第75回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)の埼玉県予選男女最終日が、サイデン化学アリーナ(さいたま市記念総合体育館/埼玉県さいたま市)で11月13日(日)に行われた。その女子準決勝で涙を飲んだ狭山ヶ丘は、エースの菊地風香が最後まで腕を振り切った。
手の甲にしるされた2つの文字とともに
初の県大会優勝を目指した狭山ヶ丘。春日部共栄との準決勝では第1セットを先取されながらも、第2セットを奪い返す。セッターの埴岡真花那がセンターエリアやライト側の攻撃を絡めた組み立てで得点を演出するなど、「自分たちのかたち」(引地美果監督)から流れは手にしたかのように見えた。
だが、第3セットは中盤以降でレシーブにほころびが生まれ、14-15から喫した4連続失点が痛手となり、準決勝敗退に終わった。そんな中、試合の終盤でボールが上がったのがエースの菊地風音だ。たとえ相手ブロックに捕まっても、力強くボールをたたく。それは、過去の自分を振り払う決意の表れだった。
「いつもの練習試合だと逃げていた場面でした。けれども、“今日は絶対に逃げない”と決めていましたし、ここで自分が逃げ出したら絶対に後悔が残ると思ったので。最後まで打ちきる気持ちでプレーしていました」
メンタルの弱さは自覚していた。落ち込んでしまうと、チームが喜びたい場面でも、うまく感情が出せない。そんなエースを見捨てずに、周りは背中を押し続けた。
大会最終日、菊地の両手の甲にはマジックで文字が書かれていた。左手は、初の優勝を目指す「勝」。そして右手はキャプテンが「みんなのことを信じているから」という思いを込めて、「信」としるした。菊地は言う。
「劣勢になった場面も、この手を見て『絶対に勝ちきるんだ』。そして私も『フォローがいる』と信じて、打ちきることができました」
目標には届かなかった。それでも、エースの思いとチームワークは、最後までコート上で光り輝いていた。
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
■女子準決勝結果
春日部共栄 2-1 狭山ヶ丘
(25-22, 20-25, 25-20)
細田学園 2-0 正智深谷
(25-7, 25-14)
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