「この合宿で自分を変えたかった」福岡女学院中 甲斐千尋の覚悟と全国中学生選抜合宿で起こした行動
- コラム
- 2022.11.09
懸命に練習に励む
練習時の号令係に迷わず手を挙げた
合宿が始まると、参加者の中から代表して、練習の開始と終了時に号令をかける役を決める場が設けられた。誰にするか、スタッフから立候補を促される。すかさず挙がった手の主は、甲斐だった。
「やりたい気持ちがあっても私は毎回周りを見てしまうから。でも、周りを見ていて、ほかの子に役が回って自分が悔しい思いをするくらいなら、『私がやってやろう!!』と。その姿勢はプレーに生きてくると思うし、自分から発言すれば気づけることもあると思ったので、もう迷いなく手を挙げました」
自身が明かすに、中学でもリーダーシップを取ろうとしていた。だが、チームではキャプテン、副キャプテンに就くことはなく、「やりたい気持ちがあったけれど、なれなくて悔しい思いをした」のが本音だ。それをここで晴らそうとしたわけでは決してない。選考の場とはいえ、参加者たちは一つのグループだ。「みんなで頑張ろう、という気持ちを出すために、自分ができることをやろう」という強い決意がそこにはあった。
自分がここにきた意味は? そう自分に問いかけ続けた。その答えを行動に移した。
それが、自分から動くこと、だった。
グループごとに分かれた練習の合間で、積極的にコミュニケーションをとる姿が見られた
「学ぶことがたくさんあった」選抜合宿
練習の始まりと終わりに、甲斐の声が響き渡る。「自分自身、気持ちの面ですごく変わります」とほほえむ。
全国から選りすぐりのメンバーが集まった場所は刺激に満ちあふれていた。
「周りがハイレベルな選手たちばかりで、生活面からプレーまで『この子すごいな』と思うことがたくさん。これまで知らなかったクラブチームの選手との出会いもありましたし、金蘭会中(大阪)だったり学校ではライバルだった選手も怖い印象だったけれど(笑) めっちゃ話しやすいな、とか。
それに今までは日本一が目標でしたが、この合宿は世界を見据えて『日本のバレーボールを背負っていく』ためのステップの場。そう思うと、自分は攻撃面の課題や守備でも拾えないボールがあることを痛感しましたし、逆に、それができる選手もいることで『この選手のここを生かしたら自分にもできるかな』と試行錯誤できました。
学べたことがたくさんあるので、自分にとってこれからのバレーボール人生ですごくいい経験になっていると思います」
自分を変えたかった。そして、変わろうとした。この先、彼女がどんな姿へ成長していくかは、まだ誰にもわからない。それでも言えることは、新しい扉をその手で開いた、ということである。
強い思いを胸に、次のステップを踏み出した
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
全国中学選抜第一次合宿の模様や参加選手の声は『月刊バレーボール』2022年12月号「中学生の話題」に掲
【関連記事】
全国中学選抜強化第一次合宿を実施 最高到達点340㎝超えの逸材も参加
「バレーボールで人生が変わった」京都匠ヤングの江口昂太朗が中学生活最後の全国大会で見せた笑顔の理由 帰宅部から主将へ
大森二中男子バレーボール部が湘南で取り戻した「好き」の心。コロナ禍を乗り越えて
【次ページ】全国中学選抜強化第一次合宿その他フォトギャラリー(15枚)