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注目中学生 柏﨑祐毅の2022年。最高到達点340㎝越えの逸材は悩み、感謝し、さらなる高みへ

柏﨑祐毅(篠目中)

 

 中学生世代の全国大会「JOCジュニアオリンピックカップ第36回全国都道府県対抗中学大会」(JOC杯)が12月25日に大阪で幕を開ける。全国各地から“金の卵”が集まるこの舞台で、大会前から注目を集めるのが愛知県選抜男子の柏﨑祐毅(篠目中3年)だ。最高到達点は驚異の340㎝を超える彼が歩んできた2022年の軌跡をたどる

 

柏﨑祐毅(かしわざき・ゆうき/身長181.4㎝(※全国中学選抜合宿測定時のもの)/最高到達点346㎝/篠目中3年〔愛知〕、STINGS Jr./アウトサイドヒッター)

 

STINGS Jr.のジュニアチームで全国大会に出場

 

 今年9月25日、中学生世代のクラブチームが集う「第25回全国ヤングクラブ男女優勝大会」(全国ヤンクラ)は最終日を迎えていた。決勝トーナメントは大詰めを迎え、U14男子準決勝のカードの一つはSTINGS Jr.(愛知)とIZULU U14クラブ(静岡)が争っていた。試合はIZULU U14クラブが優位に試合を運ぶ。追い込まれたSTINGS Jr.のキャプテン、柏﨑祐毅は勝利への執念を絶やさずにいたが、エンドラインに立つと腕が縮こまるのを自覚した。

 

【ギャラリー】躍動する“金の卵” 柏﨑祐毅の2022年。アナザーカット〔20点〕

 

 「ジャンプサーブが全然入らなくなっていたんです。それで、フローターサーブに変えて打っていました」

 

 試合が進むにつれて、自身の左足がつり、満足にプレーすることもできなくなった。キャプテンでありエース、文字どおりの大黒柱の翼がもがれた影響もあり、チームの日本一への道はここで途絶えた。大会を終えて、柏﨑は堅く固く誓ったものである。

 

 「逃げ腰になったら、それは負けてしまいますよね。なので、もっともっともっとジャンプサーブを磨いて、勝負強くなりたいです」

 

 もっともっと強くなりたい。その思いはこれまで彼を押し上げ、そして、これからも成長を生む原動力だ。

 

全国ヤンクラの準決勝で敗れ、涙する柏﨑

 

エースではなく、キャプテン。監督が促した意図

 

 柏﨑がVリーグのジェイテクトSTINGSのジュニアチームに入団したのは小学6年生の冬。小学生時代は走り幅跳びに励み、競技者としても全国トップクラスの数字を記録するほどの経歴の持ち主だったが、実は1年生のころからバレーボール教室に通っており、5年生になって市内のチームに入団。本格的にバレーボールに取り組んだのはそこからだ。

 

 抜群の身体能力は体育館のコートでも光り、STINGS Jr.では中学2年生時からレギュラー入りを果たす。チームの宗宮直人監督も自身の指導方針から「ふつうは2年生を入れることはしないんです」と言いながらも抜擢したあたりに、そのポテンシャルの高さが表れていた。そして、そこではエースの心を植えつけられた。

 

「お前がエースなんだ。お前が点を取らないと、誰も取れないぞ」

 

 宗宮監督は柏﨑にそう言い続け、本人もまた先輩たちからの信頼を集めながら、力強く跳び上がり、得点を重ねた。

 

中学生世代では並外れたポテンシャルを備える

 

 このころからその名前は全国で知られ、2年生時にはJOC杯愛知県選抜入りも果たしている。誰が見ても、まぎれもない“エース”格。だが、STINGS Jr.の新チームが始動するタイミングで、宗宮監督は柏﨑へかける言葉を180度変えている。

 

 「お前はエースじゃなくて、キャプテンだ」

 

 そのわけを宗宮監督は明かす。

 

 「確かに、エースの役目だけでもよかったと思います。ですが、やはり将来、日の丸をつけてもらうためには、“ただスパイクを打って、点を取ればいい”という選手にはなってほしくなかった。すべての面で周りの見本となり、『彼についていけばいい』という姿勢を生み出す存在になれるように促しました」

 

STINGS Jr.で過ごす最後の1年は、こうして始まった。

 

STINGS Jr.で過ごすラストシーズンはキャプテンとしてチームをリードする立場に

 

【次ページ】チームをまとめることに四苦八苦

 

大会では優勝にたどり着くことができず、悔しさをにじませる姿も。右が宗宮監督

 

チームをまとめることに四苦八苦

 

 監督から言われることがガラリと変わったものだから、当然困惑もしたに違いない。ただ、本人はいたってまじめな性格。「エースではなくキャプテン」という言葉と、まっすぐに向き合った。

 

 例えば今年の4月に出場した「プログレスカップ」では、大会初日を終えて、こう口にしている。

 

 「今日も1試合目で、自分から声を出せなくなってしまいました。そこはキャプテンではなく、ただのエースになっていたのだと。しっかりとしたキャプテンになれるようにしたいです」

 

 キャプテンとしての立ち回りに、「だいぶ大変です」と言ってはにかむ表情が印象的だった。

 

 聞けば、最も苦労したのはチームの導き方。2年生のころは先輩たちが「引っ張ってくれた」。次は「自分が引っ張る立場」。同級生だけで30名以上、総勢70名を超える大所帯のSTINGS Jr.とあって、いかにまとめるかに試行錯誤した。

 

 そんなキャプテンを支えたのが、同級生の仲間たちだった。柏﨑は一人のチームメートの名前を挙げる。

 

 「副キャプテンの亀田瑠斗(天白中〔愛知〕3年)には、とても支えてもらいました。試合で自分が点を決められなくなって下を向いたときも、『ゆうき、笑顔!!』と怒ってくれるんです。僕が不在のときは、代わりにチームをまとめてくれました。亀田がいてくれて、とても心強かったです」

 

悩みながらも、自分の役目と向き合った

 

誰よりも楽しみ、率先してチームメートを盛り上げた

 

 STINGS Jr.での活動は仲間に恵まれた。とにかく明るく振舞えるメンバーがそろっており、コート上では全員が走り回り、感情を爆発させる。

 

きっかけは、新チームが始まってまもなく、三重の高校との練習試合に出向いたとき。高校生たちが自分たちでムードをつくる姿に惹かれ、取り入れることにした。その大切さを実感したのがプログレスカップで、PROGRESS倉敷(岡山)との試合は、「とにかく楽しかった」(柏﨑)とシーズンを終えても心に残る一戦だ。

 

 柏﨑自身も先頭に立って、ムードをつくった。最後の全国ヤンクラでは、常に笑顔でプレーする姿が見られた。

 

「とにかく試合中も練習中も僕がいちばんに楽しむことを意識して、みんなに声をかけていました。それに監督からも、『試合に勝っても、自分たちが楽しんでなかったら怒るぞ』と言われていたので。楽しまなきゃ勝てない、と心がけていました」

 

感情表現を爆発させる。2022年度のSTINGS Jr.が心がけていたことだ

 

 そんな激を飛ばした宗宮監督もチームの姿、そして大黒柱の姿を評価する。

 

 「選手たち自身で、このスタイルでいこう、この姿を全国の舞台で残そう、と決めたわけです。選手たちはほんとうに最後まで走り切った、という思いでしょう。

 

 その中でも柏﨑はキャプテンとして、ほんとうにチームを引っ張ってくれました。仲間を大事にして、仲間の思いを絶対に裏切らない選手でした」

 

 思いのままに周囲を盛り上げる柏﨑だったが、それはキャプテンと同時に、エースとしての立ち居振る舞いそのものでもあった。大会を終えて、本人は言う。

 

 「やっぱり、ただスパイクを決めればいいではなくて、自分が決めたら誰よりも喜んで、誰が決めてもいちばんに自分が喜ぶ。そうやって盛り上げられるのがエースだと思うんです」

 

周りにも積極的に声をかける

 

【次ページ】全国中学生選抜候補にも選出。夢に突き進む

 

最後の全国ヤンクラはとにかく楽しんでいる様子が見てとれた

 

全国中学生選抜候補にも選出。夢に突き進む

 

 このチームメートだからこそ楽しめた。その思いで胸はいっぱいだ。

 

 「みんなが、いちばん楽な気持ちでいられる存在でしたから」

 

 全国ヤンクラは最終3位の成績に終わり、夢はかなわなかった。終わった直後は涙に暮れた柏﨑だったが、表彰式では大会最優秀選手に選ばれ、トロフィーを受けとる。照れくささと喜びをかみしめるようにして、遠くに整列するチームの元へ。すると、仲間たちからとびきりの笑顔と祝福で迎えられた。

 

 「僕はあれ(最優秀選手賞)を一人で取れたとは思ってないので。みんなのおかげでとれたもの。とても感謝しています」

 

 その言葉が素直な思いだ。

 

最優秀選手に選ばれ、チームメートが温かく迎える

 

 STINGS Jr.での戦いは幕を閉じた。そして、今は一人の有望選手として県選抜に飛び込み、JOC杯に臨もうとしている。それは自分自身の“個の力”としての戦いでもある。

 

 また、今年10月には全国中学選抜強化(第一次)合宿の参加メンバーにも選ばれた。目指す“日の丸”への第一歩を踏み出した。

 

 その合宿では練習時に、こんなワンシーンが。25点マッチの試合形式の練習では柏﨑のいるチームが26-25のセットポイントに到達する。サーブ順が回ってきた柏﨑がエンドラインに立つ。高くトスを上げて、力強く腕を振り抜く。

 

「いつもよりしっかりとボールが手に当たって、狙っていたコースに飛んだのでよかったです」

 

ボールは相手コートのエンドライン…、のわずか外に落ちた。決めきることはできなかった。けれども、逃げ腰と自分を振り返る姿はもうそこにはない。

 

 次は、あれが入るようにしたい?

 

 その問いかけに、こくりとうなずく。その目はしっかりと、さらなる高みへ向けられていた。

 

全国中学選抜強化合宿でも、その非凡な力を披露した。夢にむかって、歩みを続ける

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

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【ギャラリー】躍動する“金の卵” 柏﨑祐毅の2022年。アナザーカット〔20点〕

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