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春高2025

「結」の心で躍進 神戸親和女大、初の全日本インカレベスト4

  • 大学生
  • 2022.12.16

 

 

#30が大森主将。全身で自分を表現した

 

 「大学バレーがこんなに楽しくてよかったのかな…」。戸惑うように、でも幸せそうに。神戸親和女大のキャプテン、4年生の大森菜月美は小首をかしげて微笑んだ。

 

多彩な攻撃を武器に四強入り

 

 11月29日(火)から行われた全日本インカレ(全日本大学男女選手権大会)は12月4日(日)、男子は筑波大、女子は東海大の優勝で幕を下ろした。男子では、昨年準優勝の順天堂大が2回戦で姿を消し、6連覇を目指す早稲田大が準決勝で敗れるなど波乱も多かった。一方の女子で台風の目になったのが、関西1部リーグ所属の神戸親和女大だ。

 

 昨年は筑波大に敗れベスト16だった神戸親和女大。今年、準々決勝では鹿屋体大にセットカウント3-1で勝利し、ベスト4に名を連ねた。続く準決勝で女王東海大に敗れ、3位決定戦でも福岡大にフルセットの惜敗。それでも歴代最高順位だったベスト8を更新し、関西勢としては2012年の京都橘大以来、10年ぶりのベスト4入りを果たした。

「夢みたいというか…。この1年間、(全日本インカレの)ベスト4を目標にやってきたので、達成できてほんとうにうれしい。関西(のチーム)からベスト4に入れたこともうれしい」と大森は話した。

 

 神戸親和女大の強さは、攻撃パターンの多彩さにある。4年生の山下ともがブロードに走り、得点を重ねる。相手ブロックの意識が山下に集まると、次はレフトから大森が決める。3年生の六車葵晴の強打は鋭くバックアタックも重い。後ろからの攻撃もあるのか、と思わせたところに、今度はアウトサイドヒッターである大森がセンターエリアから速攻。こうした的を絞らせない戦い方は、「関東の大学に対抗するために練習してきた」と山本清和監督は話す。 「やはり関東勢は高さがあってブロックが堅いので、(対抗するためには)守備はしっかり上げて、リバウンドを取ってつないでコンビバレー、というかたちが重要です。関東の高いブロックをどうかわしていくか、ということはずっと(部員たちに)伝えてきたこと。関西ならではの戦い方かな、と思います」。

 

 多彩なコンビと守備力が持ち味の神戸親和女大だが、強さの理由はこれだけではない。

 

 

3回戦では松蔭大に競り勝った

 

お互いを頼り合う「結」の力

 

 大森は今年のチームについてこう語る。「先輩たちが引退して、自分がキャプテンになるとき、とても不安だったんです。みんなを引っ張っていけるのか。そうしたら、同期も後輩もみんな『そのままでいいんだよ』と言ってくれて。私はみんなをグイグイ引っ張っていけるタイプじゃないけど、一人一人が思いっきりプレーできる環境をつくれるし、全員が前向きに考えられるような声かけができる。だから、それをやればいいんだと。みんながそう思わせてくれたんです」。無理に自分を変えることはないのだと思えると、大森自身、自分のプレーに集中できるようになったと言う。

「あぁ、それでもいいんだって(思えた)。みんなが私のよさを知っていてくれて、大事にしてくれた。だから私自身も、自分のよさを大事にして、私にできることをやろう、できないことはみんなを頼ろう、みんなの力を借りよう、と思えたんです」。

 

 1人の力では絶対に勝てない。3人でも、6人でも勝てない。でも監督も含め29人、全員の力を束ねるとこんなに大きな力になるんです、と大森の口角は上がる。お互いを頼って、チームとして強くなろう。一本一本細い糸を束ね、強い綱になろう。こうして今年度初め、「結(むすび)」というスローガンが生まれたという。

 

 

横断幕には「結」の文字が見える

 

「結」の心を継承し、来年へ

 

 六車は「スローガンの『結』は、この代だけのものにするのではなく、これからも掲げていきたい」と言う。「今年は(3位決定戦で)負けて悔しい。私たちの強みである『結』の心を大切にして、来年は勝ちたいです」。

 大森は、後輩たちに対し「“チームで戦う“ってこういうことなんだと、このチームに教えてもらったし、後輩たちに伝えることができたかなと思う。今年得たものを大事にして、来年は絶対にメダルを取ってほしい」とエールを送り、「楽しい4年間でした」と微笑んだ。 

 

 全日本インカレの翌週、12月9日(金)。天皇杯・皇后杯全日本選手権大会ファイナルラウンドに出場した神戸親和女大は、1回戦でV1の岡山シーガルズに敗れた。

 試合後、「大学4年間はほんとうに楽しくて、もう一回何かスポーツをする、ということになってもバレーボールを選ぶくらい、好きになれました」と話した大森。「結」の心を生んだチームはこれで終わりを迎えたが、その心はこれからも受け継がれていく。

 

取材/淺井恭子

 

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