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春高2025

今季苦しんだ清風が初の全国大会へ 伝統校がつないだバトン

  • 学生
  • 2022.12.26

 

 

8年連続30回目の本戦出場を決め、新たな歴史を刻んだ清風高(大阪)。だが、インターハイ府予選では6回戦で敗れ、連続本戦出場は6年でストップするなど、苦しんだシーズンだった。城戸健太郎キャプテンを軸に、どん底から這い上がった1年を振り返る

 

 

本戦の切符をつかみ、選手たちは感情を爆発

 

【画像】清風高、興國高フォトギャラリー

 

 死にもの狂いで歴史をつないだ。清風高にとって、今季最初で最後の全国大会の切符を懸けた大阪府代表決定戦。エース城戸キャプテンがビクトリーポイントを決めると、仲間たちが一斉にベンチを飛び出した。叫び、床をたたいて感情を爆発させる選手たちの姿は、1年間の苦しみを物語っていた。「このチームでやっと全国の舞台に足を踏み入れることができる。重みになっていたプレッシャーが、すっとなくなったような感覚です」。城戸キャプテンは晴れやかに語った。

 

 伝統校にも絶対はない。そう痛感させられた1年だった。城戸キャプテン以外のスタメン選手は総入れ替え。3年生は3人しかおらず、新チーム結成前から「来年は2年生が主になる」とスタッフ陣から告げられていた。

 試合経験の少ない若いメンバーを軸に臨んだインターハイ府予選6回戦では、優勝した昇陽高にストレート負け。6年連続のインターハイ出場が途絶えると、試合後の円陣で城戸キャプテンは号泣した。「保護者が応援してくれているのに、こんなに情けない試合をして申し訳ない」「清風のことを思ってくれる、尊敬できる先輩のためにも勝ちたかった」。そう自らを責めるなか、何度も口にしたのは「信頼」という言葉だった。

 「お互いを信頼できる、仲間の思いの強さというか。まだ半信半疑なところがあります」

 

 

インターハイ予選で敗れ、涙を流した城戸キャプテン

 

 偉大な背中を追い続けてきたからこその言葉だろう。平均身長179.3㎝と、全国的には決して高さがあるとは言えないチームは、昨夏のインターハイでベスト4に。セッターの前田凌吾(早稲田大1年)が奏でる緻密なコンビバレーは、3年生によるコミュニケーションの賜物でもあった。「去年の3年生は、練習でも学校生活でも横のつながりがしっかりしていて、オンとオフのメリハリもありました。人数が多くても全員がほんまに一丸となっていました」。

 

 理想のチームを追い求め、厳しい夏に挑んだ。チーム内で温度差があったが、春高予選が近づくにつれてチームは結束。「2年生が『俺たちがやらないとダメだ』という自覚を持ってくれて。練習の雰囲気にもつながって、すごくいい練習ができたと思います」と上昇気流に乗った。

 

 

個々の自覚が高まった

城戸キャプテンのケガ

 

 その結束は、アクシデントを経てより強くなる。今大会で一つ目の山場となったのが、代表決定戦を懸けた3回戦の大塚戦。インターハイ府予選準優勝校との一戦を1週間後に控えるなか、城戸キャプテンがねんざした。整体師の父の懸命な施術で、なんとか試合に出られる状態まで回復したが、決して万全とは言えない。そんな苦境を打破したのが、後輩たちだった。

 城戸の対角を務める2年生エースの辻琉月らの活躍も光り、フルセットへ。先にマッチポイントを握られたが、相手のミスにもつけこみ逆転勝ち。試合後は号泣してたたえ合った。城戸キャプテンの「僕がケガしてから、より全員が『俺がやらないとあかん』という気持ちでやってくれて。すごく頼もしい仲間になりました」という言葉は、心からの思いだった。

 

 そして迎えた代表決定戦。興國高にはおよそ1ヵ月前に行われた大阪私学大会でフルセットの末に負けていたが、プレーに迷いはない。サーブで相手エースにストレスをかけ続け、粘り強い守りからセッター尾﨑太洋がコンビを組み立てる。1年生の塙大輝ら交代で入った選手も次々と躍動。勝負どころでは城戸キャプテンがスパイクを決めた。ストレート勝ちでリベンジし、山口誠監督は「3年生が少なくて苦しい世代でしたが、3年生がまとまるなかで2年生も頑張れた。ほんまにしんどかったけど、今日勝ったのは今後を考えても大きな1勝」と選手たちを労った。

 

 優勝候補の一角として臨んだ昨年度の春高は2回戦負け。相手のサーブに押されて本来の姿を見せられず、悔し涙を流す先輩たちの姿を目に焼き付けた。城戸キャプテンは言う。「このチームで一つでも多く勝てるように。目の前の相手に全力で立ち向かって、目標である日本一に一つずつ近づけていければと思います」。

 バトンは次世代につないだ。あとは思う存分、オレンジコートで暴れるだけだ。

 

 

2年生唯一のレギュラーとして戦った昨年度の春高(#5が城戸)。代表決定戦の1週間前には前田が来校し、「お前らやったら絶対にいける」というエールを受け、「めちゃめちゃ緊張していたんですけど、(前田)凌吾さんの顔を見た瞬間に緊張が溶けて、自信が持てるようになりました」と笑顔

 

 

興國

全国大会初出場を逃すも

指揮官が3年生をねぎらう

 

 興國は、またも全国大会初出場を逃した。インターハイ府予選では得失点率差で初の全国大会を逃し、なみなみならぬ思いで臨んだ今大会。エースの村瀬仁巨良主クウェスイが力強く打ち切る場面もあったが、相手のサーブに押され、思うように攻撃を展開できない場面が続いた。村瀬は「やりにくかったです。一瞬すぎて、何もできなかった」とうつむいた。

 木内学監督にとって、3年生の村瀬や増野大智キャプテンは堺ジュニアブレイザーズ時代からの教え子。「新参者のチームがステップアップをしてきたのは、まさに3年生のおかげ。ほんとうに感謝しています」と労った。なかでも村瀬には「しっかりと成長段階を踏んでくれていて、最後はものすごく頼りになりました。負けはしましたが、次のステージで頑張ってほしいです」とエールを送った。

 

 

エースとしてチームを引っ張った村瀬

 

文/田中風太

撮影/田中風太、中川和泉

 

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