第75回全日本高等学校選手権大会(春の高校バレー)京都府代表決定戦が11月19日(土)に島津アリーナ京都(京都)で行われた。女子は京都橘高が北嵯峨高に3-2(25-17,20-25,25-21,28-30,15-7)で勝利し、2年連続25回目の本戦出場を決めた
京都橘高の選手たちに悪夢がよぎった。北嵯峨高に敗れ、21年続いた本戦出場がストップした2年前の決勝と同じフルセット。しかも、会場は同じ島津アリーナ。だが、当時もユニフォームを着ていた渡辺彩香キャプテン(3年)は、セット間に前を向き続けた。「攻め続けるしかないよ! 気持ち勝負、気持ち勝負! 絶対に逃げたらあかん!」。
心が折れてもおかしくないチーム状況だった。守護神の江崎理媛(2年)が8月の国体近畿ブロック大会後に右ヒザの前十字靭帯断裂と半月板損傷の大ケガ。国体では代わって平野佐奈(1年)を起用したが、その平野もヒジの痛みでベンチを外れた。急遽白羽の矢が立ったのが、本職はオポジットで、リベロ経験がない渡辺キャプテン。さらに、ミドルブロッカーの立石裕美子(2年)も3日前までひざを痛めており、万全ではなかった。三輪欣之監督は「ケガ人がいる分、こっち(京都橘高)のほうが少し厳しい面もあるように思いました」と振り返る。
指揮官の予想どおり、一筋縄ではいかなかった。第1セットは序盤の5連続得点でペースをつかんで奪ったが、第2セットは相手の1年生を止められず、中盤に逆転を許した。終盤にエース坂口澪奈(3年)のスパイクで抜け出して再びセットを奪い、優勝に王手をかけたものの、徐々に北嵯峨高の守りが粘り強さを増していく。第4セットはリードを許した序盤にセッターを川岸夕紗(1年)に代え、追い上げを図ったが、ジュースにもつれ込む接戦の末28-30でセットを落とした。2年前は14-16で涙を流した、フルセットに突入した。
それでも「2年前の先輩方も見てくださっていると思っているので、絶対に戦いきって、成長した姿を見せようという気持ちでした」と渡辺キャプテンが語るように、第5セットは立ち上がりから強気で攻めた。石倉想(2年)がチームトップの26点目となるスパイクやサービスエースを決め、 7-3とリードを広げた。そのまま勢いに乗ると、9-7からミドルブロッカー永田みなみ(3年)のスパイクや坂口のブロックなどで6連続得点。優勝が決まると、渡辺キャプテンは、涙を流す坂口に抱きついた。
「2年前に負けたときも自分と坂口が1年生でユニフォームを着ていて、自分たちがこのチームを引っ張っていかないといけないと思っていました。春高の切符をつかむために、苦しいときもいっぱいあったんですけど、キャプテン、副キャプテンとして2人で乗り越えてきて。最後に点が入って坂口が涙しているのを見て、思わず抱きついてしまいました」
石倉に次ぐチーム2位の25得点だった坂口は、試合が進むにつれ、相手のブロックに捕まるケースが増えた。「2年生が活躍してくれたので、感謝の気持ちしかなかったです」と主役の座を後輩に譲ったが、その目は燃えている。「目標は日本一です。どんなときでも頼られて、全国でも通用するエースになりたいです」。
三輪監督が「ちょっと休ませて、ケガ人を復帰させて、どのかたちでいくかを決めたいです」と語るように、まずはチームの立て直しが優先。万全の状態で、夢舞台では大暴れする。
北嵯峨高
1年生の活躍が光り
未来につながる敗戦
北嵯峨高は2年ぶりの本戦出場こそ逃したが、将来につながる敗戦だった。試合の流れを変えたのは、第1セット中盤に投入されたセッター相根心愛(1年)のトスワーク。いきなりツーアタックを決める強心臓っぷりを見せた一方で、ルーキーらしからぬ冷静なトスワークで攻撃を演出した。エース佐々木みそらキャプテン(3年)やその妹で対角を組む佐々木るな(1年)のサイド攻撃だけでなく、チーム最多の21得点をマークした吉岡夢依(3年)や甲斐心美(1年)の両ミドルブロッカー、オポジット澤井萌乃(3年)の力も引き出し、フルセットに持ち込んだ。
吉岡とともに1年生時に春高を経験した佐々木キャプテンは「1年生とは思えない勝負強さというか、苦しいところで拾ったり、決めてくれたので、ほんとうに感謝です。練習に対する姿勢を背中で見せられたと思うので、その気持ちを引き継いで、来年は必ず春高にいってほしい」とエールを送った。
1年生時に春高に出場し、その後も主力としてチームを引っ張った佐々木キャプテン(北嵯峨高)
文・写真/田中風太
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