほしいです。高校生の皆さん、今年度最後の大きな大会に出場できるように全力で頑張ってください」

  

 小野寺の母校・東北高校が出場する宮城県代表決定戦(第75回全日本バレーボール高等学校選手権大会兼第45回仙台放送杯争奪宮城県大会)は、今日10月27日(木)〜29日(土)と3日間に渡って開催され、代表校が決定する。

もちろん、宮城県だけでなく、日本全国の高校生の戦いに注目すべきである。小野寺のメッセージは“思いをぶつけて頑張ってほしい”。各地で行われる高校生バレーボーラーたちの熱き戦いに注目である。

 

 

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