2022-23 Vリーグはすべてのカテゴリーで年内の戦いを終えた。V2男子で現在、7勝1敗で首位に立つのはヴォレアス北海道。昨季はV・チャレンジマッチ(入替戦)に進み、悲願のV1昇格まであと一歩に迫った。そのチームを今季、セッターとして操るのが山岸隼である。
VC長野に内定選手として加入し、ヴォレアスと対戦も
11月5日、2022-23 V2男子開幕戦。ヴォレアスは大同特殊鋼レッドスターにストレート勝ちを収め、シーズンのスタートを切った。チーム創設時から目指すV1の舞台へ再び歩みを始めたわけだが、その顔ぶれはこれまでとはまるで違う。昨季限りでエースの越川優(現役引退)、リベロの渡辺俊介(ブカレスト〔ルーマニア〕へ移籍)そして、セッターの浜田翔太(退団/移籍希望)といった面々がチームを去ったからだ。
昨季に続いてキャプテンを務める佐々木博秋も「新生・ヴォレアス」と表現する。しかも、開幕戦を戦ったオーダーは「練習試合でもプレシーズンマッチでもやったことがない」(佐々木)ものだった。
このオフシーズンには、V1のサントリーサンバーズに所属する樫村大仁のレンタル移籍も含め、新外国籍選手のマキネン・ペェトゥ(フィンランド)など積極的な選手補強を敢行した。その中の一人が、セッターの山岸隼だ。
山岸は昨季、内定選手としてV1のVC長野トライデンツに加入し、V・チャレンジマッチではヴォレアスと対戦している。2日間でともにフルセット、最終的に得失点差でVC長野が残留を果たすという壮絶な試合の当事者だった。
チームの課題をクリアにするうえで期待の戦力
その山岸をヴォレアスのエド・クライン監督は高く評価していた。今年9月の入団会見で、このように語っている。
「大学時代から彼のことは知っていましたし、V・チャレンジマッチを通して、さらに知ることができました。年齢による不足な点はありますが、経験を重ねていけばV1レベルで十分に戦える選手になれると思いますし、ここでさらに成長してくれると期待しています」
サイドアタッカーだけでなく、センターエリアからの攻撃を果敢に絡める山岸のトスワークは、ヴォレアスが望んでいた武器でもあった。クライン監督は昨季を踏まえて「オフェンスの改善」をテーマに掲げ、とりわけミドルブロッカーの攻撃力向上を目指した。樫村や井上仁(FC東京〔現・東京GB〕から移籍)らミドルブロッカーを加えたのも、そうした考えが伺える。そして山岸も自身の強みを自覚している。
「入団前からヴォレアスはアウトサイドヒッターにとても力がある印象でした。そこに自分が入ることで、ミドルブロッカーの強化にもつながりますし、佐々木選手、張育陞(チャイニーズタイペイ)選手をさらに生かせると感じていました」
型にはまらないプレーを目指す
本格的にチームに合流したのが夏ごろで、そこからリーグ開幕まで決して時間は長くなかった。それでも勝利を収めた開幕戦後、指揮官は新司令塔を手放しで称賛した。
「とてもよかったです! 戦術をしっかりと遂行してくれました。いくつか新しいことも試してくれましたし。新セッターとして周りと合わせた時間がそれほど長くないことを踏まえると、中身としてはよかったと言えるでしょう。
彼は攻撃の選択肢を絞ることなく、どこでもトスをあげて非常にバランスがとれている。落ち着いて、戦術を遂行できるセッターだと思っています」
入団会見で山岸は加入の理由について、「自分が成長できると感じた」と語っている。入団してからも、その実感を抱いている様子だ。
「『型にしばられない』がエド(・クライン監督)の理想です。それに、ここではこれだ、と型にはまらないのは自分の理想でもあるんです。入団してよかったと感じています」
Vリーグに吹き込む北風に乗って、山岸はさらなる成長を誓う。
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
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【ギャラリー】熱さ全開! “新生”ヴォレアス北海道 2022-23シーズン〔20点〕