2022-23 VリーグのDIVISION1 WOMEN(V1女子)では上位勢が熾烈な争いを繰り広げている。中でも攻守で充実気配の埼玉上尾メディックスは、新人ミドルブロッカーの山中宏予が抜群の笑顔とフレッシュなプレーを披露している。
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大久保茂和 新監督も「100点」と評価
11月26 日(土)、大田区総合体育館(東京)。ヴィクトリーナ姫路をストレートで下した埼玉上尾からは山中宏予がVリーガー・オブ・ザ・マッチに選出された。そのコートインタビューで山中は「私自身、3度目のスタメン。今日がどの試合よりも調子がよかったと思います」と照れくさそうに口にした。
調子がよかった理由を試合後に聞いてみる。
「スタメンだったこれまでの2試合とは自分自身、気持ちの変化があったと思っています。どこか相手チームに対して、圧倒されている部分があって、自分の攻撃が通らなかった場面で切り替えが遅かったのが反省でした。
それはいちばんもったいないな、って。今日の試合は正直緊張もしていましたが、練習でやってきたことをしっかりと出せれば勝てる、と信じて臨みました。一緒にコートに入ってくださる方々は、安心して信頼できるメンバーばかり。私は自分のできることに集中しました」
いざ試合ではチームの最初の得点をクイックで決めると、ゲームを通して両チーム最多4本のブロックポイントをマーク。大久保茂和監督は「就任1年目なので記者会見に慣れていなくて…、褒めちゃいけないんですかね」と笑いながらも、山中の出来について「100点だと思います」と目尻を下げた。
AVCカップでベストミドルブロッカーに輝く
“それは、もったいないな”
これは山中のモチベーションの源でもある。今年、山中は女子日本代表にも登録され、8月にはAVCカップに出場。全試合スタメンで起用されると日本の優勝に貢献し、自身も大会のベストミドルブロッカーに選ばれた。そこでも、前向きな気持ちで臨んでいた。
「今までは大学がプレーする舞台だったので、海外の選手との対戦を体験する機会がありませんでした。ですが、そこで引け目を感じてしまうともったいないな、と再認識しました。
それに、AVCカップを戦うために設けられた、いわば即席チームなだけに、少しでも引いてしまえばチームとしてもまとまれないと感じたので。『私はこういう選手です』という姿勢をしっかりと出して大会に入りました。結果的に、自分もこれだけできるんだ、と肌で感じられましたし、視野がすごく広がりました」
大会を終えてチームに合流すると、大久保監督の目には「ほんとうにモチベーションも志も高く取り組んでいる」姿が映った。チームのミドルブロッカーには、攻守で高い貢献度を示す在籍5季目のサンティアゴ・アライジャダフニやベテランの青柳京古ら実績ある面々が並ぶ中、即戦力ルーキーとして食い込み、シーズン序盤とはいえ指揮官も「もっともっとチーム内での競争力が高まってほしい」と期待を寄せた。
「自分の想像を超えてきた」これまでの競技生活
山中のキャリアを振り返ると、小学生の頃から身長が高く、興味を持っていたバレーボールを本格的に部活で始めたのは中学から。3年生時にはJOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学大会の埼玉県選抜入りを果たし、卒業後は県下の強豪・細田学園高に進学。やがて国体メンバーや全国高校選抜にも選出されている。
けれども、高校時代の彼女はこう語っていたものだ。
「中学の頃は、こんな高校生活を送るなんて全然想像していませんでした。『高校生になったら何しているかな~、化粧しているかな』なんて考えていたんですけど、まるで違う道に(笑) 中学も高校も自分の想像を超えてくるので、それはある意味、おもしろいです。だからこそ、いい経験もできるし、いろんなところでたくさんの仲間ができた、といつも思うんです」
体は大きかったが、小学生の頃は遊びでバレーボールをしてみても「ボールを手でつかんで、ドッジボールをしている感じ」(山中)。中学校も決して強豪ではなかった。
それでも、彼女のポテンシャルを見初めたバレーボールの神様がきっと“それは、もったいないな”と感じて手招きし、その道を歩んできたからこそ今があるに違いない。
高さとパワーで勝負し、チームに貢献する
11月26日の姫路戦、セッターの岩崎こよみは先制点を許してからのチームの1点目を山中に託した。その理由は、「姫路はコミットも仕掛けてくるチームではあるけれど、ブロック枚数が1枚なので宏予なら決めてくれると思った」。その山中について、このように岩崎は続けた。
「打点の高さが魅力だと思いますし、ブロックはチーム内でも1、2を争う技術があるなと。アタックはまだまだ伸びしろがありますが、高さやコースの幅はルーキーにしては頼もしいと感じています」
山中本人も、自分の強みと役目を理解している。
「私は身長180㎝で特段高い選手ではないと思っていますが、それでも高い位置で勝負できるんだ、と。パワーと高さで挑んで、相手にとって嫌な選手になりたいと思います」
例年以上にコート上での一体感を伺わせ、雰囲気のよさが印象的な今季の埼玉上尾。その中でも、とりわけポジティブな山中の笑みがキラリと光る。
その笑顔を見ないなんて。それは、もったいない!!
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
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