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春高2025

全日本インカレ 優勝目指す順天堂大男子「組織力で日本一に」

  • 大学生
  • 2022.11.27

 

 

 もうすぐ大学日本一を決める熱い一週間が始まる。今年の「全日本インカレ」(全日本大学男女選手権大会)は、11月29日(火)から12月4日(日)まで、東京都内の各会場で開催される。

 

 昨年の全日本インカレ男子では、早稲田大が5連覇を成し遂げ、脚光を浴びた。その決勝で涙を飲んだのが順天堂大だ。決勝進出は、優勝した2010年以来11年ぶりのことだった。ベスト8、ベスト4、そして準優勝と、近年、着実に順位を上げてきている順天堂大だが、ここまでの道のりは簡単なものではなかった。

 

 

12年ぶり3度目の優勝を目指す順天堂大男子

 

“二人三脚”で脱した低迷期

 

 2010年、順天堂大は日本一に輝いたが、それ以降、戦績はゆるやかに下降線をたどっている。全日本インカレの決勝は遠のき、関東1部リーグ戦でもBクラスに沈むことが続いた。ついには、2部リーグへ転落の危機も味わった。

 

 そんな伝統校の危機に、“再建”するべくやってきたのが飯塚初義監督だ。2017年の就任当初を振り返り、「部員たちは『このままではいけない』と思いつつ、どうしていいかわからずくすぶっていました」と話す。

 

「深夜にアルバイトをしたあと寝不足のまま練習に出てくる部員もいたし、生活の乱れが戦績に現れていましたね」。飯塚監督は、まず部員たちの生活面の立て直しから着手した。「あいさつ、食事、睡眠といった当たり前のことを、当たり前にできるようにかなり要求しました。勝てるようになると、自然と自主性や自律性が出てくるものですが、それまでは、ある程度こちらが主導しました」。

 

 生活指導と並行して、飯塚監督が重点を置いたのは、部員たちとのコミュニケーションだ。「一人一人の思いを受け止めることに務めました。何か言ってくる部員がいたら全部聞いて。言いたいことがあるということは、それだけ真剣だってことですから。それから、『でもここはブレないで』ということを都度、伝えていきました」。こうして、監督と選手たちの“二人三脚”が始まった。

 

 生活が整い、監督と部員たちの信頼関係が確かなものになってくると、徐々に戦績もついてくるようになった。「いろんなタイプの子がいてね。みんな個性的で大変でしたよ、ここまでくるのは」と軽やかに笑う飯塚監督。就任から5年。チーム一丸となって一歩ずつ前へ進んできた順天堂大は、昨年末、再び全日本インカレ決勝の舞台へ舞い戻った。

 

 

部員たちに語りかけるように指導する飯塚監督

 

秋季リーグ戦で見えた“けがの功名

 

 ただ、足元を見ると順風満帆とは言い切れない。今年の春季リーグ戦は4位、黒鷲旗杯全日本男女選抜大会では高校生チームに屈し、東日本インカレはベスト16で敗退。秋季リーグ戦は主力に故障が相次いだ影響が大きく、8位で終えている。

 

 しかし秋季リーグ戦では収穫が2つあった。一つは、2年生のアウトサイドヒッター花村和哉がベストスコアラー賞を獲得したことだ。チームは下位だったが、上位チームや上級生を抑えて受賞し、決定力の高さを示した。また、途中からはけがで戦線を離れた梶原由哉に代わってオポジットも務めあげ、戦略の幅を拡大させた。

 

 もう一つは、クイックを主体としたコンビを展開できたことだ。4年生セッターの茂太隆次郎は、トランジションで強気にクイックを活用。秋季リーグ戦終盤に迎えた、今季ここまで二冠の東海大戦や早稲田大戦ではこのかたちが機能し、セットを奪取している。結果的に敗れたが、キャプテンでミドルブロッカーの岡野恵大は、この2戦について「セッターとのコンビが合うようになってきていることが大きい」と述べた。 

 

 茂太自身は「例えば花村はジャンプ力があるから高めに。染野(輝)は速いトスが得意で、ミドルブロッカーも本当に全員が違っています。一人一人の違いをよく理解して、そこを合わせようとしてきました」と、コンビの成熟について話す。

 

「茂太、クイックで切る(得点する)のが好きなんですよ」と岡野。「(ミドルブロッカーである)自分が使えてくると、あいつ自身もノッてくるんです。レシーブが多少割れ(ネットから離れ)ても、強引にでもトスをアタッカーまで『持ってこられる』。そこがあいつの強みです。だから思い切り跳べる」と胸を張った。

 

 互いを理解し、信頼し合うことで強くなる。こうして戦うスタイルは、飯塚監督が“してくれたこと”から、選手たちが学び、獲得したものだ。

 

 

練習中、何度も集まって課題を確認する

 

日本一になるために必要なもの

 

 飯塚監督は言う。「実力や努力はもちろん必要です。ただ、日本一になるには、それ以外の、チームの団結など、気持ちが一つになるという要素がないといけない。この子たちには、それがある」。練習に励む選手たちを見て、「この子たちには、いい景色を見させてあげたいですね」とこぼすその表情は、マスク越しでもわかるほど穏やかだった。

 

 岡野は誓う。「ほかの大学の中には、日本代表選手を擁するチームもあります。うちにはそういうスター選手はいないし、際立ったキャリアの選手もいません。でも、僕たちがいちばんです。コミュニケーションを大切にして、組織力で日本一になります」。

 

 順天堂大男子の日本一への挑戦は11月29日の1回戦、武蔵野の森総合スポーツプラザ(府中市)で行われる広島大戦からスタートする。この物語の行方を、ぜひ会場で目撃してほしい。

※一部、一般チケットで入場できない会場あり

 

 

声をかけ合う#1岡野キャプテンと#17花村。後ろには#4茂太の姿も【写真/魚住貴弘】 

 

取材/淺井恭子

 

 

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