第75回全日本高等学校選手権大会(春の高校バレー)の千葉県代表決定戦が11月6日(日)に明海大学浦安キャンパス(千葉)で行われた。女子決勝は、敬愛学園高が市立船橋高に3-2(25-17, 14-25, 26-24, 17-25, 15-7)で勝利。インターハイ県予選決勝のリベンジを果たし、4年連続12回目の優勝を飾った
優勝し、感情を爆発させる敬愛学園の選手たち
この瞬間を待っていた。大きな弧を描いたサーブが、相手コートに弾む。優勝が決まり、コート中央に歓喜の輪ができると、控え選手も一斉にコートに駆け出した。インターハイ予選では、決勝で市立船橋高に敗れ、4年ぶりに女王陥落。チャレンジャーとして臨んだ舞台でフルセットの末に勝利し、上原典人監督は「『3年生の意地』をずっとテーマに掲げてやってきて、それに1、2年生が呼応してくれました。チームが一つになって、1年間のベストゲームができたと思います」と胸を張った。
インターハイに出場することが当たり前になっていた選手たちにとって、初めて過ごした長い夏。西村彩星キャプテンは「どこかで『勝てる』という変な自信があったと思います」と胸の内を明かす。予選の敗戦後は西村キャプテンとセッターの大木奈々がレギュラー落ちを経験。「ほんとうに毎日怒られて、苦しくて。つらいことしかなかった」と振り返るものの、3年生を中心に食らいついた。「負けてからは挑戦者の気持ちで、攻め続けようという思いに変わりました」。
土壇場で力を発揮したのは、その夏に磨き上げた武器だった。1-1で迎えた第3セット以降、得点源のミドルブロッカー保髙愛がギアを上げる。相手のブロックを弾き飛ばすスパイクで得点を量産。第3セットは中盤に保髙のスパイクで逆転すると、ジュースにも持ち込まれても、ブロックアウトとブロックでセットを奪取。2-2で迎えた最終第5セットには7得点をあげる大活躍で勝利に導いた。「この夏休みで教え込まれた、短いトスを(ブロックに)当てて出すことがしっかりできたと思います」と手応えを語った。
得点源としてチームを引っ張った#2保髙(敬愛学園)
「きょうは5㎏やせるから!」と宣言し、選手とともに声を張り上げ、サイドライン沿いを走り周った上原監督はしみじみと語った。「こんな重い試合を久しぶりにやったので、子どもたちにとってはすごくいい経験になったと思います。それも、市船(市立船橋)さんがあれだけいいチームをつくったから。去年も一昨年もうれしかったですけど、今年はほんとうにうれしいですね」。単独チームとして出場した国体で5位になり、刺激を与えてくれたライバルに感謝した。
試合後には3年生が保護者と喜びをわかち合った。頭をなでられ、表情を緩めた西村キャプテンだったが、すぐに気を引き締めた。「春高はこのメンバーで戦える最後。悔いが残らないように一戦一戦勝っていきたいです」。夏の敗戦を経て大きくなったチーム。もう後悔するつもりはない。
保護者席へ勝利を報告する#1西村キャプテン(敬愛学園)
市立船橋高 全国大会で自信をつけるも「春高予選で勝てず悔しい」
4年ぶりにインターハイに出場し、単独チームで臨んだ国体では5位と結果を残してきた市立船橋高は、全国の舞台に届かなかった。セットを取られたあとの第2、第4セットと好セッター後藤美咲のトス回しからスパイカー陣が力を発揮。エース川嶋夏未、サウスポーミドルブロッカー尾﨑俐名エジンネらがスパイクを決め、試合を振り出しに戻した。
しかし、第5セットに保髙のスパイクを止められずに敗戦。2度の全国大会を経て「個々が自信をつけられたと思っていて、今大会でも出せていたと」と語りながらも、「やはり春高予選で勝ちきれなかったのは悔しいです」と振り返った田原春菜キャプテン。「すごく内容の濃い1年間だったので、経験できたことを次の代にもつなげて、絶対優勝してもらいたいです」と思いを託した。
文/田中風太
写真/石塚康隆、田中風太
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